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「私も○○みたいな作品が書きたい!」を、パクらず実現する方法 ~分析のススメ~
「この作品、好きだなぁ。私もこんな作品が書きたい! でもうまく書けない」
そう思った事はありませんか?
「はじめまして」の方もそうじゃない方も、こんにちは。
私、2023年3月に角川ビーンズ文庫より小説家デビューを果たしております、野菜ばたけと申します。
✨㊗2023年10月19日に……
HJノベルスさんから、自身二作目となる商業作品
『祝・聖女になれませんでした。』の第一巻が、発売します!㊗✨
というわけで、今回は『可能な限り一般的なものから一歩踏み込んだ創作論』の第五弾。
小説書きなら誰しも一度は夢見るだろう「私もこんな作品を書きたい!」をうまく実現する方法について書いてみようと思います。
【こんな方にオススメの記事です】
・小説家を始めとする、物語作り全般を仕事にしたいと思っている方
・今よりもっと面白い物語が書きたい方
・小説や漫画でもっとたくさんの人に読んでもらいたい、ランキング上位を狙いたいという野望をお持ちの方
・執筆活動に行き詰まっている方
これから書く事をその通りにやって、100%成功するという保証はありません。
しかし「そういうやり方もあるんだ」と知っておくだけでも、少なからず貴方の執筆の糧になるのではないかと思います。
よろしければ、気になるところだけでも読んでいってくださいね。
これまでの『創作論シリーズ』はこちら。
1.「こんな作品を書いてみたい」を見つけたら、いや、見つけられていなくても
世の中には既にたくさんの作品たちが存在します。
読書をしていて、アニメを見ていて、漫画を読んだりして、「この作品いいな」「面白い」「最近人気だよね」という作品に出逢う事も多いでしょう。
中には「こんな作品書いてみたい」「自分もヒット作品を生み出したい」と思っている人もいるんじゃないでしょうか。
私はそうです。
よく他の方の綴る物語に触れて「いいなぁ」とか「悔しいけど面白い」と思う事があります。
私はこれでも小説書きですから、好きと同じくらい良作には嫉妬もします。
「私もこの作品みたいに、たくさんの人たちに『面白い』と言ってもらえるような作品を作りたい」と思う事もあれば、「私にも、もしかしたらこんな作品を書けたりするんじゃないだろうか」という、幸せな夢を見る事もあります。
しかし私は知っているのです。
そういう夢は、思っているだけでは実現しない。
中には一読者として一度その作品を楽しんだくらいで、その作品と同じようにたくさんの人に「面白い」と言ってもらえる、パクらずに既存作を越えたような作品を作れるほど、私は器用でも才能に溢れている訳でもない! と。
物書きの天才たちが蔓延る小説の世界で、凡人の私はどんな努力ができるのか。
憧れの作品・打倒の作品に、どう対抗すればいいのか。
考えました。
そして私が出した一つの答えが、該当作を分析して参考にするです。
2.何故分析が、既存作をパクらずにグレードアップするために役に立つのか
創作界隈や作品を消費するお客さんの間で『既存作のパクリ』が取りざたされる事は、よくありますよね。
好きな作品があっても「好きすぎてパクリになっちゃいそう……」「書いてみたけど、パクリっぽくなっちゃったな」と気にする方も、多いのではないかなと思います。
でもそれって、何をどう真似すれば自分が満足できる、世の中に届く作品になるか、分からなくなっているからこそ感じる不安だと私は思うのです。
じゃあどうすればその不安を感じずに済むのか。
その答えが、好きな作品の中にある自分の好きや世の中のニーズを、きちんと整理する事なのではないかな、と考えています。
分析は、その作品の何が受けているのか、何が自分に刺さっているのか、物語を分解する作業です。
分解した後に、自分の作家性や別の設定・要素を加えて組み上げ直す。
そうする事で、ただ単に好きなものを真似するだけじゃない作品を作れるのではないでしょうか。
3.作品分析は、実はそれほど難しくない
分析と聞くと、誰もが大仰なものを想像するのではないでしょうか。
たしかにとことん突き詰めれば、一作品にどこまでも掘り下げる事ができるでしょう。
しかし時間は有限です。
物書きとしては、作品を読む・分析するだけではなく、書く作業もしなければなりません。
時間なんて、幾らあっても足りないのです。
だから私は、分析を簡易版、コスパ版、完全版の三段階に分けています。
作品の好き具合、参考にする比率、いつそれをやるかなどによって、三つを使い分けているのです。
という事で、その三つを今回は紹介してみようと思います。
分析① 自分がその作品の何を楽しんでいるか、何に嫉妬しているのか・羨ましく思っているのかを分析する(簡易分析)
小説の分析というと、小説自体を分析する必要があると考えがちですが、一番楽に分析できるのは、案外その小説を読んでいる時の自分の気持ちだったりします。
自分がその作品の、何に惹かれているか、もしくは嫉妬しているのか。
「作品自体が人気だから」という周りの評価ではなく、まずは自分がどう思っているかをここでは考えてみましょう。
因みに私がザッと過去に好きな作品のどこを好きだったか、ちょっと記憶を辿ってみると……
●キャラクターの
・属性
・バックボーン(過去のドラマ)
・性格(表と裏でギャップがあったりとかも含む)
・キャラクター間の関係性
●世界観(荒廃した世界・近未来、その世界特有のギミック、作品世界の雰囲気など)
●作者独特の語彙の扱い方
●作品の導入のスムーズさ、引き込まれるような冒頭
どうですか?
こうして書きだしてみると、好きのカテゴリーも結構多いと思いませんか?
もちろんこの他にも、もっと好きのカテゴリーは色々とあると思いますけどね。
私は一度読んで「いいな」「面白い」と思える作品を見つけた時、必ず自分に「この作品の何が好きなのか」を問うようにしています。
つまりその作品を読んでいる時の『自分の心』の掘り下げです。
せっかく抱いた「面白い」の理由を、漠然としたままにしない。
これだって立派な分析です。
この方法なら、小説の本文を深々と読み分析するよりも、随分と少ない労力で分析を行う事ができますよね。
だって自分の心に問えばいいわけですから。
それに、もしすぐに答えが見つからなくても、このやり方なら何か作業の片手間に「私、何でこの作品が好きなんだろう」と自問自答し続ける事ができるのです。
つまり作業の時短も可能!
そうやって見つけた「面白い」や「羨ましい」は、スマホのメモ機能に軽く書き留めておきます。
やる事はそれだけ。
あとは、あとで小説(プロットなど)を書く前に、それを読み返して思い出し、「あぁ、今度の作品にはこの要素入れたいな」などと考えて、作品作りのパズルのピースにすればいいのです。
どうですか?
これならちょっと、自分にもできそうだと思いませんか?
もしかしたら、中には「人気作っていうから読んでみたけど、自分にはあまり面白さがよく分からなかった。でも人気なんだから、何か理由があるんだろう」と思い分析を試み続けるも、永遠に答えが出ずに困っている人もいるかもしれません。
その場合は、他の人の感想や口コミを見ることで情報収集をしてみましょう。
要は、読者がどんなところに魅力を感じるかが分かればいいのです。
そう考えれば、少しは『分析』のハードルも下がってきたのではないでしょうか。
とはいえ私の場合は、
・他人の感想を収集する時間よりも、自問自答した方が楽。
・あとで自分が10万字の物語を書く前提で考えているので、まずは自分が膨らませやすい=自分が好きなものを探した方が効率がいい。
という理由で、私はやはり、まずは自問自答から始める事にしています。
分析② 文字数を決めて、作品の冒頭だけ深く読んでみる(コスパ分析)
たとえば紙の本一冊分(10~12万字分)を分析するとなると、かなりの労力と時間が必要になりそうですよね。
私だったら、間違いなく作業量の多さに何だかげんなりします。
一体どれだけの時間を使えば実のある分析ができるのか、途方もない気持ちになります。
その結果、結局「読む時間があるなら書いた方がいい」という思考に行きついて、インプットをせずアウトプットばかりを重ね、面白い作品を作るための下地作りができないまま、なかなか上がらない自身の作品のクオリティーにイライラし、ヤキモキし、不安になるのです。
そこで、冒頭だけを深く読んで分析するという戦法を取り入れる事にしました。
これが、コスパ分析!(命名・私、野菜ばたけ。笑)
文字数を決めてそこまで読み、分析する。
それを繰り返す事で、より多くの作品の分析をすることが可能にもなるでしょう。
冒頭だけって、分析して意味あるの? と疑問に思う人もいると思いますが、安心してください。
実は、うまい商業作品やWebの人気作の冒頭には、読者を逃がさないための工夫として、その物語の楽しみ方や主要キャラクターの良さ・特性、世界観などの情報が、ほとんど集約されています。
詳しく文字数指定をすれば、大体冒頭8,000字~12,000字くらいの間には冒頭エピソードが一つ終わります。
さらにその内最初の3,000~5,000字(Web小説でいうところの冒頭三話)には、最初のエピソードの問題提起(障害)が提示されている事が大半です。
だから、もちろん一冊丸々分析する事でしか得られないノウハウもありますが、冒頭だけやるというのは、ある意味理に適っているのです。
具体的に何をどうすればいいかというと……
<0>作品概要
【ジャンル】
【視点(人称)】
【文体】
<1>ストーリー分析
◎第一話の要約あらすじ◎
(これは省略しても可。私は公募に書くあらすじの練習になると思って、毎回書いています)
◎ストーリーの大枠(第一話時点を一文で要約)◎
【設定提示内容(要約)】
【テンプレ活用】
<2>構成分析
◎オープニングイメージ
◎セットアップ~
<3>キャラクター分析
名前:
性格:
物語上の役割:
その他:
という感じです。
※最初はもっと緩いところから始めてみてもいいと思います。
これをした上でいいところを書き出していくと、作品の『いいところ探し』が、かなり効率よく進みます。
見つけたいいところは、
●作者の書き方(独特な言い回しの面白さ)
●テンプレながら、一度読んだだけで情景が頭に浮かんだ
などのように、しっかりメモ書きとして残しておきましょう。
実際にどんな形になるのか気になる人は、このページを覗いてみてください。
依頼いただいた作品の分析をしているページです。
本作、『第19回書き出し祭り』というイベントで100作品中3位になった作品ですので、分析と感想を見るだけでも、参考になるところはあるかもしれませんね。
因みに『<2>構成分析』について、もっと細かく分析したい気概の持ち主は、それぞれのパートに割いているおおよその文字数をカッコ書きなどでで書いておくと、自分の作品に反映する時にどの配分で書くといいのか分かってかなり参考になると思います。
(実は、何にどれだけの文字数を割くかを意識するだけで、同じ題材・ログラインで書いていても読者の数にかなりの変化が出たりします。読者は冗長も(特にコンテストの受賞・書籍化を狙う作品を書く場合は)薄っぺらさも嫌われるので、これは意外と大事な項目です)
分析③ 本一冊・アニメやドラマ1クールなどの分析をしてみる(完全分析)
うまい作品の大きな一区切りまでの間をすべて分析すると、作品やキャラクターの見せ方、飽きさせないストーリーの秘訣などが分かってきます。
分析②と同じ内容を、もっと大きな網を張って分析していくような感じです。
冒頭だけでは見えない、作品が進むにつれてされていく……
・世界観の提示
・情報の出し方
・盛り上がる箇所の文章の書き方
・キャラクターの感情の起伏(感情曲線)や、成長・変化
などを、追っていくといいと思います。
これらの内容は、『可能な限り一般的なものから一歩踏み込んだ創作論』の第四弾で書いた構成のテンプレートを埋めていく形でやるとスムーズにできると思います。
もし、テンプレートをすべて埋めてみる事に難しさを感じる場合は、『物語の逆算』がオススメです。
たとえば、
①読後感がいい作品は、クライマックスでうまく山場を作り、エピローグでうまく閉じている作品の場合が多い。
⇒ クライマックスの中の一番の山、エピローグの閉じ方を確認・メモ
②うまいクライマックスを作るためには、その前に前振り(困難や伏線の提示)がうまい場合が多い。
⇒ 最大の困難やクライマックスの伏線がある箇所を確認・メモ
⇒ どこで伏線の関与を匂わせているのかを確認・メモ
⇒ 最大の困難とその前の落差について確認し、感じた事をメモ
③最大の困難が光るのは、それまでにキャラクターたちが築き上げてきた関係値があるからこそ。
⇒ 小さな困難の数々と解決方法・キャラクターたちの感情変化をメモ
④小さな困難の発生→解決シーンで読者がダレないためには、必要最低限の世界観・キャラクター説明とワンエピソード内の起伏、冒頭でその作品を読むための最低限の必要情報がしっかりと提示できている事が必須。
⇒ 小さな困難シーンでの世界観・キャラ説明を簡単に箇条書きメモ
⇒ ワンエピソード内でのトラブルと解決、それに伴うキャラクターの感情を確認・メモ
⇒ 冒頭で提示されている情報、主人公の目的を確認、メモ
⑤面白い作品は、総じて冒頭で提示した目的の達成・答えの提示をクライマックスでしている。
⇒ クライマックスでの目的達成の有無を確認、メモ
という具合に、良かったところから「どうやればそのいいシーンが作れるか」を割り出すように作業を進めていくと、すべて終わった頃には自ずと構成テンプレートがほぼ全部埋まっていると思いますよ。
分析目的で読む場合は、読みながらメモ、付箋を挟むなどしておくと、あとで必要最低限の読み直しをするだけで済むため時間の短縮になります。
ただし意外にも、作品の面白さはまずあまり分析を意識せずに一度最後まで読み終える方が分かりやすかったりもします。
ですから個人的にオススメしたいのは、「読み終わってから構成テンプレートの覚えている所をまず埋めて、覚えていない箇所については後でピンポイントで見つける方法」です。
4.分析して参考にした結果、自作が『既存作のパクリ』になってしまわないための対処法
世の中には既にたくさんの作品が存在します。
まったく新しい発想や展開を用意する事は、事実として不可能です。
つまり、どの作品も過去の作品の何かに影響を受け作られている、もしくは過去のいずれかの作品と設定が被っているのです。
にも拘らず、ある作品は「パクリだ」と言われ、ある作品は言われない。
パクリではなくオマージュだと言って受け入れられている作品には、既存作へのリスペクトが作品の中に見える……などという線引きをする人もいると思いますが、ここでは一旦作者の気持ちの問題は横に置いておいて、パクリだと思われないようなテクニックについて書いていこうと思います。
せっかく頑張って書いた作品を「既存作のパクリだ」「劣化版パクリだ」などとは絶対に言われたくない。
言われないようにしたい。
そのためのちょっとした工夫を、編集さんとお話していて「なるほど」と思った事も含めて……よろしければ、どうぞ。
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