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こんな部活動もいいんじゃない?

公立学校は基本的に一定期間が過ぎると別の学校に異動します。異動時は担当学年や校務分掌、部活動の顧問など事前に相談されることもありますが、すでに決まっていることも多いです。

異動先の学校で家庭科部の顧問をやってほしいと言われました。それまで顧問をしていた女性教員が他校に異動したのであとを引き継いでほしいというのです。その学校では生徒は全員何らかの部活動に所属し、教師も全員顧問を受け持っていました。

家庭科部の顧問を引き受けるかどうか私は迷いました。私はもともと部活動に積極的な人間ではありません。毎日遅くまで活動したり、土日も試合に明け暮れる部活動には否定的です。さらに全生徒、全教員が参加することにも賛成ではありません。そもそも「なぜ私が家庭科部?」と疑問に思いました。新たに赴任した教員は男女複数います。私でなくてもよいのになぜ私だったのが疑問でした。私が女性だから? 家庭を持つ主婦だから? 家庭科は女性が担うという古い考えから?よく分かりません。そもそも私の家事はいい加減です。加えて何の相談もなく決められていたことにも納得がいきませんでした。「やったことのない運動部をもたされるよりいい」と言う人もいましたが、私の疑問がそれで解決するわけではありません。

でも私は家庭科部の顧問を引き受けました。他にやる人がいませんでしたし、それまで所属していた生徒たちが困ると思ったからです。その代わり私のやりたいようにやらせてもらうと宣言し、活動の仕方を変えました。先述のようにその学校では全員部活動に加入ということになっていましたが、当然部活をやりたくない生徒もいます。習い事で忙しかったり、家庭の事情で早く下校しなければならない生徒もいます。やりたい部活動がないという生徒もいますし、「部活文化」に馴染めない生徒だっています。家庭科部の中にはそんな生徒が多かったです。障がいのある生徒もいましたし、他に入部したいところがないからという消極的な生徒もいました。家庭科部はそうした生徒の受け皿のようにもなっていたようです。

それまで家庭科部は週2日の活動で、主としてお菓子作りをしていました。1日は次回のメニューを考え、もう1日は実習です。私は週2日の活動日はそのままにして、活動の内容を刷新しました。活動内容を生徒が自由に決めるのです。お菓子作りはもちろん続けますが「お菓子ばかり食べていたら身体に悪いよ」と言っていろいろな料理に挑戦することを勧めました。寒い冬にはおでんを作ったこともあります。大好評でした。生徒たちは家庭ごとにおでんの具材が違うことを知りましたし、何よりもみんなで作ったおでんは最高に美味しかったです。調理室に暖簾をかけて活動を終えた運動部の生徒達にもおすそ分けしたり、職員室に「出前」したりしました。

調理以外のこともやりました。家庭科部に定番の手芸や編み物はもちろん、DVDを見たり、音楽を聴いたり、読書をしたり、絵を描いたりましたし、時には校庭で運動もしました。「家庭科部なのになんで?」という教師もいましたが、「家庭ではいろいろなことするでしょ」というのが私の返答です。もちろん「何でも部」などと名称を変えてもよかったのですがあえて「家庭科部」とい名称を残しました。「家庭科」の既成概念に対するささやかな抵抗です。

現在、部活動については議論が盛んに行われています。外部委託なども検討されていますが、既成概念に捉われない議論を行ってほしいです。特に生徒を交えた議論がなされることを願っています。


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