もう猫だっこできます

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「佐伯祐三」展に行って

 2023年3月展覧会の記録・その4  「佐伯祐三 自画像としての風景」展に行った(東京ステーションギャラリー)。  佐伯祐三と言えばイケメン(笑)。2002年の「文藝春秋 創刊80周年記念」号で、中野翠さんが「風貌のいい男80人」に選んでいたのを思い出す。しかし肝心の絵は画集でちらほら眺めていたくらいで、展覧会でまとまって観たことはなかった。パリで夭折した人生と合わせて、どこかイメージ先行の画家であった。  本展は「厳選した代表作100余点を一堂に展示」(チラシより)、

    • 「江戸絵画の華」展に行って

       2023年3月展覧会の記録・その3  「江戸絵画の華」展に行った(丸の内・出光美術館)。  2019年、出光美術館はプライスコレクションの絵画190点を購入した。プライスコレクションとは、アメリカの名高いコレクター、エツコ&ジョー・プライス夫妻が収集した江戸時代の絵画を中心にしたコレクションのこと。  本展は、このコレクションの中から約90点を展示したもの。2部制(それぞれ約1ヶ月の会期)で作品は総入れ替え。第1部は「若冲と江戸絵画」、第2部は「京都画壇と江戸琳派」。

      • 「没後190年 木米」展に行って

         2023年3月展覧会の記録・その2   「没後190年 木米」展に行った(六本木・サントリー美術館)。  木米(もくべい)は、江戸時代後期の陶工・画家・文人。京都で活躍した。この人のことはこれまでまったく知らず、この展覧会も行けたら行くかな、くらいの気持ちでいた。  決め手になったのは新聞記事(「美の履歴書788」朝日新聞23年3月14日)。木米作・カニ型の香合が紹介されていて、精緻な技巧とユーモア感覚に「木米って面白い人だな」と興味を持ち、展覧会に行く気になった。  

        • 「田村セツコ展」に行って

           23年3月展覧会の記録。  イラストレーター・田村セツコさんの展覧会に行った(東京・弥生美術館)。  自分自身は、子どものころに田村さんの絵で育って思い入れがある…というわけではなく、むしろここまでほぼ存じ上げずに来てしまったのだけど(ごめんなさい💦)、ネットで見かけた本展イラストのハッピーな感じに心惹かれて、そして女性イラストレーターの先駆けであり、1958年のデビュー以来現在も活躍されていて、と田村さんの人なりにも興味を持ち、観に行った。  3月12日(日)、弥生美

        「佐伯祐三」展に行って

          竹久夢二の企画展に行って

           23年2月、展覧会の記録・その4  新聞記事で竹久夢二の企画展を知った。「龍星閣がつないだ夢二の心」(千代田区・日比谷図書文化館)。  龍星閣(りゅうせいかく)は、かつて千代田区にあった出版社。昭和初期、澤田伊四郎により創業された。その澤田は昭和40・50年代に夢二の作品を収集。作品集を出版したことで、没後しばらく世間から忘れられていた夢二が、再び脚光を浴びるきっかけになったという(朝日新聞2023年1月26日東京面より)。  夢二の絵は色々な展覧会で観ているが、今回はあ

          竹久夢二の企画展に行って

          「生誕100年 柚木沙弥郎展」に行って

           23年2月、展覧会の記録・その3  「生誕100年 柚木沙弥郎展」に行った(駒場・日本民藝館)。  染色家・柚木沙弥郎さんが好きで、展覧会も何度か行ったことがある。直近では21ー22年開催の「柚木沙弥郎 life・LIFE」(立川・PLAY! MUSEUM)。絵本原画や人形、広い空間を使った「布の森」など楽しさ満載の展示だった。  今回の展覧会は、1922年生まれの柚木さんの生誕100年記念。日本民藝館は国内屈指の柚木コレクションを所蔵していて、また柚木さんとも縁が深い

          「生誕100年 柚木沙弥郎展」に行って

          「人間国宝展」を観る

           23年2月に行った展覧会の記録・その2    平櫛田中コレクションによる「人間国宝展」を鑑賞した(小平市・平櫛田中彫刻美術館)。  彫刻家・平櫛田中を知ったのは新聞の書評欄。澤田瞳子さんが『平櫛田中回顧談』を取り上げていて(朝日新聞22年11月12日)。そこで澤田さんはこう書かれている。 "平櫛田中(ひらくし・でんちゅう)と聞いて、「あの彫刻家の」とすぐ思い至る方は、残念ながらそう多くはあるまい。"  「自分もそうです」と思わず苦笑したが、書評を読んで「この人面白そう

          「人間国宝展」を観る

          「月に吠えよ、萩原朔太郎展」に行って

           23年2月、展覧会の記録。  「月に吠えよ、萩原朔太郎展」に行った(世田谷文学館)。  中原中也や宮沢賢治の詩は高校生のころから愛読しているが、萩原朔太郎はそれほど親しまずにきた。興味が無かったわけではないが、横目でちらちら気にしながら…という感じで。単に巡り合わせの問題だったのだろう。なのでこれを機会に朔太郎に出会い直そうと思った。  23年2月4日(土)、最終日1日前に間に合った。世田谷文学館に来るのは谷口ジロー展以来。  2022年は朔太郎没後80年。本展は全国

          「月に吠えよ、萩原朔太郎展」に行って

          「祈り・藤原新也」展に行って(1月の展覧会)

           23年1月に行った展覧会の記録。  「祈り・藤原新也」展を鑑賞した(東京・世田谷美術館)。1月29日(日)最終日(毎回…💦)に駆け込んだ。    藤原新也さんを知ったのは予備校生のころ。小論文の講師が配ったお勧め本リストに『新版 東京漂流』があって。その時講師が言った「写真家の書く文章は鋭い」という言葉が印象に残り、大学に入ってすぐにこの本を読んだ。  60年代以降の日本社会の変容を思索し、80年代現代の日本をシャープに捉えた論考は、のほほんと大学生活を始めた自分には、と

          「祈り・藤原新也」展に行って(1月の展覧会)

          「星野道夫 悠久の時を旅する」(1月に行った写真展)

           23年1月に行った写真展の記録。  「星野道夫 悠久の時を旅する」を鑑賞した(東京都写真美術館)。1月22日(日)最終日、到着した時にはもう長蛇の列。やはり星野さんは人気があるんだなあ。  星野道夫は1952年生まれなので、2022年は生誕70年。記念の年の本展は約150点の写真で構成。アラスカの自宅で発見されたフィルム映像は初公開とのこと。  私はこれまで星野さんの熱心なファンではなかったが、そんな私でも、生命の息吹きをダイナミックに、繊細に捉えた写真の数々には、素直

          「星野道夫 悠久の時を旅する」(1月に行った写真展)

          「ヴァロットン 黒と白」展に行って・2

           ヴァロットン展の感想続き。  第2章「パリの観察者」も見ごたえがあった。パリの街とそこに集う人々を、冷静に観察した記録。   喧嘩、騒動、路上の群衆、愛国的高揚、消費生活。スナップ写真のように描かれる少女たちや、警官に連行される男とそこに群がる子供たちの冷酷な現実も。19世紀近代都市社会の断面が鮮やかに切り取られる。ヴァロットンのジャーナリスティックな感性が光る。   先ほどの室内画の静謐さとは対照的に、都市のざわめきと熱気が伝わってくるが、同時にどこか皮肉で醒めた印象も

          「ヴァロットン 黒と白」展に行って・2

          「ヴァロットン 黒と白」展に行って

           「ヴァロットン 黒と白」展に行った。1月21日(土)、気持ち良い冬晴れの中、丸の内・三菱一号館美術館へ。  ヴァロットンをまとめて観るのは初めて。本館は、世界有数のヴァロットン版画コレクションを誇り、約180点の所蔵品を一挙初公開(チラシ解説より)ということで、期待に胸が高鳴る。  事前に朝日新聞「美の履歴書」(後述)とTV「新美の巨人たち」のヴァロットン編(23年1月14日放送)を観て予習もOK。チラシの惹句は「彫り出されたのは、人間のドラマ」。どんなドラマが待っているか

          「ヴァロットン 黒と白」展に行って

          『B舎監とラブレター』を読む

          『韓国文学の源流 短編選1 B舎監とラブレター』(書肆侃侃房、2022年)  1918年から1929年、「韓国(朝鮮)文学の黎明期を彩る」短編9作を収録。意外というと失礼だが、大変楽しめた。現代につながるテーマのもの、時代を描写したもの、SF的設定のもの、それぞれに妙味があった。翻訳の良さも感じた。  最初に表題作を選んで正解。装画の鋭く光る視線のイメージと不思議なタイトル(B舎監とラブレターって何だろう?)に惹かれて読んだが、なるほどこういう話でしたか。ある女子寮の寮長

          『B舎監とラブレター』を読む

          和田誠『銀座界隈ドキドキの日々』を読む

          和田誠『銀座界隈ドキドキの日々』(文春文庫、1997年) 単行本1993年  楽しく眩しい和田誠さんの青春録。  和田さんが銀座のデザイン会社ライト・パブリシティに勤めていたのは1959年から68年まで。年齢では20代前半から30代最初。入社から会社を辞めて独立するまでを、豊富なエピソードで綴る。  和田さんの文章は良いなあといつも思う。イラストと同様に親しみやすい。淡々としているんだけど、品のあるユーモアが随所にあって軽やか。これでエッセイの賞を受けたのも納得(第9回講

          和田誠『銀座界隈ドキドキの日々』を読む

          杉本さなえ「Again Tomorrow」(12月に行った個展)

           12月に行った個展の記録。12月30日(金)、杉本さなえ「Again Tomorrow」を観に行った。場所は高円寺のえほんやるすばんばんするかいしゃ。  杉本さなえさんを知ったのは同じくこちらの本屋で。一昨年に訪ねた際、画集『Close Your Ears』を見つけて、ファンタジックで静謐な画風がすぐ好きになった。以来、休日などにゆっくり眺めては杉本さんの絵を楽しんでいた。  そして今回、新作画集『AGEHA』発売に合わせて展示会が開催されるということで、観に行かなくては

          杉本さなえ「Again Tomorrow」(12月に行った個展)

          町のあかり・12ヵ月の花と猫(12月に行った個展・グループ展)

           遅ればせながら12月に行った個展・グループ展の記録。  12月4日(日)、駒沢のMOUNT Tokyoに「町のあかり #5」と「12ヵ月の花と猫」を観に行った。  「町のあかり #5」はグループ展。油田さや香・今井朋香・Kouchill・タカヤ ユリエ・土田菜摘・野口奈緒子・Maiya・みやざき さくら、計8名がそれぞれの町を描いている。  ツイッターで油田さや香さんの絵を知ったのが訪問のきっかけ。油田さんの西洋中世を思わせる世界に惹かれて観に来たが、他の方々も自分の思いを

          町のあかり・12ヵ月の花と猫(12月に行った個展・グループ展)