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お迎え特殊課の火車1
お迎え特殊課の火車出動(一)
白い髪に、幾房かの黒い部分が混じった長髪。
着物姿の三十歳そこそこの美女が赤い炎に包まれた黒いワゴンを運転している。
美女の名前は火車。死後、閻魔大王の裁判をするまでもなく、地獄逝きが決定している亡者を迎えに行く、読んで字の如く『火の車』に乗った化け猫の妖怪獄卒である。
しかし、火車は獄卒。基本人間に害は与えない。
連れて逝く亡者は重過ぎる罪を犯
お迎え特殊課の火車2
第2話 お迎え特殊課の火車出動(二)
「久々の出動だからねえ。まあ、こうにゃるのも無理はにゃいさねえ」
火車は慌てふためく人間達を尻目に去ろうとしたが――
「ん?」
視界の端に、亡者の飼い猫である白猫の姿を捉えた。
と言うのも、火車は死の気配に聡い。
つまり……白猫は塀から落ちたショックで死んでいたらしい。
その気配に気付き、そちらに、ちらりと目を向けたのだ。
「ありゃあ?
お迎え特殊課の火車3
第3話 後始末。
それから火車は、亡者の家がある町の上空をぐるっと回って、あの世へ還った。
「しかし、お前もにゃんだねえ」
火車は閻魔帳の写しを読みつつ亡者を引っ立てながら言った。
「小さいと言えど、閻魔堂を燃やして、神社まで燃やしたら、そりゃあ、アタシの出番ににゃっちまうねえ……しかも着け火と来たもんだよ。どんにゃ理由があろうと、裁判にゃしで地獄逝きににゃっちまうのはしょうがにゃい
お迎え特殊課の火車4
第4話 天網恢恢、自業自得とはこのことかねえ(一)
白に幾房かの黒い部分が混じった長髪。着物を着た三十歳そこそこの色気のある美女が、赤い炎に包まれた黒いワゴンを操っている。
美女の名は火車。
死後、閻魔大王の裁判をするまでもなく地獄逝きが確定している亡者を、自らが操る名前通りの『火の車』――昔は牛車だったが時代に合わせてワゴンに変化――に乗せて、地獄まで運ぶ仕事をしている。
火
お迎え特殊課の火車5
第5話 天網恢恢、自業自得とはこのことかねえ(二)
「……それから、神社の御奉神は菅原道真公です」
菅原道真公。
現在は学問の神として有名だが、元は日本屈指の怨霊だったお方だ。
火車は思わず火の車を停止させて叫んだ。
「そいつらはどれだけ馬鹿にゃんだい!」
火車の怒鳴り声を聞いて、クロベエは思わず耳を塞ぐ。
「俺に怒鳴らないで下さいよ……」
まさか、菅原道真
お迎え特殊課の火車6
第6話 天網恢恢、自業自得とはこのことかねえ(三)
出棺の時間が近いらしい。
クロベエは出入り口付近まで悠々と歩いて行く。
棺を乗せる車と出入り口の距離は近い。
出棺が始まり、遺族や親しい人々が斎場から棺を運び出して来る。
その中には葬祭会館の職員の姿もあるが、職員達は火車の伝説を知っているだろうか?
『亡骸を火車に取られるは一族の恥』
火車にはそんな伝説がある。
お迎え特殊課の火車7
第7話 天網恢恢、自業自得とはこのことかねえ(四)
火の車の荷台には四体の亡骸。
と四人の亡者が特殊なロープでぐるぐる巻きにされて転がされ、同じく特殊なガムテープで口を塞がれ踠いていた。
が、そんな些末な事柄なぞ気にもかけず、火車は本日最後のお迎えに行く。
目的の場所は病院だ。
件の亡者は、まだ亡者ではなく生きている。かろうじて、ではあるが。
正月三ヶ日が明けた一月四日
お迎え特殊課の火車8
第8話 天網恢恢、自業自得とはこのことかねえ(五)
病室の、ベッドの上には瀕死の罪人。
火車とクロベエ直属の上司葛乃葉と睨み合う。猫耳美少女フィギュアの九十九神に成った白猫。
それは昨年の梅雨頃、火車がやらかした失敗だった。
亡者のお迎えの最中、まだ寿命が大いに残っている白猫をうっかり驚かせ、ショック死させてしまったのだ。
おまけに、その白猫が、とある施設に置かれたフィギ
お迎え特殊課の火車9
第9話 天網恢恢、自業自得とはこのことかねえ(六)
「おや、そんにゃことが出来るのかい。さすがは国中に名前が知れ渡っている有名陰陽師にゃ神様だねえ」
葛乃葉の隣に現れた安倍晴明公に気安く声を掛ける火車。
「ええ。火車さんもご健勝ですね。――で、私は火車さんにお願いがあるのですよ」
晴明は、柔和な笑顔で火車を見ながら言った。
「にゃんだい? 神であるアンタがアタシにお願いだにゃんて、