学生運動と父の青春「1968」上/小熊英二
学生運動の膨大な記録をもとに、学生運動を経験しなかった著者が考察をした本。上巻だけで1000Pぐらいある。でも親切設計。冒頭で
「目的別・読み飛ばしてもいい章」
がリストになっていて、それを参考に3章は飛ばして読んだ。
いやぁ……
スゴイ。
必死に戦ったんだなぁ、とか。青春だったんだなぁ、とか。
特に普通の人の言葉がよかった。運動の中心人物ではなく、時代の熱のせいで数回だけ参加した一般の学生とか。彼らの日記などをていねいに拾っていて、そこが本当にいい。
これ、中央大学の学生っていうのがすごくいい。
著者によると、彼らは受験戦争を経験した最初の世代で、自分たちの青春を勉強(とそれを強要した大人)に奪われたと感じている。大学に入ったら何か変わるかと思ったら、いい加減な授業、高い学費、その他矛盾が待っていて、自分の意見や個性をちっとも尊重してくれない。
いっぽう、上の世代は、戦争で食べるのが精一杯だったので、飢えに悩まされていないのに何わがまま言っているんだ、と理解できない。
1983年生まれから見ると
大学生がだいぶ青臭いな、と思う。
でも、
こっちが正しいんじゃないかという気もしてくる。
学費は高かったし、何百人相手の授業はあったし。個性とか、そういう系はまた違う話のような気はするけど。
今考えると、この学費と質は立ち上がる案件じゃない!?
30年たっても、なにひとつ解決されていない。
戦っても勝ち目なんかないと思うけど。
けれど、1968年の大学生は連帯した。
理由の一つが、
「私たちのほうが人数が多いのだから、時代は私たちに合わせざるを得ない」
という全能感らしい。
……贅沢だよね。
私の父は浪人したせいで乗り遅れて、憧れていた学生運動に参加できなかった。戦っていないのに敗北感があるという。
学生運動自体も負けだし、昔は「なにそれダサい」と思っていたけど。
あらゆる青春には敬意を払ったほうがいい、
と思い直した。
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