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69 歩きながら
学区のはずれに住んでいる人は通学に30分以上かかると聞いています。都会で30分以上というのはちょっとした道のりです。クラスの中ではOくんが一番遠いかな? 運動にはなりますが、部活の道具を持っていたり、雨の日に傘をさしているときなどは大変かもしれません。もちろん世界を見渡せば、そして日本でも、地域によっては気の遠くなるほどの時間をかけて遠い道のりを歩いて通学する子どもはたくさんいます。
みんなは登下校のとき何をして歩いていますか? 友達とおしゃべりしながら? 歌を口ずさみながら?古文でも暗唱しながら?周りの風景を楽しみながらの人もいるでしょう。もちろん何もしないでただ黙々と歩いている人もいると思います。
いつも車で通勤している私ですが、たまに歩くことがあります。昨日も歩いてみました。歩くと風景が全然違います。普段見えないものが見えます。垣根越しに見えた梅の花がとてもきれいでした。八百屋さんの店先にはもう春野菜が並んでいました。風に乗って沈丁花の香りが漂ってきました。小鳥のさえずりや流れる雲にも季節の移ろいを感じます。
移ろいは人の世界にも感じます。いつの間にか家が無くなり更地になった土地、一方で新たに建てられたマンション、コンビニだったところが動物病院になっています。掲示板のポスターも替わり、ショーウインドウのディスプレイも新しくなっています。乗り捨てられた自転車がありました。どんな人が乗っていたのだろう、なぜここに放置してあるのだろうと考える必要もないのに考えてしまいました。
歩いていると頭の中にいろいろなことが浮かんできます。車を運転しているときにはできない体験です、歩くということは想像の源であるような気がします。歩きながら何かを吸収しているようです。
20世紀を代表するアイルランドの作家ジェームズ・ジョイスは作品を書くために何時間もダブリンの町を歩き廻ったそうです。時には夜通しで。そうすることによって想像力を高め、素晴らしい作品を生み出したと言われています。歩くことにはそれほどの力があるのですね。
毎日毎日歩いて登校しているみんなの感性も知らず知ら
ずのうちに磨かれているのかもしれません。
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これを投稿しようと思っていたら、昨日(1月15日)の朝日新聞に谷川俊太郎さんのことばが載っていました。↓
朝、家を出てから、学校に着くまであったこと、見たことをきちんと言葉で伝えられればいい。詩を書くのはそのあとでいいでしょう (谷川俊太郎)
劇作家・演出家の平田オリザとの対談が済み、会場にいた若手教師が詩人に、今の子どもたちに最も大事な「国語の力」は何かと質問した。自由な発想や想像力といった答えを誰もが想像したが、答えはこれ。「背筋が伸びる思いだった」と平田はふり返る。平田の「日本近代文学にどっぷりつかる日々」(「一冊の本」1月号)から。
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