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【依頼分、分析・感想】4-19 月・吸血鬼・好き ーvampiresses in the moon

 皆さん、こんにちは。
 書き出し祭り作品、分析・感想のお時間です。

 X(ツイッター)と「小説家になろう」連動の、非公式イベント『書き出し祭り』。
 今回は、現在開催中の19回の中から、作者さんご本人に依頼をしてもらい、無償分析・感想を書かせていただいています。

・小説を書く勉強がしたい方
・小説の分析、感想ってどうやるのか分からないor知りたい方
・自分も読んだので、他の人の分析・感想も読みたい方
・小説のスキルアップがしたい方
・作者様ご本人
・人の振り見て我が振り直せな人

などなど……

 に、オススメの記事です。

 少しでも様々な方のお役に立てればな、と思って書いております。
 よろしければチョロッと覗いていってくださいね。


1.そもそも『書き出し祭り』って?

 書き出し祭りは、X(ツイッター)と小説家になろう連動の、非公式イベントです。
 簡単に言うと、プロアマごった煮な参加者100名が、「よーいドン!」で小説の冒頭を匿名で投稿(投稿は運営さんがやってくれます)。
 感想をもらったり、イラストをもらったり、投票してもらったり、交流をしたりして楽しむ『小説書きと小説読みのお祭り』です。

【注意】

 本企画は、批評会ではありません。
 参加者も、完全なエンジョイ勢から公募ガチ勢、書籍化作家、Web連載に弾みをつけるため……と、色んな方が参加しています。
 色んなスタンス、環境、年齢、好きなものがある中で、自分がいかに楽しむか(活用するか)の場ですので、それぞれに違う人間だという事を理解して、他人は他人、自分は自分の精神を持ちつつも、どの作者さんにもリスペクトを忘れず、お互いに言葉(書き方)の配慮をしましょう

 公式アカウントにて、詳細のルールや作者募集のアナウンスがあります。
 ※ルールは、回を追うごとに進化したりするので、毎回確認しに行った方がよいですよー。

【第19回のルールはこちら】

https://twitter.com/kakidashi_fes/status/1659476508778573825

【本文分析・感想をご希望の方は、こちらから】

https://note.com/rich_curlew460/n/n62c8f0bf0b6b

2.今回読ませていただいた作品

 今回読ませていただいたのは、第四会場『4-19 月・吸血鬼・好き ーvampiresses in the moon』です。

★作品リンク★ 

第四会場『4-19 月・吸血鬼・好き ーvampiresses in the moon』

https://ncode.syosetu.com/n0146ik/20/

★依頼内容★

3.本文分析

 ※分析では、本文から読み取れた(予想できる)内容にのみ言及します。

★作者さんがこれを見る時の観点(推奨)★
 自分が想定している内容・情報が読者にきちんと伝わっているか

<0>作品概要

【ジャンル】SF?百合
【視点】三人称一元視点(視点は、主人公・カオル)
【文体】商業ライト文芸相当。

<1>キャラクター分析

名前:
 青崎カオル(女・吸血鬼)
性格:
 ●気遣い屋…ロウソクを付ける父親の緊張を分かっていながら場を和ませる声掛けをする、ルリの気持ちを尊重したいと思っているところから。
物語上の役割:
 主人公。
その他:
 月に住んでいる。生粋の月生まれ・月育ち。
 両親の関係性が理想。
 眷族が同性である事も一つのハードルとして感じている。
 緊張すると、無理やりにでも笑顔を作ろうとするタイプ(母親似)。 

名前:
 ルリ(女・人間)
性格:
 ●明るい…セリフの元気の良さから。
物語上の役割:
 ヒロイン。
その他:
 恋愛的にどうかはさておき、主人公の事は好き。

名前:
 定春(男・吸血鬼・主人公の父)
性格:
 ●一途…他の人から吸血しない事から。
物語上の役割:
 親であり、吸血鬼としてのアドバイス役?
その他:
 移住二世。
 妻・理香子には、まるで恋人のように接しており、とても大事にしている。
 子供の気持ちを尊重したい。

名前:
 理香子(女・人間・主人公の母)
性格:
 ●優しい…不安に思いながらも、それを隠してニコニコとする努力をしている、元気づける・「ダメでも大丈夫」と予防線を張っている事から。
物語上の役割:
 親であり、人間としてのアドバイス役?
その他:
 移住二世。
 子供の気持ちを尊重したい。

名前:
 祖母(女・人間・主人公の祖母)
性格:
 不明。
物語上の役割:
 祖母であり、人間としてのアドバイス役?
その他:
 移住一世。
 子供の気持ちを尊重したい。

<2>構成分析

【役割】
①設定説明
②キャラクター説明
③テーマの提示
④きっかけ(イベント)
⑤悩みの時(④に立ち向かう理由)
⑥ターニングポイント

◎オープニングイメージ
 誕生日。ケーキを囲む家族たち【①②】⇒世界観説明【①】⇒主人公に迫られている選択【③】⇒父の時はどうだったか【①②】⇒パートナー候補者の話【①②】
◎セットアップ~
 自室に戻り、QMNでヒロインと合流【①②】⇒ヒロインを好きな気持ち【②⑤】⇒ヒロインに気持ちを伝えられたら【⑥】

<3>ストーリー分析

◎第一話の要約あらすじ◎
 15歳の誕生日を迎えた月在住の主人公は、今日からの一年間の間に人間でいるか吸血鬼になるかの選択を迫られる状況に置かれていた。
 吸血鬼の血を持つ者は、15歳の間に人間の血を吸い眷族を作る事で吸血鬼になる事ができる。
 月でも吸血鬼の存在は厳秘の中、密かに吸血鬼の事を伝えられ仲のいい両親を見て育った主人公は「今心に決めている相手と両親のような関係性を築けるのなら、自分も吸血し、吸血鬼になりたい」と思っており、祖父母両親は「自分の思うようにすればいい」と彼女を応援。
 彼女は彼らに暇を告げ、QMN(量子精神野ネットワーク)を使って心に決めた人に会いに行き、ヒロインと会って「彼女が好きだ」と再認識。
 女の子同士である事に不安を抱きつつも、「QMNを使っても尚まだ彼女に隠しているその気持ちをいつか彼女に知ってもらう事ができたら」という願望を抱きながら、一年のスタートを切った。

◎ストーリーの大枠(第一話時点)◎
 吸血鬼という特別な存在の主人公が、等身大で悩むSF恋愛(百合)物語。

【設定提示内容(要約)】
・月
・AI、バーチャル系の世界観設定あり。
・恋愛(百合)

【テンプレ活用】
・同性間恋愛の葛藤

4.本文感想

 ※感想では、本文を読んでどう感じたかに言及します。

★作者さんがこれを見る時の観点(推奨)★
 物語を読んでどう思ったか、どうしたらより良くなるか。

<1>所感(気軽な褒め感想)

 月が舞台、QMN・AIなどの未来・SFの要素、独自の世界観(解釈)がされている吸血鬼など。世界設定で他との差別化を図れそうな作品。
 月やSF要素というとどうしても興味のない人には分かりにくい・難しい設定に思えるかもしれないけど、この作者さんはこの辺に共感性を作るのがうまい印象です。

 たとえば、昔地球に住んでいた事がある祖父母の話をどこかフィクションめいた感じにキャラクターに解釈させているのは、令和に生きている若者が大正・昭和時代の話をする祖父母に感じるのと似ていると思いますし、QMNは、ヘッドセットでバーチャルの世界に潜るという既存のバーチャルMMOと同じ方法で実現させ(=読者が想像しやすい形に落とし込み)ながらも、更に『AIによって本心を読み取り相手に伝える機能がある』という新要素をうまく加えています。

 新しい・知らない世界観なのに、読者がとても理解・共感できる世界観を作るのって、とても難しいところでありそこがSF系作品を作るにあたっての一つの課題だと思うのですが、それがどうしようもなくうまい! というのが、まず私が思った事でした。

 個人的には、「QMNでは嘘をつけない(本心を読み取る)」「感情を感覚的に相手に伝えるという機能がある」とする一方で、「隠したいと思えば隠せる(隠したいという本心を尊重して動作する)」というのも面白い設定だなと思いました。
 これがある事によって、相手も何か気持ちを隠しているかもしれないし、そうじゃないかもしれない。はたまたダイレクトに伝わった感情で傷付く事があるかもしれない。という、一筋縄ではいかないストーリー展開と一つの緊張感を生み出す事ができそうです。
 すごい。私が苦手としているのが正にこの世界観作りなので、純粋に尊敬です。

<2>惜しいポイント(ちょっと深堀りアドバイス感想)

 世界観設定にとても手が込んでいて、そこから独自のストーリー展開が期待できそうだなと思った反面、キャラクターメイクにももっと力を入れればもっと良くなりそう! とも思いました。

 たとえば今回キャラクター分析をする上で、正直言って現在登場している子たちがどんなキャラクターなのか、書き出すのに少し苦心しました。
 一見すると「世界観説明に文字数を使ったから」というのが原因に思えるかもしれませんが、私はそうではなく『今出せているキャラクターの色が薄い事』が理由なのではないかなと思います。

 具体的には、それぞれのキャラクターの性格に違いを付ける(吸血鬼になるかどうかに関しても、それぞれに意見が少し違っている)とか。
 現在はみんなが主人公の気持ちを尊重して「好きにすればいいよ」と言っている・全員が主人公の言葉・決定待ちで受け身の印象があるので、母親と出逢えて幸せな父親には、本人に強制はしなくても「眷族はいいぞ」派にする。
(現状でも父親は「お父さんは理香子さんと出会うことができたからなあ。理香子さんと出会うために生まれてきたんだって今でも思ってるよ」という吸血鬼になった事に関して肯定的な言動をしていますが、主人公に聞かれたから答えているという感じなので、たとえばロウソクを消した主人公に「お前もやっと眷族を持てる年になったな」と嬉しそうに言って、母親に少し窘められて、言い訳のように「お父さんは理香子さんと出会うことが~」と続け、良かれと思って言った事を強調&強制するつもりはない事を言わせるなど、もう少し父親を『つい自分が楽しいあまりにオススメしてしまういい人』寄りにして、父を普段尻に敷いているらしい母親には『父を窘めはするけど自分も幸せだし娘にも幸せになってほしいから、娘の気持ちを尊重する人』寄りにすれば、同じく娘に寄り添うキャラクターでもメリハリがつきそうだなと思いました)

5.さいごに。

 本分析・感想に応募いただき、ありがとうございました。
 楽しく読ませていただきました。
 個人的には、もちろん主人公が気にしているように、本作は百合であるが故の戸惑いや苦悩が予想されますが、月でも厳秘な吸血鬼の存在を主人公が口にすることで、彼女やその周りから秘密がバレる事に恐れ躊躇する展開もアリかなぁなんて思っています。
 実際にそんなシーンがあるかは未知数ですが、どちらにしても続きを楽しみにしています。

 少しでも、作者さんの執筆のヒントになれば何よりです。

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