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大原入道

 自分は行ったことがないが祖母は新潟の大原出身で、今は残っているか分からないが女の人の髪をお供えする神社があり、夜に行くと髪が沢山ぶら下がっていて、とても怖かったと言っていたことを思い出した(今回の話とは関係ない)。これは、新潟出身の祖母の両親が何十年も前に体験した話。

 祖母の両親は大原で米屋を営んでいた。ある日の朝早くに市場に米を卸すため、沢山米を載せた大八車を二人で押していた。暁の薄明の中、田舎の畦道に差し掛かった時だ。まっすぐ伸びる道の向こう側の左脇に何か立っている。人かと思ったが近づくにつれて遠近感がおかしいことに気づいた。背が高い、いや異様に縦に長い。後ろから車を押す母親は怖くなり、見ないように下を向きながらやり過ごそうとした。だが何故か車は得体の知れないその影がいる左の方に寄っていく。後ろで右に舵を切り直そうとしても無駄で、どんどん大八車はそちらに向かっていく。。。

 しばらく母親は目を瞑っていたが、気がつくと辺りはもう明るく、その影もいなくなっていた。前で車を引いていた父親に「お父さん……今の……」と言うと、父親は一言「轢いてやろうと思った(笑)」と言ったそうだ。

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