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【超短編ホラー小説】死者の村2

その出来事から数年後、新たな若者が死者の村の言い伝えを耳にし、冒険心と好奇心に突き動かされて再び山に足を踏み入れた。彼らは先代の若者たちと同じく、山の奥に広がる死者の村の秘密を解き明かそうとしていた。

彼らの中には死者の村の存在を信じず、言い伝えをただの迷信だと軽視する者もいた。だが、夜が更けるにつれ、山の中に漂う不気味な雰囲気は次第に強まり、一団の若者たちは様々な不可解な出来事に遭遇していく。

深夜、月明かりの中、若者たちは死者の村に繋がる小道を進む。不安から進む足取りは重かった。彼らは次第に山の奥へと進むと、異様な光と影の交錯が目に映り、不気味な声が彼らを包み込んでいった。

「ここまで来れば、もう引き返せないな。」

一人の若者が口にしたその瞬間、周りに立ち込めた霧が一気に濃くなり、視界が遮られる。彼らは進むべき方角を見失なってしまった。

すると、霧の中から微かな声が聞こえ始めた。

「帰れ…帰れ…」

と、何重にも囁きが重なるように響く。若者たちは背筋が凍る思いを抱えつつ、不気味な声に導かれるままに進んでいく。

やがて霧が晴れ、彼らは死者の村の廃墟に辿り着いた。古びた家々と崩れかけた神殿が立ち並び、それらはかつて栄えた村の面影を物語っていた。しかし、村はもはや人の住む場所ではなく、死者の息吹だけが漂っているかのようだった。

若者たちは慎重に歩みを進め、神殿の奥に広がる中庭に足を踏み入れる。その中庭で、かつての村の住人たちが影となって現れ、彼らに呼びかけてきた。

「帰れ…我らの村にこないでくれ。」

住人たちの姿ははっきりとは見えず、ただ闇の中で揺れる影のようだった。

「この場所には、生者には理解できぬ呪縛がある。」

若者たちはその言葉に耳を傾け、村の歴史や呪いにまつわる物語を聞くことになった。彼らは死者たちの苦悩や願い、そして村が抱える暗い過去を知り、同時に呪縛から解放される手立てを見つけようとしていた。

しかし、話は予想外の展開を迎える。村の住人たちは若者たちに自らの苦しみを分かち合ってもらう代わりに、村の呪いを解くための生け贄が必要だと告げた。彼らは死者の村を彷徨い続け、救いの手を差し伸べる者を待ち望んでいたのだ。

若者たちは混乱し、選択を迫られた。一部の者は呪縛から解放されるために生け贄を捧げることを拒み、村を去ることを決意した。しかし、別の者たちは村の住人たちの悲願に応え、死者の村に残ることを選択した。

死者の村はその後も不気味な光と影で満ち溢れ、その囁きは夜空に響き続けた。若者たちの選択は未知の世界へと続き、村は生者と死者の狭間に位置する神秘的な場所として、山深い森の中に佇み続けた。若者たちの選択により、死者の村は再び静寂と不気味な空気に包まれ、かつての村の住人たちは死者としての役割を果たし続けた。

一方で、村を去った若者たちは新たなる冒険を求めて旅立ち、死者の村の存在とその謎めいた呪いを忘れることはできなかった。時折、夢の中で死者の村の風景が蘇り、彼らの心を不安と興奮が交えて揺り動かしていた。

年月が経つ中、新たな冒険者たちが死者の村を訪れ、その言い伝えに引き寄せられていく。彼らは死者たちの呪いを解くか、あるいは新たなる秘密を探求をしにやって来た。死者の村は彼らの訪れを静かに待ち、その不気味な囁きは山々に響き渡ることとなる。

一方で、生け贄を捧げた若者たちは死者の村の中で新しい生活を始めることになった。彼らは死者たちと共に、村の歴史を守り、呪いから解放されないまま、永遠の時を過ごすことになった。村は死者と生者の共存の場として、時が経つにつれて新たなる歴史を紡ぎ始めた。

そして、山深い森に囲まれた死者の村は、夜空に浮かぶ静寂な月明かりと共に、永遠にその存在を続けることとなった。彼らの物語は、生者と死者が交わる神秘の世界で、時がゆっくりと流れていく。

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