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不監視社会「白の闇」サラ・マーゴ/ノーベル賞チャレンジ

※汚い話がでてきますので、なにか召し上がっている方はご注意ください!

目が見えなくなる。盲人になる。
しかも、一緒にいると感染する。
感染対策のため、政府は使われなくなった精神病院に患者を閉じ込めた。
目の見える介護者はいない。助けはおそらく来ない。いつ解放されるか、目が治るか分からない中、生き始める患者たち。
じつは院内に一人だけ、なぜか感染せず目が見える女性がいた。

パンデミック小説かつディストピア小説。
目の見えない者だけの生活で一番きつい描写が汚物だった。
病院の共同トイレ。見えないとトイレに着くまで時間がかかって、間に合わなかったり。便器が詰まると誰も直せなくて、あふれる。人数が増えると、面倒くさくなって廊下でする人とかが出てくる。見えないのでそれを踏んでしまうときがあり、靴を汚したくない人は裸足で歩く。

無理だなぁ。

明るさも分からないので昼か夜かも分からない。
服や体も汚れてくるけれど、洗濯が難しい。

そんな中、武装した盲人のグループが食料を横取りし、他のグループに金品や女性を要求しはじめる。

誰にも見られない世界は倫理観が欠如してゆき、良識や最低限のマナーもなくなるという小説。監視社会の逆だ。
そういえば、THE監視社会の「1984」ジョージ・オーウェルっていうのもあったな。
「白の闇」はなにもかもがもったりしているイメージ。排泄物関係の描写や盲人のゆっくりしたアクションが小説の読後感になった。だらだら苦しいまま世界が続いてゆくんだ、という絶望感。
いっぽう、「1984」は鋭く追い詰められてゆく恐怖感があった。いつも緊張感から抜け出せなくて、逃げ場がない感じ。
管理とプライバシー、どちらも大事だと思う。

キタナイ系描写がてんこ盛りなので、瓶入り飲料水が飲めるシーンでただひとり見える女性が「一番上等のグラスを使うわ」と嬉しそうに言うシーンがとびきりよかった。
私は日本人だから、清潔って価値観はやっぱり好き。

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