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本当に無理になったら窓から飛び降りようと思ってた話


不登校になって

中学3年生の春頃、不登校になってから半年が過ぎようとしていた。
完璧主義を拗らせた私は、成績や部活動、塾、委員会の仕事に追われ、突然学校に行くのが辛くなった。

今考えれば、成績や部活動、塾、委員会のどれか一つを捨てても、学校に行くことを投げ出すべきではなかった。けれど、その当時はどれも捨ててはいけない大切なものに見えていた。

どうしたら許されるか

何もかも投げ出して不登校になった私は「許されたい」と思っていた。
学校に行けていないことを「仕方ないね」と認めてもらいたいと思っていた。
そこでまず、カウンセリングに行った。あわよくば何かの心の病だと診断されないかと期待していたが、そんなうまくいくわけもなかった。

じゃあどうしよう....
学校の先生や生徒、誰から見ても「〇〇ならしょうがないね」と言われるものは何か?
私が編み出した〇〇の答えは「自殺するくらい辛かった」だった。

悩んでることに悩む

健康な精神状態なら「何考えているんだろ」で終わるのだろう。
だが、そのときは真剣に「自殺しようか」と思っていた。
自殺することで許されたいと思いつつも、お腹に包丁を向けても何もできない。刺す勇気はない。

でもそれ以外の道がないように思えた。そんなことを考えながら、自殺した後のことを想像してみていた。
私が自殺したら、親は悲しむだろう。兄弟にとってはトラウマになるだろう。それに気づくと、自殺について考えている私が身勝手に思えてくる。
だけど何にも希望は感じられない。不登校になって、高校受験ができる状態じゃなくなって、私の今後の人生には何も期待できない。自殺すれば全ての問題が解決する気がするけど、そんなこと考えるなんて身勝手じゃないかと、二階の自分の部屋のベットに潜りながら四六時中考えていた。

そんなとき、なぜかわからないがパッと窓が目に入った。自分の部屋の真ん中に位置した窓を見て、私は思った。

本当に無理になったら、あそこから飛び降りよう。

今振り返るとぶっ飛んだ考えだが、心がスッと軽くなった。
自分はなんで自殺しようかと考えているんだろう、という悩みがなくなった。そんなこと考えられないくらい、耐えられないくらい辛くなったら、何も考えずこの窓から飛び降りればいい。だから今は生きていよう。
逃げ道ができたような気がした。

逃げ道を作って

それからは苦しくはなくなった。まず「自殺」どうこうで悩むことはなくなった。
進路の話をするときも、学校に行かなければいけなかったときも、
「無理になったら、いつでも終わらせられる」というマインドが私を強くした。心配したり、怖くなったりするたびに自分の逃げ道を思い出し、とりあえず前に進んだ。

欠陥に気づく

中学校を卒業すると同時に、不登校でなくなった私は希望に満ち溢れていた。大学は海外に行きたいなとか、この部活に入りたいなとか、少し前では考えられないくらい将来のことを考えては期待に胸を膨らませていた。

高校生活が始まって初めての週末、桜が咲き、心地よい風が吹いていた日、
その日私は母に言われて自分の部屋で断捨離をしていた。
ふと窓を開けて、自分の逃げ道のことを思い出し、少し身を乗り出してみた。そのとき私は気づいた。
この窓から飛び降りたって、どう頑張っても死ねなかったなと。
まず高さが足りないし、地面だって土だから柔らかい、最悪でも骨折だろう。それに気づいたとき、なぜかわからないけど複雑な気持ちになり、私は思わず笑ってしまった。

あれから3年が経って

当時、中学生の私にとって学校は全てだった。仲のいい友達がいて、一日の中で一番長い時間を過ごす場所だった。当時はスマホも持っていなくて、学校外でのつながりはほとんどなく、「学校=社会」だった。
学校に行けなくなったとき、私は社会を失った。社会から切り離され、毎日自分の部屋にいる。特に何をするわけでなく、誰かと話すとしたら母のみ。
自分の存在意義を感じさせてくれていた人との繋がりやそれによって生まれる喜怒哀楽、やらなければいけないことを行っているという達成感を失って、自分が「無」になったようだった。

「不登校になってよかったと思えるか?」と聞かれれば、
自信を持って「はい」と答えるだろう。たくさんのことを学べた期間だった。
だが、「過去に戻ったら、もう一度不登校になるか?」と聞かれたら
「いいえ」と答えるだろう。どう頑張っても、「はい」とは答えられない。
覚めることのない悪夢をみているようだった。

本当に無理になったら窓から飛び降りようと決めたことは私を楽にした。
あのときに私は、自分の現状を受け入れ、復活に向けた覚悟を決めたのかもしれない。

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