見出し画像

ダイエットを通して、生き方を語る。『ダイエット幻想』

磯野真穂さん『ダイエット幻想』を読む。過度なダイエットへ警鐘を鳴らす内容と思っていたら、ダイエットを通じて、「他者と生きるとは何か」について語った内容。ものすごくおもしろかった!

やせたいと思う気持ちは、自分の外側からやってきたものであり、それは「承認欲求」と結びついている。現代社会は承認欲求を否定するが、他人のことは気にせず、自分らしく生きている(ように見える)人をむしろ賞賛している。SNSの発達は、それを加速させている。わたしたちは、承認欲求などなさそうな顔をしながら、一方でそれを満たすという矛盾したふるまいをせざるをえない。

さらに「女の子」が「選ばれる」性であることの弊害。それにより、終わることのない「痩せ合戦」を生んでしまう危険性があると語る。

やせること、愛されることを目指してもがいたあまり、他者の声に漂流し、溺れてしまう。そこに対して「自分らしく」という安易な声がけがあることで、他人との無限比較に陥ってしまう。

他者の声に漂流しないために、自分を「点」ではなく「ラインを描き続ける存在」として捉えることを、磯野さんは提案する。

わたしたちの社会は、個人を点で捉える言葉に満ちている。出身校、肩書き、性別、年齢・・・。それはわたしたちの存在を「点」とみなす考え方が前提になっているのだという。

生まれてからこれまででわたしが描いてきた、そしてこれから描くであろうラインは、当然ながら唯一無二のもの。このラインがあなたらしさに他ならない。

未来に何が起こるかわからないというのは、ときめきであると同時に恐怖だ。これまであなたが描いてきたラインや、これから描かれるであろうラインの行方を、わくわくしながらおもしろがり、一緒に描いていこうとする他者に出会い続けることが大切だと磯野さんは語る。

誰かに愛される「点」になるのではなく、身近にいる誰かとラインを描き、世界を具体的に感じて生きる可能性に目を開くこと。「当たり前」とのずれの中にこそ、自分にしか引くことができないラインの始まりの契機がある、と磯野さんは締めくくる。

***

「愛されよう」「選ばれよう」とするあまり、他者の声に溺れてしまうこと。それは自分の存在を「点」で認識しているから、という指摘がおもしろかった。「愛される」も「選ばれる」も点と点のマッチングだもんねぇ。

未来に何が起こるかわからないことは恐怖だ。それを減らすには、予測不能性をなるべくなくすことがベスト。そのためには「点」と「点」の関係になるのがわかりやすい。しかし、「点」と「点」の関係になってしまうと、それ以外の関係性に目を開くことができなくなってしまい、結局そこから恐れと不安が生まれてしまう。「評価する」「評価される」への恐怖はここにあるんだろうなぁ。

じゃあどうすれば。過去、現在、未来を話し合える関係性であることが大切なんだと思う。特に仕事の関係性でもそれができたら最高だ。お互いラインを描ける関係がいくつも持てたらいいな、と思う。

磯野真穂さんは、ちょうど先月積ん読していた『急に具合が悪くなる』の著者でもあった! こういう偶然はうれしいなぁ。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?