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コン、コン、コン、
おはよう。またいつもの部屋。
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コン、コン、コン、
「・・・・・」
コン、コン、コン、
「・・・ん。・・・おはよう。」
ええと、ここは
うん、いつもの部屋だ。
よいしょっと。
ベッドから飛び降りる。
が、着地したカーペットが滑ってベッドに頭をぶつける。
いててて
まあ、いつものことだ。
コン、コン、
「ああ、大丈夫だよ。」
コン、コン、コン、
「今日は水没した世界の夢だったよ。私は空から落ちて海に投げ出されたんだよ。ただ、生き物はいなくて、ぼーっと傾いたビルの上で眺めてただけだった。」
そんな景色一度も見たことないのに
夢ではそれらが現れる。
コン、コン、
「ありがとう」
ノックとともにいつの間にかテーブルに現れた朝食をとる
温かくておいしい。たぶん。
改めて部屋を眺める。
やはりいつもと変わらない眺めだ。
シンプルだが少し広い、どこにでもあるような気がする、
だがどことなく不思議な雰囲気の部屋だ。
部屋での生活は飽きない。
欲しいものすべてがある。というか現れる。
机やソファ、知らない画家の絵、たぶん存在しな有名な本、
望んだもの全て現れる。
コン、コン、コン、
「ごちそうさまでした。おいしかったよ。」
彼(ってわたしがよんでる。彼女かも。もしくは、それ以外)は誰か分からない。
ごはんをくれるからたぶんいい人だ。
わたしは・・・あんまり自分を知らない。
コトバは最初から知っていたと思う。
何歳かは分からない。
ずっとここにいる。
たぶん人だと思う。
わたしの好きなひと時。音楽とともに。
![](https://assets.st-note.com/img/1665845251168-KjPMgUENyy.png?width=1200)
気が付くと本棚が現れていた。
とてもおしゃれだからわたしのお気に入りだ。
久しぶり見た気がする。
ちょうど今日は読書の気分だった。
「ありがとう。」
コン、コン、
うーんと…どれにしようかな。
わたしの好きな時間の一つ、本を選ぶ
大きい本棚にはまだ読んでいないものが沢山ある。全て読むのは無理かも。
なんだか宝探しみたい。
あ、これあの作家さんの!
こっちはあの人の!
このシリーズ新しいの出たんだ!
ううん…とても悩ましい。
じゃあ、これ!
手に取ったのは、あえて今まで読んだことのない作家の本だった。
たまには冒険しないとね。
わたしの机はとってもシンプルで使いやすいものだ。
そして、わたしの好きな見た目だ。
きっと彼が考えてくれたのかも。
机のいつもと同じ引き出しから音楽プレーヤーを取り出す。
これにもいろんな曲がはいってるけど
今回はいつもの明るくて落ち着いた感じのBGMをかける。
こっちのほうが周りの音が消えて集中できる。
窓もない部屋では何も聞こえなそうだが、実際はどこからか、何かが聞こえてくる。たぶん環境音?だと思う。
普段は気にならないが、読書の時は集中したい。
今日も本の中のセカイへ、落ちてゆく。
レッツ、ゴー!
おやすみ。また明日会えたら、いいね。
![](https://assets.st-note.com/img/1666954314758-hoR6ypFQzc.png)
本の中は最高だった。
よみ終えて、背伸びをすると、本は消えていた。
気が付いたらもう暗くなっていた。
実際は見えないのだけれど
なんとなく、感じる。
コン、コン、
テーブルの上に、冷たくなったカレーがあり
表面にはうっすら膜が張っていた。
コン、コン、コン、
「ゴメン、今食べるよ。」
ほんのり、甘い
ちょっとピリッとする
わたしの好きな味
なんとなく、まだ温かい。
「やっぱりおいしい。いつもありがとう。」
彼は料理がとっても得意だ。
コン、コン、コン、
たぶん、どういたしまして。
パジャマに着替えて歯を磨く。
そろそろ眠くなってきた
朝、頭をぶつけたベットに横になる。
ふかふかしてて、溶けそうになる。
「おやすみなさい」
コン、コン、
『また明日・・・』
その声はノックの音に混じって、
少し、聞こえずらかったけど、
とっても低い、囁くような
けれど、なんとなく、暖かく包み込むような声だった。
あぁ、たぶん、わたしが思う"彼"と一緒だ。
そう思ったんだ、
だけど、すぐにわたしはこのことを忘れるのだった。