お空組の子たちへのエレジー
猫伝染性腹膜炎(FIP)という猫の病気があります。
とても重い病気です。
かつては治療薬がなく、延命のためだけの療法が行われていたそうですが、子猫の致死率は100%でした。
3年ほど前に、アメリカで初めて治療薬が開発されました。でもまだ治験薬の段階で、日本で扱っている病院はほとんどないそうです。また、治療薬は非常に高価で、韓国の例ですが一週間の治療費が30万円かかるうえ、治療には6週間かかるとか。(Wikipedia日本語版より)
猫玉さんの記事に、このFIPで亡くなった子猫の絵がありました。猫玉さんが描かれた絵です。その子(ゆずちゃん)は最後まで、優しいママに愛されたとお聞きしました。
私は猫玉さんが描かれる猫の絵が好きで、特にその目の表情にたまらなく惹かれるものがあります。この子猫の絵を見た瞬間、なんて寂しそうな目をしているのだろうと思いました。そしてタグに「FIPが憎い」とあるのを見まして、これを描かれた猫玉さんのお気持ちを察することができました。
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猫玉さんには、以前にうちの三猫の絵を描いていただいています。その絵に描かれた三猫はいま、飾り棚の最上段から私を見下ろしています。
かわらが可愛すぎて嬉しい!!
さて、FIPで幼い命を落とした子猫の絵を拝見したのは、猫玉さんのハンネを使ったオリジナル曲を、三猫イラストのお返しに作ろうと考えていた矢先でした。
ハンネを使った曲と申しますのは、ハンドルネームのアルファベットの綴りを一定の規則で音名に変換してできるメロディを使った曲のことです。
これまで、noteのつながりで7作品できていまして、noteの記事で紹介しています。
猫玉さんの場合は、noteでの正式ハンネ catballer を音名変換したメロディを使うことにしました。次のような音名の並びになります。
CAEBADDEC
ハ長調の階名で読みますと「ド・ラ・ミ・シ・ラ・レ・レ・ミ・ド」になります。これを便宜上、猫玉ハンネ主題と呼ぶことにします。
猫玉ハンネ主題の最初のドラミは、ドラえもんの妹の名前と同じですが、階名で歌いますと暗いメロディになります。その理由は、ドラミはイ短調の主和音を構成する3つの音で作られたメロディだからです。人様のハンネで暗い曲を作ってお返しにするのもどうかなあ、と考えまして、明るくする工夫をしていたのですが、このメロディではどうしても寂しい曲になりそうな気配がありました。
そして、その流れを決定的にしたのが、先に挙げた猫玉さんの記事だったんです。
あの、ピュアで寂しい目をした子猫の絵を見た以上、猫玉さんのハンネ・ミュージックはペットロスの音楽にならざるを得ませんでした。ペットロスを題材にしたクラシックの作品は、私が知る限り、ベートーヴェンが17歳の時に作った歌曲「むく犬の死に寄せる悲歌(エレジー)」くらいしか思い当たりません。そこでベートーヴェンへのオマージュとして、タイトルを「お空組の子たちへのエレジー」としました。また、エレジーと言いますと、私はフォーレの「チェロとピアノのためのエレジー」が好きでして、楽器はその組み合わせも考えたのですが、やはり猫には高い音でキイキイ鳴るヴァイオリンの方が合っているような気がしまして、ヴァイオリンとピアノの二重奏にしました。
エレジーは悲歌とも訳されます。ペットに先立たれた悲しみ、楽しかった頃を思い出して、また辛く悲しくなる気持ち、そして虹の橋のたもとで楽しく暮らしているであろうペットへの思い。その狭間で揺れ動く心のさまを音楽の形で表そうと思いました。
猫玉さんには、曲の動画背景画像に、FIPで亡くなったゆずちゃんの絵を使いたいとお願いしましたところ、快諾して頂いた上に、さらに猫玉さんが描かれたお空組の子たちの絵もたくさん送って頂きました。感謝の念を禁じ得ません。お借りしたお空組の子たちの絵は、動画で曲の展開に合わせて配置しています。
とても悲しい曲ですが、よろしければどうぞお聴き下さい。
お空組の子たちへのエレジー
副題:猫玉さんのハンネ主題によるエレジー
作曲:古い音楽帳(音楽帳工房)
以下は、曲の構成と作曲者が曲に込めた意味について、概略を説明したものです。ご興味のある方はお付き合い下さい。
曲はソナタ形式で、提示部を2回繰り返してから、展開部・再現部そして終結部という典型的な構成です。第二主題の独立性が低いことと、展開部と終結部で第3主題(エピソード)が登場するところが、この曲の構成的な特徴だと思います。
第一主題は、先ほど挙げました猫玉ハンネ主題を変形したもので、最初に曲頭に登場してその後何度も繰り返されるメインの主題です。
第3主題は、猫玉ハンネ主題をそのままの形で使っていまして、第一主題の四分の三拍子に対して、八分の六拍子のリズミカルなメロディです。
第3主題は曲の中で2回登場します。
最初は展開部の途中から出てきます。動画では、猫が二匹並んだ絵が表示されるタイミング(02:38~)です。
二回目は終結部の開始部分です。動画では最後の方でゆずちゃんが再び登場する時(04:21~)で、この時は一回目よりヴァイオリンを一オクターブ高くして、天国が近いことを暗示しています。
曲の最後の方で2回聴こえるフルートのような音は、ヴァイオリンの倍音奏法で出されるピュアな響きです。曲の一番最後では、ピアノの上行する分散和音の上に乗せて、天使に見守られながら虹の橋を登っていくようなイメージにしました。
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