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芸術の秋、「アーツ・アンド・クラフツとデザイン」に行って(生活を彩る美・3)

 生活を彩る美、次は「アーツ・アンド・クラフツとデザイン」展に(東京・府中市美術館)。
 11月23日(水)大雨の中、府中駅からバスで府中市美術館へ。美術館は府中の森公園内にあり、雨でなければ公園を散歩したかった。
 ウィリアム・モリスを導き手として、英国で始まったアーツ・アンド・クラフツ運動。「優れたデザインと質の高いもの作りが生活を豊かにする」(ごあいさつより)理念がよく分かる展覧会だった。今回は英米での運動の広がりを中心にして、壁紙・タペストリー・本・家具・食器・アクセサリーなど約150点を展示。またモリス以外にも多彩なアーティストが出てきて、大変勉強になった。

展覧会ポスター。モリスの「格子垣」

 モリスやジョン・ヘンリー・ダールの植物柄デザイン。自然界からインスピレーションを得て創作する、そんな作品を身近に置く。「自然と調和した生活」という運動の理想が意識される。今は紅葉の時期、モリスが日本の錦秋を見たら、そこから素晴らしいデザインを生み出したんじゃないかと妄想したり。
 アメリカでの活動も紹介。フランク・ロイド・ライトは機械化を積極的に推進し、その点ではモリスの手しごと重視とは対立するが、生活を豊かにするデザインという理念は二人とも一致していたと思う。アプローチは異なっても目的を共有することが重要というのは、色々なことに言えそうだ。
 以下、注目した作家や作品の記録。まずジョン・ヘンリー・ダールの刺繍壁掛け「リスとナイチンゲール」。植物のダイナミックなうねりと鮮やかな色合いが素晴らしい。大きくて見ごたえがあった。

ダールの刺繍壁掛け「リスとナイチンゲール」(図録より)

 本好きとしてはケルムスコット・プレスのコーナーが嬉しい。今年読んだモリス『ユートピア便り』の1892年原著もあった。アメリカでの出版活動も取り上げられていて、それはエルバルト・ハバードがケルムスコット・プレスに触発されて立ち上げたロイクロフト・プレス。出版の歴史的に興味深い。
 人物では、挿絵が展示されていたジェシー・マリオン・キング。細い線の流麗な絵を観ながら、この名前と絵どこかで…と思い、自宅に帰って荒俣宏『絵のある本の歴史』を見たら、やはりこの中に出ていた!繊細なタッチは自分の好きなところ。勉強になるなあ。

ジェシー・マリオン・キングの挿絵(図録より)

 展示場外には「スタンプで作るオリジナルしおり」コーナーがあって、せっかくなのでペタリ。うーん、位置がずれたがご愛敬。小物のお土産もできて楽しい展覧会でした。

本展図録にオリジナルしおりを置いて

(おまけ)
荒俣宏『絵のある本の歴史』(平凡社)は昨年古本屋で入手。折に触れて読んでいる参考書で今回も役立ちました♪

荒俣宏さんの『絵のある本の歴史』。勉強になります



 


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