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Netflixドラマ『離婚しようよ』感想 人間関係も政治も過ちはすぐに認めることが大事


Netflixドラマ『離婚しようよ』が話題

ドラマ界の第一線で活躍する脚本家、宮藤官九郎と大石静がついにNetflixオリジナルドラマに乗り込んできました。しかもタッグを組んで、やばい。

宮藤官九郎さんは池袋ウエストゲートパーク通称『IWGP』で脚本家連続ドラマデビュー、コメディ色が強く独特な世界観とクセが強めなキャラクターが多く登場することから好き嫌いが別れるような作品を生み出す脚本家だと思いますが、国民を代表するドラマ枠である朝ドラや大河ドラマも手掛けています。
私はクドカン作品大好きです。『ピンポン』『なくもんか』『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』『流星の絆』などなどお気に入りで、一番好きなのはやっぱり『あまちゃん』です。
コロナ禍時代に突入して家時間が多かった時、NHKオンデマンドで見返した時はとても元気が出ましたし、日本ドラマでは一番好きです。
『離婚しようよ』は『あまちゃん』パロが多くて少し懐かしく思いました。

大石静さんは『ラブストーリー』の名手と言われる方で『セカンドヴァージン』や最近だと『星降る夜に』など大人のラブストーリーを描いている作品が多いです。
私は正直通ってきていないのですが、来年の大河ドラマ『光る君へ』の脚本を担当されているようで大河ドラマ毎年見る者として大変期待しています。

コメディを多く手掛ける宮藤官九郎とラブストーリーを多く手掛ける大石静、この異色のタッグで出来上がったのが離婚と政治をテーマとした『離婚しようよ』です。
このドラマのまず一番に面白いところを言いますと、キャラクターの見せ方としてはじめに欠点をちゃんと見せて、見てる人にキャラのマイナスイメージを植え付けてから良い所を見せている印象です。
私見ですが、大抵の物語はまずキャラクターの魅力的な部分を見せてから弱い所を時折見せて人間味を感じさせているような気がします。

親からの地盤を受け継いだ二世議員を演じる東海林大志(松坂桃李)とその妻で朝ドラのヒロインを演じた国民的を演じた黒澤ゆい(仲里依紗)の物語。
主演のお二人の顔ぶれは豪華ですが、ネットでは黒澤ゆいの不倫相手の恭二を演じた錦戸亮の色気がヤバすぎると話題になっています。
噂通りとてもヤバい男なので錦戸亮さん、必見です。
このドラマはロマンチックなラブストーリーと熱くなれるような政治ドラマストーリ展開がありつつも、離婚したいけど仕事や家族の事情で離婚させてくれない問題や、国会2世議員や軽視される地方といった政治的課題などヘビーな話も盛り込まれており大変見ごたえがありました。

今回私が取り上げたいのは東海林大志と黒澤ゆいの関係を見て感じた結婚や離婚、家族、仕事などの人間関係と政治における「失敗を認めることの潔さ」です。
ちなみに今回、専門的な政治的な話はしません。政治に関するコメントはNGでお願いします。

結婚・不倫・離婚・両家の家族。大人の恋愛はめんどくさい。


松坂桃李さんが演じていた東海林大志のキャラクターは女性に対してだらしなく、温室育ちの二世議員。
愛媛県にある政治家の息子として生まれ、若くから政治家として期待されて育てられました。国民的女優黒澤ゆいと結婚して、彼女の知名度とサポートがあったお陰で亡き父親の地盤を受け継ぎ、国会議員になったものの何か志があるわけではなく国会では野次を飛ばすだけ。

任期早々アナウンサーと不倫をしてしまい、国民的女優と結婚しておいて別の女と不倫したこともあり、完全に国民からの信頼は落ちていきます。さらに1話では大志は性懲りも無くその女とまた不倫します。
大志は女優としてさらに成長していく黒澤ゆいと自分を比べ、ネームバリューの低さと注目度で劣等感を感じていく内に離婚を考えるようになります。

1話を見た時点での大志の印象はかなりマイナスイメージでした。
しかし、段々と話が進むうちに国会議員の家に嫁いだ母から跡継ぎをどうにかしてつくるように強要されたり、父の偉大さを肌身で感じたり、不倫をした相手は黒澤ゆいに恨みを持っていて大志と不倫をする形で復讐をした事情があることを知り、彼に同情もしたくなる気持ちも生まれます。
何より、大志は地元で選挙区である愛媛に対して強烈な愛情を持っていて、その愛は純粋すぎる程で、政治家として愛媛をどうにかしたいとは思って行動することもあり、彼の成長に目が離せなくなります。
そんな大志の何よりかっこいいシーンは愛媛市民の前でビール瓶ケースの上に立って演説をするシーンです、演説をする彼は何よりも目が輝いていてそれは松坂桃李がカッコよすぎるせいもありますが、政治家として大志を抱いている顔でありました。


一方黒澤ユイはというと東京の下町にあるスナックのママの娘として生まれました。兄弟姉妹がたくさんいますが父親の血は誰とも繋がっていません。さらに母親は戸籍上一度も結婚したことがないため戸籍上の父親は存在せず、女手一つで育てられました。
世間では朝ドラのヒロインを演じたことで国民的女優やお嫁さんにしたい女優ナンバーワンという評価で通っていますが、出自を知っている芸能事務所の社長からは育ちが悪いと馬鹿にされています。
夫である大志が不倫してから夫婦関係が悪くなり、同じ屋根の下で生活していても会話する機会は夫婦でやっている生配信の時のみ。
彼女も離婚を考えるようになります。夫の不倫で怒るゆいでしたが、彼女も不倫をしていきます。

事務所の社長の手腕と黒澤ゆいの演技力の才能で皆が憧れるような女優という立場は、1話を見た印象だと大志に比べればまったく悪い印象はないですが、不倫を散々攻めていた彼女がちょっとした出会いで知り合った男性に惹かれていく様子は、なんというか倫理性どうこうは置いておいて、とても人間的だなと思いました。
それと男性という立場として、大志がゆいの地雷を踏まないように気を使いながら会話をしてそれでも地雷を踏んでしまい、ユイが一方的に怒るシーンは胃が痛くなりかけます。
仲里依紗さんの演技力が凄まじく、大志に愛想尽きてる顔と惚れる顔、不倫相手に色目を使う顔、女優として自信満々に表舞台に立つ顔などさまざまな表情を見せてくれます。

そんな最悪の夫婦関係までになった東海林大志と黒澤ゆいの出会いはとてもロマンチックで、大志は地元の愛媛で政治家として勉強中に愛媛の神社を舞台にした朝ドラを撮影していたゆいと出会い惹かれ合っていきます。
実はその前にも出会ったことがあるというエピソードもなかなかエモーショナルで、運命的に結婚したとさえ感じられます。

物語は大志が離婚を切り出すところから本格的に動き出しますが、なかなか離婚協議は進みません。それは2人が離婚をしたくても周りがそうさせてくれないからです。
理由は政治家である大志に離婚したという〈×〉の経歴は世間の評判が悪く、早く大志の跡継ぎを産んで欲しい大志の母峰子さんの意向です。また大志が国会議員になることが出来たのはゆいの知名度のお陰でもあるため手放せません。

理由は東海林家側だけでなく、黒澤家側にもあります。
黒澤ユイの母はスナックを経営していますが、子どもが多いため東海林家の援助を受けていています。なので、離婚してはその援助は受けられなくなります。さらにゆいの所属する芸能事務所はゆいを理想の妻のイメージとして売り込んでおり、様々な企業がゆいを起用したCMが流れているため離婚されてしまえばイメージに傷がついたと違約金が発生してしまう可能性を恐れています。
離婚の原因が大志の不倫でも、世間にはバレていないけどゆいも不倫をしているため離婚したくても出来ない状況が2人を雁字搦めにします。

出会いは運命的で誰もが羨むような結婚をしても、他の誰かに惹かれて不倫をして結局はバレてしまう。それで終わりならまだいいですが、世間から叩かれあれこれ関係のないことを言われてしまったり、周りが離婚しろ&離婚するなと意見を言って2人の問題は周りの問題に発展してしまう。

大人の恋愛ってめんどくさい!と思わず視聴中突っ込みたくなりした。
結ばれた2人と不倫相手だけの問題にしておけばいいのに関係のない人たちが話に突っ込んであーだこーだ言ってあたかも問題が大きい風に見せているように感じます。
大人の恋愛のめんどくささが本当によく表現され、同時に男女の会話がうまくエンタメに落とし込められていました。

本題になりますが大志の不倫が再び炎上したことにより離婚という展開になります。しかし、大志は決してゆいに冷めているのではなくゆいに対しての愛は出会った頃と変わっていません。対してゆいのほうも大志の悪い所に怒りながらも政治家として人間として純粋な姿勢は評価しており、見捨ててはいませんでした。
なので、大志がもっと早い段階で自分の不貞を認め、謝罪していればもっと問題ははやくに収束していたのだと思います。

恋愛において相手に求めるものとは

ちょっと道から外れますが恋愛において相手に求めているものってドラマを見て再認識したのが「自己肯定感」と「承認欲求」と「性欲解消」だなって感じます。
大志は一見「性欲解消」で動いている様に見えますが、東海林大志ではななく2世議員や国民的女優の夫として見られていることがコンプレックスでそんな悩みを感じている時に近づいてきたアナウンサーが自分の「自己肯定感」と「承認欲求」を満たしてくれる存在になったことで不倫をしていました。
ゆいは世間から国民的女優・理想の妻という評判でなかなかプライベートでも肩の力が抜けず、頼りの夫は不倫したということでいつも張り詰めています。
そんな時にゆいはパチンコで金を稼ぎアーティストとして活動する錦戸亮が演じる恭二に出会い、惹かれていきます。
恭二はゆいが女優として活動していることは知らずにアプローチしており、ゆいにとっては女優としての面を知らないという点と、仕事や人間関係などの損得なしで自分を認めてくれて必要としてくれる姿に惹かれていきます。
ただ恭二に異性としての魅力を感じて欲しますが恭二が『不能』とカミングアウトしたことにより踏みとどまります。
彼女のためにネタバレしますがそれでも彼を欲して不倫をしていました。恋愛とは何か、そんなところを考えさせられる作品です。

政治を行う者の責任

ドラマはラブストーリーだけでなく国会での政治や、地方との向き合い方、それに選挙戦と本格的な政治ドラマが繰り広げられます。
このドラマは政治家の仕事の大事さと存在感、同時に政治家も1人の人間であると感じるドラマで、政治や選挙に対しての視界を広めてくれます。
政治家は要望や不満を持っていたり、もっと住んでいる地域や日本が良くなって欲しいと大小問わず考える市民から多数の指示を得た、選ばれた者だけがなることができます。つまり政治家は希少な存在です。
しかし、その希少な存在というのを=特別だから何を言っても、何をしても許されるという間違った認識をしている人はどんな大そうな志を抱いていてもいつかは破綻します。

冒頭でも話しましたが大志は父親から受け継いだ選挙区から補欠選挙で国会議員になりますが、何を成し遂げたいとか解決したいとかの志がありませんでした。
国会議員という立場を持て余し、平気でメディアの前で失言をしては謝罪することなく、カメラの前を堂々と無視をして通り過ぎ、時が過ぎて世間が忘れるのを待っている。
そんな、残念ながら現実のニュースでも見たことがある姿の政治家です。
大志は選挙戦で野党の幹事長と選挙区を争うことになり、不倫や失言がタイムリーに世間で流れている時ということもあり大苦戦を強いられますが、ゆいとの結婚生活を守るために、父親の選挙区を守るために戦います。

ちなみにこのドラマ、野党の存在は長年日本の野党として奮闘している旧〇主党ではなく近年旋風を巻き起こしている日本〇新の会がモチーフになっているのは時代の流れを感じました。

大志は選挙戦のはじめは選挙で戦う候補者の名前を弄るだけで、中身のあるような話はしていませんでしたが選挙区に住む市民に耳を傾けることにより愛媛の問題は何か、どうすれば良くなるのか検討していくことで理論を身に着け、候補者として成長します。
その姿はとても素敵でした。

選挙戦後半、大志の政治家としての方向性がまずは人の悩みや意見を聞くことだと事務所を相談所にしたり、雨の中でも傘を差さずに政策を訴えたり、最後に商店街を地元の音頭で踊りながら市民に応援されていて、とてもかっこよかったです、泣いてしまいました。

悪い事をしたらすぐに過ちを認めて謝罪するべき、それは政治にも通ずる。なんなら、沢山の人に選ばれて仕事をしている政治家は当然に通じて欲しい心得です。
大志も失言をしたらすぐに謝罪をすれば収まっていたでしょう。
何故それが出来ないのか、それはプライドと人によっては先程話した政治家を特別な存在であると思っているからでしょう。まあ一応、一度失敗したら周りから見放されるのではないかというプレッシャーもあると思いますが、認めないのと認めて反省するのはどっちがいいのかなんて子供にも分かる問題です。

最近Amazonprimeで配信されている『はりぼて』というドキュメンタリー映画があります。
その映画ではとある県の沢山の市議が活動費を架空で請求したり、水増ししたりして自分の懐に収めていたという事件がテーマになっています。
メディアに追及された疑惑の市議は目を伏せたり泳がせたりしながら「活動はしたと思うけどなんだったのかはすぐに思い出せない」とシラを切っていて、大変見苦しかったです。
この映画問い詰めて市議が否定しては、コメディみたいな音楽が流れ、その後ダラダラと罪を認め辞職に追い込まれるという情けない4コマ漫画みたいな展開何度も行われていて、重大な問題だけど『嘘つきおじさんのドタバタ不祥事コメディ』みたいなキャッチ―な演出になっており非常に面白かったです。
すぐに不正を認めてお金を返還していればつまらない映画になったと思います。

まとめ

政治家は嘘をつく、市民に不正を隠す、もう何を信じればいいのか分からない、それでも誰かを自分の意思で選ばないと真面目に生きている市民が損をしてしまう。
そうならないように日々政治に関心を持ち、選挙では誰を信じたいのかちゃんと自分で決めていくべきだなと思います。
このドラマを見れば次の選挙が少し楽しめると思います。
ゆいの不倫相手の恭二はパチンコで生計を立てながらアーティスト活動をしている通称(パチアート)と馬鹿にされるような男でしたが、ゆいを通して大志に興味を持ち最終的には選挙にはまります。
そんな恭二は最後「パチンコと選挙は全国どこにでもある」というセリフが深くて大好きです。


















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