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クラリネットの音色に郷愁を感じて

クラリネットの音色には、ノスタルジーを感じます。
その理由を考えて昔をつらつらと思い出しているうちに、大昔の記憶の引きだしが開きました。よろしければ、私の作りましたクラリネットの曲を聴きながらお付き合いいただければと思います。
私は、クラリネットとピアノの組み合わせで作った曲が3曲あります。どれもノスタルジックな雰囲気です。今回は、その中で一番最初に作りました「クラリネット・ノスタルジー」という曲をご紹介したいと思います。
クラリネットはHerring Clarinet、ピアノは1920年製のスタインウェイ(Galaxy Vintage D)のサウンドを使いました。

このHerringのクラリネットの温かく情感豊かな音色は、たいへん気に入っています。あ、Herringは辞書で調べますと魚のニシンですが、ニシンとは関係ありません。クラリネット奏者の名前です。

クラリネット・ノスタルジー(Clarinette Nostalgie)
曲:古い音楽帳(音楽帳工房)


さて、以下は開いた記憶の引き出しの中で見つけた話です。


クラリネットは、大学生のころFMの音楽番組でよく聴きましたが、一番身近で聞いていたのは実家でした。中学から高校時代の頃の話です。
家族の誰かが練習していたわけではありません。私の実家は道を隔てて中学校の隣にありました。その中学校の吹奏楽クラブの生徒たちが、放課後になりますと実家のすぐそばにやってきて、フレーズとか音階を延々と練習していたのです。クラリネットだけじゃなくて、トランペットとかホルンの音も聞こえてきましたが、実家のすぐそばに陣取っていたのは主にクラリネットの女の子たちでした。
そこは、場所的に非常に都合が良かったんですね。
というのは、西側に校舎の壁がありましたので、それを背にすると西日が当たらないんです。寒い季節は室内で練習していたようですが、暑い季節になりますと日陰を求めてやってくるわけです。実家は中学校の東側でしたので、校舎の壁を背にして立つ彼らのクラリネットの矛先は実家に向けられています。しかも音は後ろの壁に反響しますし、それよりなにより、実家まで道路を隔てて15メートルほどの距離。家の窓を閉めても、全然防音になりません。
夏休みになりますと、私が家にいる時間も長いです。当時はまだ冷房なんて家にありませんから、当然窓を開けます。そして、吹奏楽クラブの面々も、涼しい場所を求めてうちの真ん前に大集合。時にはラッパ隊も整列します。しかも、各自てんでに自分の不得意なフレーズを練習しているので、大変な喧噪でした。
ただ、私がその中学校に通っていた当時は、特にうるさいとは思いませんでした。ところが卒業して高校生になると、さすがにうるさくなった。^^ とはいえ、私も他人のことをとやかく言えない立場でした。窓を開けて下手なピアノを練習していましたから。
両方聞かされる両親は、よく我慢出来たものだと思います。^^

私が高校を卒業して間もなく、中学校の校舎が建て替えられまして、実家の真ん前は生徒たちの通用門に変わりました。実家の一番近くに建てられた校舎は、一階が下駄箱のある出入り口で、二階は職員室だったようです。クラリネット隊もラッパ隊も、敷地のどこか奥に移動したらしく、音は遠くから響いてくるだけになりました。

なるほど!
そこでノスタルジーが出てくるのか

という筋書きではありません。

そういう話の運びも、できないことはないのですが、ちょっと無理がある。

クラリネットなんかもう二度と聴きなくない!」というテーマなら、その理由付けとしてぴったりの話ではあるのですが。^^

わたしがクラリネットの音色にノスタルジーを感じるのは、たぶん昔聴いたクラリネットの曲がノスタルジックな雰囲気のものだったから、というあたりではないかと思います。

大学生のころ、FM放送をテープ録音しまして、繰り返して聴いていました。レコードは高いですし、もちろん今のようなネットもありません。実家から離れてアパート住まいの学生には、テープに録音して再生して聴くのが一番安上がりな聴き方でした。

今でも、当時録音したテープが残っています。再生機器がないので聴くことはできませんが、曲のリストを見る当時どんな曲を聴いていたのか、思い出すことができます。

その中に、ブラームス晩年の名作クラリネット五重奏曲(ロ短調 作品115)がありました。この作品はナクソス・ミュージックにありますので、mikepunchさんの朝の談話室で紹介されるかもしれません。
というか、取りあえず第一楽章だけでも、リクエストいたします。^^

それはともかく、この哀愁の中にノスタルジックなものを感じさせる名曲を、テープ録音で何度も何度も聴きました。
家族から遠く離れて、一人アパート住まい。
長距離電話はお金がかかるし、めったに家族と話もできない。
夜一人でいる時間、無聊を慰めるために聴いていたこの曲のクラリネットの音色が、私の故郷への思いと一緒に心に焼き付いたのかもしれません。


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