幸せな旅の始まり

その女性に出会ったのは
高齢の両親と3人で温泉旅行に行き
お蕎麦屋さんでお昼ご飯を食べていたとき。

隣の席にいたお客さんがお会計を済ませ
後からお一人の女性がやってきた。

視界の半分ほどでしか見えてなかったけれど

とても幸せそうな表情で
天ぷら蕎麦を召し上がっていたのが
印象的だった女性。

何か嬉しいことでもあったのかな・・
それとも
ここのお蕎麦が好きなのかな・・

いずれにしても
あんなふうに楽しめるなんて
素敵だなぁ。。

両親とくだらない話をしながら
なんとなく思っていた。

私の推測が外れていたとわかったのは
お店を出ようとしたとき。

トイレに行っていた父を母と待っていたら
女性が柔らかな笑顔で
「ご家族ですか？」と声をかけてくれた。

「はい、親子です。
別々に暮らしているので
ついお喋りに夢中になってしまって
落ち着かなかったですよね、失礼しました。
隣にいた父も荷物やら大丈夫でした？
すみませんでした。」

そう言うと、女性はさらに柔らかな笑顔で
いえいえ全然！と言いながら話してくれた。

「聞こえてくるお話がとても楽しそうで
仲の良いご家族だなぁって思いながら
食べていたんです。
うらやましいです＾＾」

そう話してくださる表情は
ほんとうに穏やかで温かくて。

『うらやましい』という言葉を
使ってはいたけれど

もっと温かくて大きな愛で包むような
やさしい感じのニュアンス。

きっと
私たちよりももっと豊かに
日々を暮らしておられるのだろうなぁ。

でなければ
そんな受けとめ方や笑顔や言葉は
出てこない。

世界をそんなふうに受けとめるられる女性に
私もいつかなれたらいいなぁ、、！

密かにそんなことを思いながら
その女性と世間話をできたひとときは

『幸せな旅の始まり』を知らせる合図なのかも
とすら思えてしまうほど
愛しい１シーンだった。

日常にも不意に現れるけれど

旅に出るとよく
人間の姿をした天使だったんじゃないか
と思ってしまうような人に出会う。

消えたいと思いながら
生きていたこともあったけれど

この世界はあんがい
私が思ってきたよりもっと
優しくて温かいのかもしれない。

素敵なあの方にも
ますますの『しあわせ』が溢れますように、、！