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アマゾンに5900億円出資されたLLM開発企業「Anthropic」の全て

初めまして!
Xで主にスタートアップ関連や生成AI関連の事業・技術・動向を発信しているRICと申します。

こちらのnoteを見られている方は、「Anthropicまとめスライド」の投稿(下記)をご覧いただいている方が多いかと思います。
本編では、Anthropicの企業概要や出資関係の情報、Amazonの出資の思惑などについてまとめています。



1. そもそもアンソロピックとは?

アンソロピックは、元OpenAIのエンジニアであるダリオ・アモデイ氏とパートナーによって共同設立され、言語モデル「Claude」(クロード)の開発に専念している企業です。
最新モデルであるClaude 2は、前モデルのClaude 1から大きく進化し、数学やコーディングの分野でGPT-4に迫るベンチマークを記録しています。

特筆的なのは
・Codex P@1 (Codexモデルによるコード精度を評価) 20%上昇
・GSM8k (数学的推論) 8%上昇
です。

https://m.8btc.com/article/6825858

さらに、アンソロピックは企業としてAIの安全性を強調し、信頼性と解釈可能性、そして操縦可能性を備えたAIシステムを作成することを目指しており、AIの研究開発における安全性を確保しています。

2. Claudeの特性

Claudeの最大の特徴は、10万のコンテキストウィンドウと、企業の明確なゴール設定に基づいた「安全な」回答生成能力にあります。
コンテキストウィンドウはつまり「言語モデルが覚えられるユーザーとの対話履歴の長さ」です。

GPT-4のコンテキストウィンドウが32,768トークンなのに対し、Claude 2 のコンテキストウィンドウは驚異の10万トークン。
GPT-4の約三倍の長さの過去の対話を参照できます。

https://www.confluent.io/blog/chatgpt-and-streaming-data-for-real-time-generative-ai/

Claudeは、安全な回答生成を重視することが本来の性能の抑制につながりやすいという、本来はトレードオフの関係にある要素を、性能を落とすことなく実現しています。
カスタマーサービス、クライアント向け資料作成など顧客と対面する上で倫理的に正しいアウトプットが必要となるアプリケーションでの利点ですね。

100kのコンテキストウィンドウは、Claudeがより広範で一貫した関連性のある会話、つまり長く続く文脈を維持し、関連性と正確性のある回答を提供する上で重要です。
具体的なメリットとしては、例えば自社の資料を与えて「これと同じ構成で別の対象についての資料を作って」というプロンプトを投げたとします。
コンテキストウィンドウの大きさが言語モデルが認知できる資料サイズに直結するため、Claudeのような大きなコンテキストウィンドウがあれば、IR資料や財務情報など長く大きいサイズの文書の読解が可能になります。

3. 財政的側面と資金調達

アンソロピックは、(今や悪名高い?)FTXの創設者SBF氏やスカイプの共同創設者ジャン・タリン氏、Googleなどの大手VCから巨額の投資を受けています。

https://x.com/rice_vc/status/1708394116516921782?s=46

特に象徴的なのがAmazonの5900億円超の出資。
4Bドルの投資でも「Acquired a minorty stake(少数株主となった)」と報告されている事より、取得株式は多くとも49%なわけで、アンソロピックのバリュエーションは少なくとも8Bドル以上と理解できます。

4. 戦略的連携:アンソロピックとAmazon

Amazonからの巨額の投資は、単なる金銭的リターンを目論んだ資金援助ではなさそうです。むしろ、GAFAの各社がそれぞれAI武装競争を激化させる中での戦略と捉えるべきかもしれません。
MicrosoftとOpenAI VS AmazonとAnthropicという新しい構図として認識出来ます。

https://x.com/rice_vc/status/1708394116516921782?s=46

この連携は、AIの研究の風景とテック大企業の力関係に波乱をもたらすものです。
Anthropicへの出資によってアマゾンは自社事業にも様々なメリットを享受できることが分かっています。詳細は7.で解説します。

5. Amazonの二面性:オンラインマーケットプレイスとクラウドサービスプロバイダー

Amazonは有名なオンラインマケプレという側面以外に、AWSというクラウドサービスの側面も持っています。本社の収益セグメントのうち12.5%がAWSによるものであり、こちらの規模は年々拡大しています。

出典

LLMの開発は計算集約的であり、学習に巨大なマシンパワーを必要とするため、AWSのようなクラウドコンピューティングプロバイダーとは切っても切り離せない関係にあります。
Amazon、特にAWSとアンソロピックの協働は、Claudeのような大規模な言語モデルの開発と実装に不可欠なクラウドコンピューティングを支援することで強力なシナジーを生み出せます。

6. AWS:IaaS市場における強固な立ち位置

AWSはIaaS市場のクラウドサービスの中でも最大のマーケットシェアを誇り、二位のマイクロソフトAzureを大きく引き離す規模と顧客基盤を備えています。

出典

Amazonとの戦略的提携により、アンソロピックはこの莫大な計算インフラを利用してLLM開発を加速させることができる仕組みです。
AWSはアンソロピックに計算リソースを提供するだけでなく、AWSを使用する多くの企業や開発者にClaudeの利用を促せるプラットフォームを構築できます。

7. 連携から得られる相互的利益

この提携により、Amazon側も多くの利益を得るでしょう。
・オンライン商品販売における顧客対応の自動化
・AWSが提供するAIソリューションの多様化と高度化
・GAFAのAI武装における競争力の向上
などがメリットとして考えられます。


これらを超えて、Amazonが企業としての技術力や存在感を高めることにもつながるでしょう。
ClaudeをさまざまなAmazonサービスとプラットフォームに統合し、高度なAI機能を備えたサービスを強化できるわけです。

8. 実世界のアプリケーションと成功事例

AWSの新サービス、Bedrockは既にClaudeを使用したAI開発機能を提供しています。早くも報告されている使用例には、

・リコーUSAの企業内データ管理
・ロンリープラネット(トラベルメディア)の旅行プラン作成のコスト削減

https://aws.amazon.com/bedrock/testimonials/#ricoh
https://aws.amazon.com/bedrock/testimonials/#lonelyplanet

などがあります。ロンリープラネットの例では、顧客の旅行プラン生成に係るコストを80%以上削減したとも報告されています。
これらの使用例が証明するように、既にClaudeがオペレーション効率化やコスト削減につながっていることは明らかです。

9. 結論

まとめると、アンソロピックはその革新的な開発とAmazonとの戦略的連携により、AIおよびテクノロジー業界において将来のトレンドと進歩を形作る注目すべきエンティティとして認識され始めています。
アンソロピックの「安全で倫理的なLLM」に焦点を当てる研究開発とAmazonとの戦略的連携を通じて、今後はOpenAIと対等に渡り合う競合として展開されていく様子を引き続き見守っていきたいと考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました!
今後もXではスタートアップ関連や生成AI関連の事業・技術・動向を発信していく予定ですので、フォローしていただけると励みになります。


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