楽しさこそ旅の本質〜なんヴぁさんインタビュー〜

皆さんこんにちは。乗車率です。

今回は、「旅人インタビュー」としてなんヴぁさんにお話を伺ってみたいと思います。なんヴぁさんは2022年の夏に開催されたコミックマーケット100で『いいまち見聞録』で同人作家デビューされました。

ーー早速ですが、なんヴぁさんが旅に出るようになったきっかけから伺います。

原点といえば、小学生の時に大井川鐵道のSLに乗せてもらったことかなと思います。うちの家族はあまり旅行に出るような家族ではなかったので、家族で出かけるといえば海水浴場に行ったり、両親の実家の墓参りをしたりといった程度でした。しかし東京に住んでいる父方のおじさんが静岡のお茶摘みにバイトによく行ってたんですね。でそこに遊びに行った時に「大井川に行かないか」と誘われたんです。それで大井川鐵道のSLに乗って寸又峡温泉に行ったり、井川線でアプト式機関車を体験したりといったことがありました。それからというもの家に帰っては大井川流域の地図をずっと描いていた記憶があります。その時にお土産でもらった SLの下敷きはぼろぼろになるまで大事に大事に使っていましたね。その時はSLとかアプト式機関車というよりはどっちかといえば大井川流域に魅せられたという感じでした。

その後は、高校の時に青空フリーパス(注:JR東海の名古屋近郊で使える普通列車限定のフリー乗車券)を買って部活帰りに制服のまま下呂温泉に行ったりといった感じで乗り鉄を楽しむというのがメインになりました。大学に入ってからもそれは変わらず、旅行のメインは乗り鉄で、乗り換え待ちの間に駅前を散歩するという形が続きました。

ーーなんヴぁさんといえば現在『いいまち見聞録』に代表されるように街歩きの人というイメージですが、乗り鉄メインの旅行が街歩きにシフトするようになったきっかけはなんでしょうか。

 これは後段の話にもつながるのですが、2020年の2月頃、コロナ禍に入るか入らないかといった頃に、初めて艦隊これくしょん-艦これ-の同人誌即売会に参加したんです。そこで京都府の丹後半島にある「伊根」という街が舞台の本を買ったんですね。そしてその伊根という街にどうしても行きたくなって、2020年3月、大学卒業を機に伊根に行ったんです。そこには舟屋といって1階が船着場になっている2階建ての住宅が並んでいるのですが、その光景に感動しまして、そして「全国のいろいろな漁村を見て回りたい」と思うようになりました。

 あとは函館、神戸、佐世保など坂の町も見てみたいと思うようになりました。共通していたのは「海への非日常感」だと思います。自分の生まれ育った濃尾平野はどこまでも平らな土地が続いていて、名古屋も含めて意外と海って遠いんですよね。ところが港町に行くと海と繋がったまちが広がっていて、こんなところが日本にあるのかと感動した覚えがあります。同じ年の秋にリアス式海岸の街を見るため三重県南部の尾鷲・熊野方面の港町を見て回ったのですが、名古屋の近くにこんなところがあったのかと感動しました。

ーー次の転機が2020年9月に行った瀬戸内海沿岸ですね。ここではある事件が発生します。

 自分の住んでいた近辺は本当に坂がなかったので、坂のある街の景色も好きでした。坂のある港町ということで呉や尾道など瀬戸内の街並み、そしてしまなみ海道を見に行ったんですが、途中の越智大島で宿が廃業してまして、それをTwitterに書いたところめちゃくちゃバズってしまったんです。その時は結局ファミリーマートのイートインで一夜を明かすということになりました。

ーーそれから「旅芸人」とか言われるようになりましたね。

 やっぱりあの事件でTwitterの運用方法がガラッと変わったと思います。元々同級生ぐらいしかフォロワーいませんでしたし、2~3日に1回しかツイートしなかったのが、旅の様子をリアルタイムで上げるようになったのはあの頃かなかと。

ーーそこで繋がったのが長距離フェリーに乗る人たちだったと

 そうそう。それまでも移動手段としてフェリーに乗ることはあったんですが、「フェリー目的で乗りに行く」のはおそらく2021年3月のはまゆう代走が初めてだったかなと。

(筆者注:2021年7月に就航した東京九州フェリーには新造船「はまゆう」「それいゆ」が投入された。しかしその4ヶ月前、東京九州フェリーと同じSHKグループの新日本海フェリーの航路で本来の船がドック入りしたため、7月から就航予定だったはまゆうが急遽新日本海フェリーの苫小牧東〜敦賀航路に充当された。)

 あそこで「インターネットで知り合った人と実際に会って盛り上がる」というオフ会の楽しさを知った気がします。それが2021年7月の東京九州フェリー初便につながっていると思います。

ーー長距離フェリーに乗る人の中に、旅行で文章を書く人がたくさんいたと。

 そうそう、それで2021年の冬に2年ぶりのコミケがあってTwitterを見ながら「一度はコミケに出てみたいなあ」なんて言ったら誰かさんが2ヶ月後にコミケの申込用紙を渡してきやがって(笑)

(なんヴぁさんにコミックマーケットの申込用紙を最初に渡したのは乗車率です。)

 でもあれで今なんヴぁを構成するパーツが全て揃ったなって感じはあります。

ーー最後の1ピースになれて光栄です(笑)。これまでいろいろなトラブルに見舞われてきたと思いますが、なんヴぁさんがこれまで旅を続けて来られた理由はなんでしょうか?

 旅をするのに「楽しいから」「行きたいから」以外の理由っていらないと思うんですよ。もちろん人に誘われたからっていう時もありますが、「あの街に行きたい」「これを食べたい」がやっぱり最初にあって、楽しいしワクワクするっていう気持ちに正直でありたいなと思います。大人になるとどうしても映えがどうだ、ウケがどうだ、損得がどうだと打算的になってしまいますけど、本来旅って何かを得るためにするものではないですよね。「何かの目的のために」って旅自体はいいと思いますが、「その旅って楽しいですか?」という問いは常に持っていたいなと思います。

ーーきっかけがかなり強引だったことは認めますが、コミケもなんだかんだ出続けてるじゃないですか。文章を書き続ける理由というのはどんなものがありますか。

 やっぱり書いたあとの達成感を味わいたいというのがあります。自分の書いた本を手に取ってもらって、買ってもらうというのがこんなに嬉しいんだって感動して、それ目当てに続けてる感じですね。あと同好の士との交流が図れるのもありがたい。実際書く側に回ると、買って回るのと机の内側に立って本を手渡すのって同じ場にいるけど全然違うんだなって思いました。

ーーこれからも期待しています。お互い夏コミ原稿頑張りましょう。

編集後記

 私となんヴぁさんはこれまで何回か一緒に出かけたり、九州の家に泊めたりといったことはありましたが、インタビューという形は初めてでした。自分も初めて聞く話がたくさんあり、仲の良い友人でも意外と知らないことがたくさんあることに気付かされました。同年代の友人として、同人作家として、お互いこれからもいろいろなことを発信できればと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?