大学職員の今と昔
今回は大学職員の今と昔についてお話ししていきます。自分の身の回りの上司や他大学の方から聞いたかつての話から、今の採用状況、求められるものなどを対比してお伝えしていきます。
①採用について
まず大学職員の採用について。今では倍率がとても高く数百倍になることもある大学職員の採用。かつては今のような倍率の高い選考だったのでしょうか。
まず私の上司の話。以前採用に関することを聞いたときに、上司が本学に応募した際は応募者が6名しかいなかった、とのことでした。20年以上も前の話だから今とは全然違うよー、と言われました。まじかー、と私はその時率直に思いましたね。
次は他大学の課長さんと飲みに行った時の話。私が転職して他大学に移ったということでそのお祝いをしてもらいました。その時に転職の話になったのですが、そこでもやはり今とは違い、課長さんの時はどこの企業からも内定がもらえず仕方ないから母校の大学が取ってあげる、そんな形で大学職員となったそうです。だからこそ今の時代転職して大学職員になるのはすごい、とその課長さんに言われました。まじかー、と私はその時率直に思いましたね。
今回2名の40overの大学職員の方にお話しを伺って共通して言えるのが
今から約20年前、大学職員は今のような倍率ではなかった。
一般企業よりも倍率がはるかに低く、人気の職業とは言えなかった。
それが今となっては募集を掛けて求人サイトに乗せれば倍率数百倍は行くような人気職業となりました。これは時代背景や社会の変化など様々な要因があると思いますが、結果として今ではこのような職業となりました。
また、私が新卒で就職活動をしていた約10年前の時もそれなりの人気がありましたので、ここ10~15年の間に人気が出てきたのだと思われます。
②大学職員に求められること
次は大学職員に求められるものについて今と昔を比べてみたいと思います。
まず前提として、大学は「学校教育法」や「大学設置基準」といった法律を基に成り立っています。そこにはかつて
と書かれていました。つまり大学職員は”事務に従事する””事務を処理する”のが役割で、与えられた事務処理を正確にこなす、決めれられたことを正確に行うことが求められていました。
とまあこれ実は昭和22年の学校教育法や昭和31年の大学設置基準といった古いもので、様々な議論を経て今ではこの認識も変わっています。それでも割と最近(2017年あたり)まではこのままだったんですけどね(笑) それでは今はどのような認識か見てみましょう。
・『教職協働』
・『SD(スタッフディベロップメント)の義務化』
こんな感じでちらほら職員に求められるものが変化してきました。長々と書いていますが、要するに・・・
・多様化してきているから事務職員も経営に参画してね。「事務に従事」ではなく「事務を遂行」に変わった。(変わったはずだけれど、条文が見つからなかった。そもそもこの箇所が削除された?)
→(※2月16日追記)平成29年3月29日の「大学設置基準等の改正について」の通知にありました。
大学設置基準等の改正について(諮問):文部科学省 (mext.go.jp)
・教員と職員の関係は上下じゃなくて対等に、協力して大学運営してね。
・能力開発は教員だけじゃなくて職員も一緒にして研鑽してね。
ざっくりこんな感じかと思います。かつては与えられたことを正確にこなしていればよかった事務職員ですが、今では”主体性”や”協調性”などといったことも求められるようになってきました。
③大学職員の業務
業務内容も昔と比べてかなり変わってきています。というよりも業務のやり方や進め方が変わっていたり、考慮しなくてはいけないことが多岐に渡っていたり、という印象です。
まず進め方ですが、前述にもある通り以前は与えられた業務を正確にこなすことが求めれらていました。つまり敷かれたレールから外れるな、ということです。しかし、最近では文科省も「学生の不利益にならないように」「弾力的に」などといった曖昧な表現で幅を持たせています。つまり、それぞれの大学で何が必要か、何をするべきか考えて行動する必要が出てきました。つまり業務を進めるにも必要なことや求められていることをしっかり考えて自身の行動に移さなくてはいけません。
また、30年くらい前までは紙ベースでの業務が中心でしたが、それが徐々にExcelやWordへと移行し、そして新型コロナウイルスの影響によりオンラインやWebなど大学のDX化が一気に加速しました。この流れに追いつけない人は正直職員としてかなり厳しい立場になっていると思います。
他にもデータに基づく大学経営が求められて”IR”なる部署の設立、大学の情報公開が義務化、中期計画の作成・公表、時代に合った学部学科の改変改組、事務局の適切な運営のための部署の統廃合・新規設立、学生への合理的配慮、入試制度の多様化などなど様々な社会変化を受け入れていく流れになっています。社会の変化は高等教育にも反映されていくので、おそらくこうした大学職員の業務の変化は今後も起こっていくことでしょう。そのたびに私たち大学職員はその変化に対応しなくてはなりません。学生や社会に求められるため、そして大学として生き残っていくためには、常に変化に対応していかなくてはいけません。
④職員のパーソナリティ・スペック
これは採用とも絡んでくるのですが、最近では高い倍率をくぐり抜けてきた人たちが大学職員として採用されています。そういった傾向から基礎学力やコミュニケーション能力といった部分ではそれなりのレベルが確保された人材が多いと思います。
ただ、かつては今ほどの倍率ではなかったため、基礎学力もまばらですし、事務の遂行能力もバラバラです。ただ卒業生だったからと言って採用された方もいます。人によっては時代の流れに乗れず、事務職員はただ与えられた業務をこなしていればいいんだ、そんな考えの方もいらっしゃいました。
(かつて全国の教務担当者研修会の分科会で「それは教員に任せておけばいいんだ!」と発言して他の参加者をドン引きさせていた方がいました)
ただし、これに関しては上司の方でも大変真面目で頼りになる方もいるので、もう本当に個々人によるとしか言えません。ただ、最近入職してくる方々は優秀な方が多いのではないでしょうか?
また、スペックとは別の話ですが、現代病ってやつでしょうかね大学職員は割と精神的に崩れる人もしばしば見かけます。たぶん真面目な方ほどメンタルを崩しがちな気がします。適度に息抜きをして、何でもかんでも引き受ける・成し遂げるのではなく、できないものはできないと割り切ったり、誰かを頼ったりできる人の方が長く続くような気がします。とはいえどこれは一部の話で、大方の大学職員は普通に働いていますし、普通に業務をこなしています。SNSなどで見かける「また優秀な人が去っていった」「また休職者が出た」といった事は一部にすぎません。こういった情報を大学職員の全てと捉えることはナンセンスですし、多少の人員の流動性はどの業界にも言えることです。こうした精神的な問題は、もちろん本人のメンタルの強さもありますが、他の業界もそうした人が増えているので決して大学職員業界が特別なわけではなく、現代病に罹っている一部だという認識が良いと思います。
まとめ・おわりに
いかがでしたでしょうか?
今回は大学職員の今と昔についてお話ししてきました。
結局個々のパーソナリティによる、というのが大きいかと思います。ただ昔のイケイケな日本経済に比べたら、私立大学のビジネスは手堅いので今の時代転職者や新卒が大学職員を求めるのも分かります。確かに18歳人口の低下によって厳しい時代が来ていますが、正直厳しい業界なんていくらでもあるし、大学職員はもっとマクロな視点で見たら恵まれている方だと思います。
今回の記事が大学職員を目指している人に少しでも貢献できれば幸いです。
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