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インドの水マフィア

こんばんは!
本日は、インドの水マフィアの話。
私の住んでいるエリアはいわゆる高級住宅街に位置し、水に浄水システムがついており、飲み水として利用することができる。
ただ不安があるので、飲み水は20Lの飲料ボトルを2週間に1度ぐらいに購入している。
私の同僚の家でも飲み水としてこのような飲料ボトルを購入して、食事に使用したりしており、非常に一般的である。
たまに水の配達が遅れると、水が切れることもあり、日本のように蛇口をひねればいつでも飲み水が出てくることは、非常に重要なサービスであると実感する。
ということで今回は、そんなインドの水事情に深く関わっている「水マフィア」ついて、取り上げていく。

他のメディアでは取り上げられないようなインドの「深い」ニュース記事を取り上げ、「リアルなインド」を皆さんに紹介していく。
皆さんの意見があったら、ぜひコメントで教えてほしい。


下水道システム


インドの下水道は、各州政府が管轄しており、州ごとによって下水道の管理方法は異なる。
一般的なインドの下水道システムは、各家庭やアパートメントの地下と屋上に大きなタンクがついており、地下タンクの水道管から給水されるようになっている。
また、デリーなどでは、水資源管理の観点から、水道局からの給水時間が決まった時間でしか行われず、朝と夕方の2回と決まっている。

水マフィアの誕生


人々はタンクに供給された水を使用するのだが、水が不足した場合は、政府の給水車から無料で水を手に入れることができる。
ここで暗躍しているのが、水マフィアの存在である。
彼らの誕生には、スラム街の存在が関係している。
ムンバイを例に上げると、 2011年に行われた国勢調査によると、ムンバイ市の人口1250万人のほぼ半数にあたる510万人がスラム街に住んでいるとされている。
州政府から正式に認定されたスラム街に住む人々には、賃貸住宅が認めており、水を供給する法的義務がある。
ただ認定されていないスラム街には、水を供給する法的義務はない。
多くのインドの大都市でそうであるように、インド最大の商都ムンバイも、人口に対して下水道などのインフラの整備が追い付いていない。
ただそれでも人々は機会を求めて、この街に来る。居場所のない多くの彼らが住居とするのは、こうした非認定のスラム街である。
水はどんな人々にも必ず必要な生活必需品である。
こうした人々へ、水を供給する役目を果たしたことで、水マフィアは生まれた。
その違法に得られた富は、年間1000億ルピー(約1780億円)にも及ぶといわれている。

給水ドライバー


実際にはどのように水マフィアは活動しているのか。
政府の給水車を、毎日地域を回り、水を無料でタンクへ給水している。
ただ、その給水業者そのものが水マフィアであったり、またはその中のドライバーが水マフィアに買収されているケースがある。
一部地域で水がほしいとの連絡が住民からあった際、ドライバーはあらゆる理由をつけて拒む。
ただそれでは住民は困るので、法外な値段でも買う。
または、一部地域の運転だけ水マフィアのドライバーに変わらせ、そこで法外な値段で売りつけるなど、手法はさまざまである。
ではなぜこんなことができるのか。その地域の人が抗議の声を上げそうなのだが。
その理由は彼らが地域に根差し、地域の活動の多くに関わり、大きな政治的な影響力を有しているためだ。

政治家との癒着


マハラシュトラ州では低価格の食料品へのアクセスを目的に、収入に応じて赤、黄、白の配給カードが配布される。
しかしスラム街の住民には、こうした行政府への申請等ができない人も存在する。
そのため、このカードの管理は水マフィアによってまとめて管理されたりする。
これはただの一例であり、年金なども含まれる。
行政へのアクセスを彼らに握られている以上、住民は逆らうことなどできなくなる。
こうして地域で絶大な権力を持った水マフィアは政治家に圧力をかけ、さらにビジネスを拡大していく。
逆らえばその一帯の住民はその政治家には投票せず、落選することは明白であるからだ。
こうして水マフィアは政治権力を取り込んでいき、政治家、警察、水道局とのトライアングルの腐敗の構図を作り出す。

水道局の腐敗


水道局の役人が水道に関して大変責任のある仕事を任されている。
ムンバイの水道局であるムンバイ市公社職員の腐敗について、ムンバイのこの問題を追うジャーナリストはこう語る。
職員は2時間のインターバルを置いてムンバイへの各都市へ水道を供給する。
例えば彼の担当が10本のパイプラインである場合、1本のパイプライン以外の栓を開き、水道を供給する。
開かれなかった1本によって、5-6kmのそのエリアの住民は水道にアクセスができなくなる。
なぜそんなことをするのかといえば、水マフィアはそのエリアでいわば水の独占販売ができ、職員はたった一つのパイプラインを開かないだけで2000ルピー(3579円)が水マフィアから支払われる。
汚職である。

解決の兆し


この問題はすべてインフラの不足に起因する。
問題の改善の兆しは現れている。
デリー首都直轄領で2013年より政権を握るAAP、
アンナ・ハザレ氏のもとに2011年に起きた大規模な反汚職法(汚職事件を単独で調査する権限を持つ独立機関であるジャン・ロクパルの設置を行う)の制定を求める抗議運動に端を発する新興政党である。
選挙の際に彼らは水マフィアの問題は政治の汚職の問題であり、この問題を一大争点として掲げた。
その結果、デリーはこの10年間で54パーセントの下水道設置率が、93パーセントにまで大幅に向上した。
また政府のフリーダイアルに電話をすると2時間以内に無料で水を供給するサービスも始めた。

水が社会を分断


供給される水には、タンクの掃除が不十分であったり、適切な管理をされていないために、汚染水が発生し、たびたび問題となっている。
これらは高級住宅街でも起こりうるが、これらの住宅には浄水器がついており、供給された水が悪くても、最終的には飲むことができるレベルになる。
しかしそういった装置が存在しないスラムの住宅では、死活問題となる。
2009年のムンバイでの調査によれば、スラム街の住人は月に600-800ルピー(1069円-1425円)ほどの費用をかけて、水マフィアから水を購入していた。
彼らの収入は5000-8000ルピー(2805円-4488円)と考えると、収入の10パーセント以上を水に使用する、という調査結果であった。
現在、ムンバイでは60-65パーセントがスラムに住んでいると言われており、彼らがドライバーや家政婦や清掃員や配達員として街を支えている
社会の一員として重要な貢献を行っているにも関わらず、彼らは生活需品の安全な水へのアクセスも与えられない。
つまりお金を持つものと持たぬもので、生きていくためのコストが異なり、早急に解決が必要である。
できなければ、この問題は社会に深刻な分断を生むことになるからだ。

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