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EU離脱の熱気のなかで『秋』アリ・スミス

作者はイギリス・スコットランド出身の作家で、この作品は2016年のEU離脱が決まった国民投票のすぐ後に書かれたらしい。
一番度肝を抜かれた文章が以下のもの。

あたしはもう、ニュースに疲れた。大したこともない出来事を派手に伝えるニュースに疲れた。本当に恐ろしいことをすごく単純に伝えるニュースにも疲れた。皮肉な言葉にも疲れた。怒りにも疲れた。意地悪な人にも疲れた。自分勝手な人たちにも疲れた。それを止めるために何もしないあたしたちにもうんざり。むしろそれを促しているあたしたちにもうんざり。今ある暴力にも、もうすぐやって来る暴力にも、まだ起きていない暴力にもうんざり。嘘つきにもうんざり。嘘をついて偉くなった人にもうんざり。そんな嘘つきのせいでこんな世の中になったことにもうんざり。彼らが馬鹿だからこんなことになったのか、それともわざとこんな世の中を作ったのか、どっちなんだろうと考えることにもうんざり。嘘をつく政府にもうんざり。もう嘘をつかれてもどうでもよくなっている国民にもうんざり。その恐ろしさを日々突きつけられることにもうんざり。敵意にもうんざり。臆病風を吹かす人にもうんざり。

『秋』アリ・スミス57P

すごい。疲れたとうんざりの畳みかけ。
これに限らず、表現がカッコいい。

時系列はぽんぽん飛ぶし、各人物の夢の中の話もある。筋はひとつしかないけれど、わざと混乱させるような書き方をしていろいろな場面(イメージ)を切り出させる。

過去のエピソードは温かいものが多く、現在のものはどちらかというとギスギスした感じ。
けれど、101歳のおじいちゃんの愛したアーティストを32歳が再発掘という形でつないでいったり。
一律に今がダメというのではなく、よかった時代があって、その続きの今。よかった時代によかったものは何かの形で小さく残っていく。

そして知った。
EU離脱って、こんなに国がまっぷたつになったんだ。
日本でも分断というキーワードは相当言われているけど、ほぼ50/50で拮抗する問題ってすごそうだ。

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