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面白い物語の作り方(ストーリーの組み立て方)のコツって?

 「はじめまして」の方もそうじゃない方も、こんにちは。
 私、2023年3月に角川ビーンズ文庫より小説家デビューを果たしております、野菜ばたけと申します。

 今回は『可能な限り一般的なものから一歩踏み込んだ創作論』の第四弾。
 小説書きなら誰しも一度は頭を悩ませるであろう「面白い小説の仕組み(ストーリーの組み立て方)」について、書いてみようと思います。

・小説家を始めとする、物語作り全般を仕事にしたいと思っている方
・今よりもっと面白い物語が書きたい方
・小説や漫画でもっとたくさんの人に読んでもらいたい、ランキング上位を狙いたいという野望をお持ちの方
・執筆活動に行き詰まっている方

など

 にオススメです。

 これが答え……という事ではありませんが、実体験や小説家さん達と創作談義をしていてよく出てくる話などを含んでいますので、「こんな風に考えて執筆している人もいるのか。へー」という感じでは、参考にできると思います。


 これまでの『創作論シリーズ』はこちら。



1.そもそも小説の仕組み(ストーリーの組み立て方)って何?

 物語を描くにあたり、おそらく誰もが一度は「どういう風に書いたら、より作品が盛り上がるだろう」「面白く見てもらえるだろう」と考えた事があるはずです。
 もし今の言葉がいまいちピンとこない方であっても「どこで伏線を入れて回収するか」は、考えた事があるのではないでしょうか。

 そのように、面白い物語を作るためには、うまくストーリーを組み立てる必要があります。
 作品の面白さを十二分に伝えるために、ストーリー展開を考え組み立てる。
 その作業を、大抵作者は『構成』と呼んでいます。

①凡人であればあるほど、構成は勉強すべき

 この構成、意識して書いたり考えたりはしていなかったとしても、面白い作品は結果的にうまく練られているものですが、よほど直感的に面白い作品を作る才能でもなければ、意識的に作り込まないとうまくいかない要素でもあります。

 勉強や研究をすればするほど、身につけることができるのが構成なので、私のような凡人でも、いや、私のような凡人だからこそ、力を入れるべき所だと思います。

2.物語構成のメジャーな二つ、起承転結と三幕構成

 物語構成の型として有名なのは、おそらく小中学校の授業で習う『起承転結』と、最近物語を作りを語る上で創作界隈でよく名前が出てくる『三幕構成』なのではないでしょうか。

 この二つ、名前も違うし書いてる事も違うから別物……と思えるかもしれませんが、突き詰めれば同じものに注力したものだという事が分かります。

 という事で、両者についてまずは軽く見てみましょう。

①起承転結

 起承転結はその名の通り、物語を「起」「承」「転」「結」の四つに分けて考える構成の形です。
 それぞれに物語上の役割を担っているのですが……ちょっと分かりやすくするために、一旦役割の一例を絵文字にして見ていきましょう。

 ●起…ヮクd(*^0^*)dヮク
 ●承…(*^-^)~♪
 ●転…Σ(゚д゚lll)ガーン
 ●結…(*ノ∀`*)ヨカッタネ

 この表現方法、意外と直感的で分かりやすいんじゃないかなと思うんですが、どうでしょう?笑

 早い話が、導入でワクワクさせて、順調に物事が進んでいるところに、突然の試練で主人公をどん底に突き落とす……けど、最後にはハッピーエンド。
 という感じで、一つの作品の中に上手く感情の波を作ってやる事が、この起承転結という訳です。

 面白い作品とはこのように、読者をまんまと作品に翻弄させる(気がつけば勝手に喜怒哀楽させられている)作品の事だと私は思っています。

 翻弄させるためには、特に「承」と「転」の落差が大切です。
 たとえば二人で育んできた恋の前に大きな障害が立ちはだかると、獲得した恋は一層燃えあがるように。
 強敵を前にした試合ほど、勝利した時の達成感は一入ひとしおなように。
 両者の落差は、そのまま「結」での盛り上がりに直結します。

 起承転結は、「結」で得られるカタルシス(快感)を最大限にするための構成上の工夫だという事です。

②三幕構成

 三幕構成は、現代の研究者たちが、古代の神話から現代の映画まで、さまざまな物語を分析した結果として発見した「物語の基本原則」らしいです。

 上記説明した起承転結では一つだけだった物語上の波を、一作品の中で幾つか作る事により、より多くのカタルシスを得ると同時に、早く先を見進めたくなる、飽きさせないようにするためのストーリー構成だと思ってください。


 さてそれでは、具体的な話をしていきましょう。

 三幕構成はその名の通り、三幕に分かれています。
 今回はその中でもより分かりやすく中身を15の役割に細分化したBS2(ブレイク・スナイダー・ビート・シート)を見てみましょう。

【三幕構成(BS2)】

▼第一幕(起)
物語全体の雰囲気づくり、状況説明、物語が動き出すきっかけなどを示し、『主人公が行動を開始するまで』を描く
1:オープニングイメージ
物語全体の雰囲気を提示しながら、物語を経験する前の主人公の姿を描く。
2:セットアップ
主人公はどういう人か、その周りの状況、置かれている現状、抱えている問題、敵対者の存在などを描く。
3:テーマの提示
物語で最終的に強化される価値観、または覆される価値観を示唆する。
4:きっかけ
主人公に日常とは違う何かが起こる
5:悩みの時
主人公が行動を開始する前の意思確認、そうしたい理由、しなければならない理由、などを示す。
6:第一ターニングポイント
主人公は、行動を開始する。

▼第二幕前半(承)
主人公が行動していく様子を描きつつ、その中で起こる出来事や人間関係の変化、主人公の心の変化などを描いていく。その結果、『主人公が絶好調、もしくは絶不調を迎えるまで』を描く。
7:お楽しみ
主人公がログラインで書いたようなメインストーリーに沿って行動していく中で起こる、いろいろな出来事を描く。これらの出来事を軸に登場人物達のサブプロットが絡み合っていく。
8:サブプロット
メインストーリーと同時進行する、各登場人物達の話を混ぜ込む。例えば、ライバル役、師匠役心の変化や、恋愛模様、心の成長の様子、敵対者の葛藤などなど、メインストーリーの解決と同時に解決されていくサブの話を作っていく。
9:ミッドポイント
行動の結果、主人公はとても良い状態、絶好調な状態を迎える。もしくは、非常に悪い状態、絶不調に追い込まれる。

▼第二幕後半(転)
『主人公の状況がどんどん悪くなり、追い込まれ、あきらめるかどうかの最終的な意志確認を経て、状況をまた覆すための決意をするまで』を描く。
10:迫り来る悪い奴ら
敵対者の勢力が増していく様子を描く。敵対者が逆転していく。
11:すべてを失って
絶好調だった主人公が、物語上最悪な状況まで追い込まれる。ミッドポイントで絶不調だった場合は、ここで見せかけの成功を手に入れたりする。
12:心の暗闇
最悪の状況に立たされた主人公が、それでも目的を果たすべきかどうか悩む。見せかけの成功を手に入れた場合でも、それで本当にいいのかを悩む。つまり、ラストへ向かうための強い動機を再確認する。
13:第二ターニングポイント
主人公が意志を固め、問題を解決するための唯一の方法、一か八かの賭けや、決死の挑戦、巧妙な大仕掛けなどを思いつき、行動を開始する。

▼第三幕(結)
主人公の最後の行動、周囲の登場人物のサブプロットの結末、そしてメインストーリーの結末を描く。
14:フィナーレ
主人公の最後の行動の様子を描く。最後の戦い、絶対に負けられない試合、一世一代の告白など。サブプロットで描かれた話もここで解決に向かっていく。
15:ファイナルイメージ
主人公の行動の帰結を描く。オープニングイメージからどんな変化があったかを考える。主人公の勝ち負け、成功失敗に関わらず、それが主人公や周りの人、世界にどんな影響があったかを描く。

 私も一番最初のプロットはこのテンプレートに沿って作るのですが、その際に最も気にしているのは、やはり物語の波(落差)を要所要所で意識的に作る事です。

 私の場合、上記の中では
 ・4:きっかけ~6:第一ターニングポイント
 ・7:お楽しみ
 ・8:サブプロット
 ・10:迫り来る悪い奴ら~13:第二ターニングポイント
 の四か所で少しずつ振れ幅が大きくなるように物語の波を作り、14:フィナーレで最後のカタルシス(快感)ポイントを作ります。
 ※作品によって波は増えたり減ったりします。
  この辺は臨機応変で。

③三幕構成で伏線を張るなら

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