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-導入検討前にこそ、今一度考えたい!-なぜ『越境学習』に取り組むのか?

こんにちは。リディラバ井上です。

人口減少や少子高齢化に伴う社会の変化、日進月歩で変化するテクノロジー、そして新型コロナウイルスなど、私たちを取り巻く社会環境は、これまで以上に先の予測できないものになりました。
そして企業もまた、VUCAと呼ばれる不確実性の高い時代に適応すべく、既存の枠組みや事業を変革し、新たな価値を創造する必要を迫られています。

しかし、常識が常識でなくなった社会で、組織・事業の変革や創造を通して、社会に新たな価値を生み出すためには、これまでの常識を打ち崩す、全く異なったアプローチに取り組まなくてはなりません。

そこで近年、変化する社会にイノベーションを起こす人材を育成する手法として注目されているのが、「越境学習」です。

「越境学習って、どういう効果なの?」
「色んな手法があるようだけど、結局何がいいの?」

本記事では、越境学習の概要や注目される背景、その効果などを解説していきます。


今一度考える、『越境学習』とは?

越境学習とは、ビジネスパーソンが所属する企業や組織の枠を越えて、普段とは異なる環境に身を置き、学び、新たな価値観や知識に触れる活動のことです。

例えば、NPOやベンチャー企業、海外大学など、普段の組織や業務とは異なる考え方や価値観を持つ越境先に身を置くことで、参加者はこれまでの自分自身の業務だけでなく、知見や姿勢、キャリア観を再定義することができ、イノベーションに資する経験や学びを得ることができます。

実際に、経済産業省も「未来の教室」事業として、企業人材育成における越境プログラムの導入を推奨しています。

企業を取り巻く社会環境の変化と、『越境学習』が注目される背景

今私たちの目の前には、VUCAと呼ばれる不確実な未来な未来が広がっています。
VUCAとは、​​Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった造語で、それぞれが社会において未来の予測が困難になる状況を表しています。
これまで通りのアプローチでは太刀打ちが出来ません。これまでの価値観を揺さぶり、新たな価値を生む手法の一つが、『越境学習』です。
なぜ、今の不確実な社会において、『越境学習』が必要なのか。代表的な2つの背景から、『越境学習』の必要性をご説明します。

当たり前とされてきた、社会モデルの崩壊

例えば、少子高齢化と人口減少社会。平成20年を境に、人口は減少傾向が続き、今後そのスピードは加速するとみられています。
中身として、団塊世代の75歳以上の高齢者の割合は急激に増加する一方で、核家族・共働き・生き方の多様化に伴って子どもの出生数は例年過去最少を更新しています。
社会の変遷に合わせる形で、一人一人の生き方が変わっていきます。一方で、一人一人の困りごとを解消するための政策や事業戦略、枠組み、サービスやプロダクトの多くは、旧来の社会モデルを前提に成り立っており、多様化・複雑化する困りごとに対応することが段々と難しくなっています。

IT・デジタル化の急速な発展と正しい利活用の課題

近年のIT化・デジタル化は日進月歩で発展しており、今や私たちの生活に直結したものになりました。
GAFAMを中心とするビッグテックの台頭が表すように、情報技術の発達が、既存のビジネスの安定した状況を打破し、そのビジネスが向き合う業界構造をガラッと変化させ、まったく新たな社会価値を生み出しうるものになっています。

一方で、多くの企業ではIT化・デジタル化を通した新たな事業創造はおろか、それらが課題を解決する手段ではなく、目的となってしまっているケースも目立ちます。


モノがあふれ、人口がピークアウトを迎え、社会が段々と成熟する中で、向き合う課題や困り事はこれまでの枠組みでは対応が出来ないモノになっています。同時に、技術革新による常識の変化は、これまでとは類を見ない速さで起こっています。

この様な外部環境の大きな変化に対し、課題をただしく捉え、解決へ導く能力を養うことに、自社だけで取り組むのは非常に困難です。一方で、課題解決をし、新たな価値を生む主体者である企業人が、新たな知識や経験をアップデートする機会は、非常に限られています。

これまで通りのロジカルシンキングやケーススタディなどの手法論では太刀打ちの出来ない、顕在化していない社会の本質的な課題を自ら発見し、課題の構造を把握する力が求められています。その手段の一つが、『越境学習』です。

なぜ、企業は『越境学習』を取り入れるべきなのか?

この様に、社会が予測不能な形で変化することに対し、企業人も学び直す機会が必要だと申し上げましたが、越境学習が不可欠なのでしょうかかを紐解いていきます。ここでは、企業の目的に即した理由と共に、ご説明いたします。

社内では得られない、イノベーションの源泉となる強烈な学び・気づき

変化する社会の中で、企業はイノベーション(これまでの事業の変革や新たな価値の創造)を志し、DXや新規事業開発に取り組んでいます。一方で、企業内の同じ環境に身を置き続ける中で、変化を生み出すことには限界がある。社員が慣れ親しんだ環境を飛び出した、新たな学び・気づきの獲得が、イノベーションを生みます。

今まさに起こっている、手触り感のある課題への接触

人口が減少し、ニーズが多様化する社会の中で、これまで通り、数量を売ることや従来型のマーケティング手法では太刀打ちが難しくなりました。解決策を作るには、オフィスでの手法論やデスクリサーチだけでなく、実際に課題を抱える当事者や解決者のいる現場へ赴き、リアルな社会にいる顧客の課題感を明確にすることがキーになります。
『越境学習』で赴く現場は、NPOや特定の課題解決に取り組むベンチャー企業など、課題との距離感が近く、課題に対してソリューションがシャープな現場に溢れています。

これまでの仕事観・キャリア観のアップデート

現代の企業の多くは、効率化を基にしたファクトリー型の組織が敷かれた組織が多数です。一方で、その分業制の下で、多くの企業人が課題の起点から離れ、ブレイクダウンされた目の前の仕事に取り組んでいます。その結果、自分の仕事が何に繋がっているのか、何の為なのかがわからないため、エンゲージメントが下がる傾向があります。
『越境学習』を通して課題の最前線に行くことで、仕事の意義・意味を再定義が可能になり、長期的にポジティブなキャリア形成に繋がります。

『越境学習』を通して、社員は何が身につくの得る?

普段とは異なる環境で学びを深める越境学習は、さまざまな効果が期待されています。ここでは、特に向上が期待できるビジネスの力について3つ紹介していきます。

事業改革・事業創造の風を起こす『課題解決力』

既存の事業や組織の変革や、新たな事業を通した価値創造のどちらも、越えるべき課題を設定し、目的に即した解決策を実行する「課題解決力」が問われます。一方で、前例踏襲型の文化や価値基準、思考の同質性が高い組織の中で、本質的な「課題解決力」を養うことには限度があります。

越境学習は、慣れ親しんだ環境や組織を飛び出し、課題解決に取り組みます。異なる思想や言語を持ったフィールドだからこそ、ゼロから「そもそも何が課題なのか?」「何のために解結するのか?」を問うだけではなく、トラックレコードや同調圧力などの所属組織の枠や制約を超えたアプローチを考え、スピード感を以て実行に移すことができます。これにより、イノベーションを生み出すのにふさわしい、実践的な「課題解決力」が養われます。

新たな価値創造の為に社内外の人を巻き込み、プロジェクト推進する『コミュニケーション』

複雑性の高い課題に向き合い、変化や変革を生み出す為には、時に自チームや自社だけでは太刀打ちができない事も多々あります。取り組む課題を起点に、異なる専門領域を担うメンバーと共に、自分が知らない現場のあらゆるプレイヤーと連携しながら、共創をする必要に迫られます。
越境学習においては、社会課題の現場にいる当事者や課題解決の最前線にいるフロントランナー、行政、市民など、現業では出逢うことのない、多様な人々とコミュニケーションを取る機会が多々あります。
越境学習における課題解決の過程を通して、異なるバックグラウンドを持つメンバーと目線を合わせ、新たな価値創造のために共創するコミュニケーションが身につきます。

課題解決を自分自身の物として捉え、解決をドライブする『主体性』

消費者の課題やニーズを発見しビジネスを発展させていくためには、主体性が必要不可欠です。しかし、多くの企業人にとって、社内での取組みや目の前の現業は上位からブレイクダウンされた業務をこなす事が多く、課題に実際に触れる機会はあまり多くありません。そのため、社員一人一人の仕事への向き合い方が、誰かが決めたお題目に対する「待ちの姿勢」になってしまい、目の前の仕事や課題に対して主体性を高めることが非常に難しいというのが現状です。

越境学習では、特定の課題や困りごとを抱える現場との距離が非常に近いフィールドに飛び込みます。そのため、越境の参加者は、目の前で起きている課題や、課題を抱える本物の人や地域を前に、主体性が高まる傾向にあります。
また、越境で飛び込むフィールドは、全てが整備された大企業とは異なり、未開の地である事が非常に多いです。自分自身が動かないと何も始まらないからこそ、越境の参加者は自らが価値を作る主体者として取り組む事になります。
社員自らが課題と近い距離で、自らが動くことが、課題解決に対する主体性を育むことができるのです。

『越境学習』には、どんな選択肢がある?

さて、一口に『越境学習』といえども、その形態は様々あります。ここでは、いくつかの代表的なモデルと共に、ご説明致します。

①ワーケーション
ワーケーションとは、WorkとVacationからなる造語で、テレワーク等を活用し、普段の職場や自宅とは異なる場所で仕事や休暇することを表します。特に企業で注目されているのは、業務型と呼ばれるもので、特定の地域など場所を変えるものから、実際に地域課題に向き合うものまで、その濃度は複数あります。

②副業・プロボノ
副業とは、本業以外で収入を得ることです。また、プロボノは、本業で培った専門スキルを用いて無償の社会貢献を行うことを意味します。賃金の発生に差はありますが、中心となる仕事とは異なった領域で働くことで、新たな学び・気づきが得られます。

③ベンチャー出向
提携するベンチャー企業に出向し、出向先の業務にあたるベンチャー出向も、また越境の一つです。一定期間、熱意を持った起業家やメンバーと同じ目線で、正解のない課題に取り組む中で、自分自身の仕事を取り組む意義・意味を再定義し、熱意を持って企業にもd理ます。

④社会人大学院・海外大学院派遣
他の企業人・経営者と共にアカデミックな領域に挑戦する中で、机上の学び・気づきを、実際に自分の業務で利活用することができます。

⑤オープンイノベーション型のプロジェクト/プログラム参加
特定のミッションの元、異なる目的を持ったメンバーが集まり、新たな価値創造に挑戦します。ある一つの目的に対して、自社だけではない、様々な立場のプレイヤーと手を取り合う中で、ひとつの目線に囚われない、本質的な課題解決に取り組めます。

⑥海外支社派遣
海外の支社派遣は、かねてから企業が持っていた越境の手段の一つです。言語や文化の異なる地域で、多国籍のメンバーと共に新たな市場を作るという修羅場を通した成長が見込まれています。


上記の通り、越境学習の選択肢は多様にありますが、これらはいくつかの側面から分類ができます。例えば、

出張型 / 出向型
出張型は、越境の現場と職場を行き来するタイプの越境学習のスタイルです。1回に没入する期間は短くなりますが、職場と現場を往復する中で、仮説検証学びの再定義と利活用が加速します。
一方で出向型は、一定期間越境現場の組織に一員として所属します。1回の没入期間は、出張型に比較して長く、越境先のアサインや相性が上手くいけば、得るものは多いです。

取り組む課題の深度
また、越境の現場やテーマも、コミットメントや取扱う課題の複雑さ、従事する期間によっても大きく変わります。

《 プロボノか ⇔ オープンイノベーション型のプロジェクトか 》
《 予め課題が決まったものか ⇔ 課題設定から自分達でやるか 》
《 短期間集中型か ⇔ 長期で向きあうものか》

このように、越境学習はその形式だけでなく、取り組む内容へのコミット度合いによって、得られる学び・気づきや変容は大きく変わります。

『越境学習』導入に向けて、企業人事が取り組むべき最も大切なこと

ここまで『越境学習』についてご説明してきましたが、『越境学習』を導入すれば変革を生み出せるわけではありません。
『越境学習』は、企業の課題感に応える、新たな価値を生み出す人を素ダレル手段である、『越境学習』の導入自体が目的ではありません。
最も大切なのは、「自社の現状と、この先あるべき姿は何なのか」「その課題を越えるために、越境学習を含むどの手法が最適なのか」「解決の手法は本当に越境学習なのか」を、導入以前に明らかにすることです。

リディラバでは、越境学習の導入の有無に関わらず、貴社の人事・人材育成、事業開発の課題感の壁打ちを実施しております。

「他社人事って、どんなこと悩んでる?」
「中計に沿った育成計画を検討している」
「社員に自社・担当業務以外への関心を作りたい」

そんな企業担当者のよき相談相手になれますと幸いです。


最強の『越境学習』は、社会課題の現場にこそある?

さて、越境学習全般や様々な越境学習の選択肢をご説明させて頂きましたが、私たちリディラバは、「社会課題の現場こそ、『越境学習』に最適なフィールドである」と自負しています。代表的な根拠をご紹介いたします。

多様なステークホルダーとの出逢いが価値観を揺さぶる
社会課題の現場における大きな特徴として、多様なステークホルダーの存在があります。ステークホルダーとは、ある社会課題の解決に向けて直接的または間接的に影響を与える利害関係者のことを言い、行政やNPO、地域住民などのことです。社会課題の現場では、そこに関わる人々が多様であるからこそ、それぞれが同様の想いを持っているとは限らず、一枚岩ではないことが多くあるのです。普段のビジネスでは決して出逢うことがない人々と膝を突き合わせ、それぞれの想いが交錯する混沌とした社会課題のリアルに触れるからこそ、自らの価値観を揺さぶる体験ができるのです。

正解が一つではないからこそ自律性が試される
実際の社会課題の現場は、用意されたケーススタディとは異なり、解くべき課題も、目指すべき目標も明確に決まっていないことがほとんどです。そんな正解が一つではない現場はまさに、私たちが今生きている社会の縮図であると言えます。越境学習を通してゼロから課題に向き合うことで、社内だけでは育むことの難しい自律性を刺激することができます。

課題の全体構造を把握し、取り組むべきセンターピンを探し当てる力が養われる
前述したように、今やビジネスのあり方は大きく変化し、企業は自らが取り組む課題を自ら発見し、分析する必要に迫られています。だからこそ、越境先を選ぶ際に、自社のビジネスの延長線上ばかりを探していたり、特定の領域にばかりこだわっていては、本当に価値のある越境学習は実現できません。事業変革・事業創造のヒントは、私たちが想像もしないところに隠されています。社会課題の現場は、その課題への解決策だけを学ぶ環境ではなく、課題の構造や課題への向き合い方を学ぶことのできる環境だという意味で最適な越境先なのです。現業から離れた社会課題の現場で活動することで、これからのビジネスパーソンに必要な力を養うことができます。

リディラバの『越境学習』:フィールドアカデミー

リディラバでは、『​​フィールドアカデミー』と呼ばれる、経済産業省「未来の教室」実証事業から生まれた、企業人が慣れ親しんだ会社の外に飛び出して、社会のリアルな課題にゼロから挑む、越境型の人材育成プログラムを提供しています。

フィールドアカデミーの特徴は、食品ロスや中山間地域の高齢化、地域資源の継承といった多様な課題を抱える社会の現場に越境するということです。実際に社員のみなさんは、課題の当事者や課題に最前線で立ち向かうトップランナーたちに出逢い、現地・現物のリアルに触れ、答えのない課題に対してゼロから解決策の提言を行います。社会課題の現場だからこそ得られる気づきや学びに溢れているのです。
また、フィールドアカデミーは3ヶ月という期間の中で社会課題への「出張」を繰り返すプログラムになっており、社会と目の前の仕事、自社との接点を自ら再定義することができます。仕事を通じて未知の問いに挑む力を身につけることができ、本当の意味で現業に活きる越境学習を実現しています。

リディラバの説明だけでなく、実際に参加者がどう変容したか気になる方は、以下リンクより参加者の声をご覧ください。


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