見出し画像

350以上の社会課題現場に向き合うリディラバが考える、企業が「社会課題解決事業」を立ち上げる時の「難しさ」と「乗り越え方」(前編)

◆求められる企業の「社会課題」への取り組み

 近年、金融界における世界的なESG投資が拡大や、社会全体でのSDGsへの取り組みがより一層注目されるようになりました。国内においても「新しい資本主義」実現に向けた会議が本格的に始動する等、企業も含めたあらゆるプレイヤーが社会課題の解決に取り組む必要があることが社会的に認知されています。

 日本の企業においても、中期経営計画に「SDGs」の文言が盛り込まれたり、企業の「パーパス」を再定義する動きが見られたりと、多くの企業がそれぞれに社会的な価値の創出に向けて動き始めています。

 そのような中、企業で新規事業を検討する場合でも、「SDGs」や「社会課題」「社会的インパクト」といったキーワードを元に、事業性と社会性とが両立した事業の立ち上げを求められることが多くなってきたのではないでしょうか。

 しかし(そして当然のことながら)、事業性と社会性とが両立した事業を生み出していくことは容易ではありません。
 リディラバの事業開発チームは、350以上の社会課題現場と向き合ってきた知見・ネットワークを元に、企業の方々とともに社会課題解決の事業の立ち上げに挑戦しています。

リディラバ事業開発ホームページ(URL:https://ridilover.jp/BizDev/

◆社会課題に関する事業立案の難しさ

 社会課題に関する新規事業の立ち上げは、何が難しいのでしょうか。新規事業の立ち上げはそもそも分野に関係なく非常に難易度が高いものですが、特に社会課題に関する新規事業立ち上げにあたっては、一般的な新規事業立案に比べて「事業性を担保しつつ、社会的なインパクトを生み出すための課題の設定が極めて難しい」と思っています。どういうことか、具体的なポイントは3つあります。

①明確な悪者がいない

 現代の社会課題と呼ばれるような現象は、その要因が非常に多岐にわたり、かつ複雑に絡み合っているというケースが多くあります。

 例えば「食品ロス」の問題。日本では、食べられるのに捨てられている食品は年間570万トンあるとされています(令和元年度 農林水産省推計)。「食べ物を粗末にしてはいけない」と誰もが思っているのに、どうしてこれだけの食品が毎年廃棄されてしまうのか。詳細は省きますが、その要因を構造的に紐解いていくと、実は「生産→加工→小売→消費」という食品をとりまくバリューチェーンのそれぞれに、ロスを生み出す構造が存在していることがわかってきます。

(画像:食品ロスの構造化マップ/引用:リディラバジャーナル

 例えば、小売は販売機会の損失を防ぐために、加工業者に対して発注量をギリギリまで調整したり、それに対応する加工業者はどんな発注にも耐えられるように余裕を持った生産を行っていたり、その背景には「いつでも食べたいものに手が届く」ことを求め続ける消費者の行動があったり、という構造が指摘できます。

参考:リディラバジャーナル「食品ロス

つまりこれは、食品ロスという問題が既存の消費行動・商習慣の仕組みの上に生じる問題であり、多岐にわたるプレイヤー同士の関係それぞれに問題を生み出す要因が潜んでしまっていることになります。そして同時に、個別の事象・要因だけを取り上げても、問題全体の解決には至らないことを示しています。

 かつての社会課題、例えば「公害」といった問題は、「悪者(要因)」がある意味では明確でした。しかし現代で我々が直面する課題の多くは、食品ロスに見られるように、その要因は複雑多岐で、またある側面では私たちの豊かな生活を実現するための仕組みが成り立っています。結果として、事業化しうるような明確な顧客のペインポイントや、解決に向けた糸口が見えないということが、事業開発の現場でも多々生じているのです。

②変えづらい要素が多い

 課題の要因は複雑多岐にわたるうえに、それぞれの要因となる事象の背景を考察していくと、法的な制度や、文化的背景・社会的慣習といった壁にぶつかることが多々あります。

 食品ロスの問題で言えば、消費者の「賞味期限の長い商品から取ろうとする習慣」であったり、消費期限に対して一定期間が経った商品は卸さないように努める業界慣習(段階的に緩和されつつある)があったりします。

 法制度や消費者の意識といった社会的慣習は、それ自体を変えていくことは非常に多くの時間を要するため、数年単位で結果が求められる企業の新規事業立案においては大きな壁となります。実際の事業開発では、そうした法制度や社会的慣習を踏まえたうえで、事業を通じて変革しうるポイントをさぐることが極めて重要になるといえます。

③お金にならない(ように見える)

 社会課題に対して真摯に取り組もうとすればするほど、「顧客を設定して、顧客からお金を払ってもらうイメージが持てない」と感じる場面が多くあります。

 貧困状態にある人への支援に取り組もうとした際、そこに受益者負担の事業は成り立ちません。気候変動の問題に取り組むにも、現在の豊かな生活を大きく変えることにメリットを見いだせない消費者から、何かしらの対価としてお金を徴収することは極めて難しいと言えます。結果として「政府・自治体からの補助金」等を収益源に事業を設計したりするのですが、この少子高齢化社会において自治体から大規模な補助金が出てくることは期待できず、大企業であればあるほど「期待されている事業規模に達しない」との結論に至ることが多くあります。

 このように、社会課題の解決に資するような社会的インパクトの大きさを常に志向しながら、同時に大企業として事業化できる収益性も同時に見据える。両者の両立は容易ではありません。

 社会課題の解決に寄与する事業を立ち上げようと前向きな姿勢で取り組んでも、上記のような事象に直面して、自社の入りしろが見えない、事業として成り立つイメージが持てずに検討が停滞してしまう、というケースは、企業の事業開発の現場でも多く発生しているのではないでしょうか。

 ここまで、社会課題に関する事業立案の難しさを考えてきました。次のnoteでは、この分野の「難しさ」に対して、どのように新規事業立案に取り組んでいくべきかの「乗り越えるためのポイント」について考えます。

350以上の社会課題現場に向き合うリディラバが考える、企業が「社会課題解決事業」を立ち上げる時の「難しさ」と「乗り越え方」(後編)こちら

 我々は日々、より社会インパクトのある事業を企業を含めた様々なステークホルダーの方々と検討しています。社会課題に関する事業開発におけるお困りごとがございましたら、ぜひご連絡ください。

<お問い合わせ先>
Mail:info.bd@ridilover.jp
HP:https://ridilover.jp/BizDev/(こちらから資料のご請求も可能です)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?