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民法#53 占有権④ 復習前編

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物権的請求権(物権序論)

占有訴権について


占有回収の訴え


占有保持の訴え、占有保全の訴え

物権的請求権と占有訴権


→前者は所有権や物権化した賃借権に基づいて請求できる権利であり、占有訴権は占有権に基づいて請求できる権利である。
 以下のそれぞれ3つの請求権を対比して理解するとよい。なお、占有訴権は条文に記載があるが、物権的請求権にはない。

【復習 賃借権の物権化】
 賃借権は権利であるが、民法上、不動産の賃借権を登記することにより排他的に対抗力をもつ。これを賃借権の物権化という。
 しかし、賃借人は賃貸人に対して賃借権登記請求権までは有しないため、なかなか現実的には特約でもない限りは不動産賃借権が登記されない。
 ただ、借地借家法により、引き渡された建物については登記なくして対抗力をもつ。
→賃借権に基づいて物権的請求も可能。

①物権的返還請求権と占有回収の訴え
→どちらも物権や占有にもとづいて返還や回収を求める権利。
→前者につき、不法占拠者に対しては、当然登記なくして返還請求できる。
→後者について、回収および返還の請求ができるが、故意や過失、すなわち相手方の請求がなければ損害賠償請求はできない。前者すなわち物権的請求自体は相手方の故意過失や責任能力に関わらず請求可能である。
→後者は占有物が奪われたことが要件であり、騙されてわたした、では要件を満たさない。また、提訴できる期間は占有を奪われてから一年である。

【コラム 費用と損害賠償】
 費用とは、災害などによる損害を回復する経費(非常の必要費)や状態を維持するためにかかる経費(通常の必要費)である。
 損害賠償は賠償する義務を負うものの、故意や過失による行為で生じる。

②物権的妨害排除請求権と占有保持の訴え
→どちらも現にある妨害を排除してもらう請求である。
→占有保持の訴えは妨害終了から一年以内に提訴しなければならないのが原則であるが妨害が工場によるものであれば、工事の開始から一年もしくは工事の終了までと提訴期間は狭まる。
→後者は妨害排除と損害賠償のどちらも請求できるが、やはり損害賠償には相手方の故意や過失を要する。

③物権的妨害予防請求権と占有保全の訴え
→所有物や占有物が妨害されそうな時にその予防や担保の提供を請求する権利。
→後者につき、妨害がされそうな危険があるときが提訴期間となる。
→後者につき、工事の場合は、工事の開始から一年又は工事の終了までと提訴期間は狭まる。

物権的請求権の性質

ex,甲の家土地の大木が乙の土地に倒れ落ちた。
①行為請求権説
→甲は乙に返還請求を、乙は甲に妨害排除請求の権利をもつ。相手に行為を請求するため、費用は相手方もちとなる。判例の立場ではあるがこれでは早い者勝ちになってしまいという批判がある。
 ただし、相手方に非がない場合は認容を請求できるにとどまるという傍論もある。

②認容請求権説
→あくまでも相手方に返還や排除をするために土地などに入らせてもらうという考え方。したがって、費用は自分もちとなる。

③修正行為請求権説
→①のような批判のために修正された行為請求権説。基本は行為請求権説であるが、返還請求するときのみは認容にとどまる(つまり、費用は自己もち。なお、相手方に非がある場合はその限りではない)という説。
 これにあてはめて上記例を考えると、返還を求める甲は認容すなわち費用は甲もちとなり、排除を求める乙は甲に対しては行為請求すなわち費用は甲もちとなる。

物権的請求権に関する判例概要


最高裁判決H6,2,8
→土地の所有者がその所有権に基づき土地明け渡しをする場合は、名義上所有権登記しているに過ぎない者では足りず、現実に建物を占有して所有権を侵害している者にするのが原則である。
→しかし、一度建物を所有し登任意に登記をして、別の者に引き渡したが登記だけは残している者には、占有者同様に明け渡しの請求など所有権に基づく請求ができる。

最高裁S47,12,7
→建物の登記簿上の所有名義人にすぎない者は所有者との合意により名義人となった場合でも、建物の敷地所有者に対して建物収去義務を負わない。

【コラム 所有権の移転時期】
実際は債権編で学ぶが下記確認のこと
①特定物売買における所有権の移転時期
→特約などない限りは売買(申し込みと承諾)にて直ちに買い主に所有権が移転の効力が生じる。
②不特定物売買における所有権の移転時期
→原則として売買物が特定されたときに所有権が移転する。
③他人物売買における所有権の移転時期
→特約がなければ、売主が対象物の所有権を得たなら、意思表示なくして、それと同時に買い主に所有権が移転する。

【コラム 所有権と消滅時効】
所有権は時効により消滅しない。所有権から派生した、所有権移転登記請求権や共有物分割請求権、物権的請求権も時効により消滅しない。


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