作詞家大塚利恵の『ことばのドリル』vol.42♫ことばは借り物〜テーマに対するアイディアの出し方
Vol.41のドリルはいかがでしたか?
『あいうえお作文(作詞)』シリーズが続いています。
‘た’‘ち’‘つ’‘て’‘と’を頭文字に、5行の作品を作って下さい。(濁点を付けてもOK)
テーマは「元気が良い感じで」
タンギングをするタ行、ダ行は、発音に勢いがありますね。
単純に、元気が良い感じが出やすいのではないでしょうか?
『あいうえお作文』のように頭文字が決まっていると、何もないよりはことばが出やすくなるものですが、「それでもなかなか思いつかないのだけど、どうしたらいい?」と聞かれることがあります。
そんな時はすぐに辞書をパラパラとめくってみて下さい。
好きな本でも漫画でも、雑誌、新聞、何でも構いません。
ネットよりも手に取れる本類の方が、いろんなことばがアトランダムに目に入りやすいので、引っかかってくることばも多くなり、良いと思います。
「自分の作品だから、全部自分の中からことばを出さなくちゃ!」
と思ってしまうと、苦しくなります。
ことばは借り物。
あなたはあなたの感性、センスでことばを〝選択〟し、表現をしているのであって、発明しているわけではありません。
ことばはあなたの中にもあるし、外にも溢れている。
どちらも同じくあなたのことばだし、みんなのことばです。
だから、内側から出ない時はどんどん外に求めましょう。
それはズルでもなんでもないし、むしろことばに対して謙虚な姿勢だと思います。
それに、長くコンスタントに書いてゆくためには必要なことです。
どこにどんな言葉を選ぶのか。
そのあなたの感覚にこそ価値があるので、ことばに関して〝ゼロからイチを生み出すぞ〟という変な気概は要らないのでは、と私は考えています。
また、決して一行目から書く必要はありません。
最後に一つの絵が完成すれば良いのだから、どこから描いても自由。
これは歌詞以外にも言えることです。
例えば長編小説や映画だったら?
最初から順番に…というやり方しか知らないと、恐らくすぐ行き詰まってしまうんじゃないでしょうか。
まず、作ろうとする作品のイメージ全体をまるっと見渡して、取り掛かりやすいところから、柔軟に取り掛かってゆきましょう。
一行目がどうしても書けなかったのに、先にラストシーンを書いてみたら一行目もすぐに思いついた、などということはよくあります。
この『あいうえおドリル』も同じです。
最後の行からでも真ん中からでも、いろいろ試してみて下さい。
さて、今回も例を多めに出してみたいと思います。
テーマの「元気が良い」時の状態に、心や体のチャンネルをカチカチッと合わせて…
たからもの、探しに行こうぜ!
ちからいっぱい叫んだ君の
つやっとした笑顔には敵わない
手を握って走り出す
どこまでもどこまでもどこまでも
タッタカタッタッター
チキチキチッテットー
つまんなくなくなくないないない
低空飛行の夢一号が僕をさらってく
〝遠くの未来〟がもう、遠くなんかないよ
たっくさん笑った後の
ちぎれそうなお腹ピクピク
辛いほどに妙に幸せ
デリバリーのバーガー&ポテト
ドキドキしない二人の 極上の晩餐
旅に出よう!と思いついた朝
ちいさなトランクと口笛ヒュルルー
机には踊り出しそうな〝またね〟の文字
手紙を見つけたキミの呆れ顔が目に浮かぶ
ドキドキワクワクが道しるべの 僕とキミのおかしなストーリー
ダンボの耳をくすぐって
チープな花火を打ち上げよう
つぎはぎだらけの僕たちは
できること全部したいだけさ
とびらを全部開け放ちたいのさ
足りないものはありません
チキンがなくてもクリスマス
つまらん決まりはもういらない
てっきり神様のいたずらかと思うような
トラブルみたいな奇跡がいいな
たっぷりオレンジ夕陽のシャワー
地球の住人の特権だから
ツール・ド・アースでぐるぐる行こう
敵も味方もキラキラ輝く
どこにもないと思ってたPEACEがほら、ここにあるよ
「元気が良い感じで」というテーマに対するアイディアの出し方として、こんな方法もあります。
次の問いに、あなたなりに答えてみてください。
(例として私の回答を書いておきます。)
Q. 一番元気が良い季節は?
A. 真夏
Q. 一番元気が良い色は?
A. オレンジ
Q. 一番元気が良い国は?
A. ブラジル
〝一番〟としているのは、その方が元気の良さが際立って分かりやすくなるからです。
『一番元気が良い』食べ物、動物、一日の中の時間帯、髪型、音、匂い…
何でも当てはめて問いを作ってみて下さい。
『一番元気が良い椅子』『一番元気が良い楽器』みたいな、変な問いも良いと思います。
そして、例えば一番元気が良い季節が真夏だと思ったなら、〝真夏〟を使ってドリルをやってみましょう。
元気系のキーワードが入ると、自然に元気な感じが出やすくなります。
高い空の青に飛び込め
ちっぽけなことはもっとちっぽけに
つまらないことはもう視界にも入らない
手加減なしの真夏の日差し
どうしても見たい景色を見に行こう
この方法は、違うテーマにももちろん応用できます。
例えばテーマが『失恋』なら、『一番失恋っぽい季節』『一番失恋っぽい色』…
テーマが『願い』なら、『一番願いっぽい季節』『一番願いっぽい色』…
といった感じで試してみて下さい。
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《ことばのドリルVol.42》
‘ら’‘り’‘る’‘れ’‘ろ’を頭文字に、5行の作品を作って下さい。
頭文字は、どんな順番でも構いません。(ろ、り、ら、る、れ など)
テーマはありません。自由に書いてみて下さい。
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2016年にメルマガで連載したものに加筆しています。全100回。
作詞の勉強をしたい方はもちろん、自分の言葉を磨きたいすべての方に。
長年作詞を指導してきたノウハウを目一杯詰め込みました。
最初は易しめですが、じわじわ効いてきます。
解説を読むだけでもヒントを得てもらえるように書いていますが、実際トライしてもらうと、さらに言葉の感覚が大きく変わっていくのを実感してもらえるはず。
もっと深く学びたい方は、大塚利恵の作詞レッスンへぜひお越しください。
初心者〜プロの方まで、無料カウンセリングも行っています。
ありがとうございます!