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平日のおひとりさま休日、美容院で人生初パーマを体験

 わたしだけが休日で、夫のろうすも息子のにっとも普通の平日。ろうすは六時前には出勤、にっともいつもの八時半に保育園。

 さてここからいかに過ごすか?

 十時の開店早々に美容院を予約していた。
 いつものカット+カラーに加えて、今回はパーマにも挑戦してみることに。人生初パーマ! たまのひとり休日だからと浮かれすぎか……でもきっかけがなければ新しい物事には取り組めない。

 早めに美容院周辺まで行っておく。駅前だから混むことも視野に入れていた。九時半。三十分をVIE DE FRANCEで潰すことにした。
 トングを握る。ポップに添えられた「焼きたて」の文字を見つけつまむと、パンが震えた。柔らかさが伝わってくる。そうっとトレーに乗せた。飾り気のない、シンプルな姿。

飲み物はルイボス柚子ティー

 お腹を温め、美容院に来店する。
 男性の美容師さんだ。パーマが初めてだと告げたら、とても詳しく教えてくれた。

「髪の感じからして、かなり強めにかけた方がいいですね。弱いと一ヶ月もたないと思います」

 髪の長さとパーマの強さの比例を表すような表を見せてくれた。わたしの理想の長さと、パーマの強度の相性がいいのは、聞くとその表のちょうど真ん中あたりの髪型らしい。

「じゃあそれでお願いします」

 パーマをかけたあとの自分がどうなるのかわからないため、パーマの強度はお任せしたい。

「では今日はこれにしましょうか」

 若いこの男性美容師さんも、パーマがかかっていた。ダークな茶髪に、金のメッシュがよく似合う。

「まずはカットして、パーマのあとにカラー……リタッチさせていただきますね」

「お願いします」

 なるほど。カットが最初だろうとは予想していた。パーマとカラーはパーマが先なのか。確かにカラーが先だと、パーマに必要な道具にカラー剤がついてしまうリスクがあるのかもしれない。

 今まで考えたこともなかったことを、ぼんやり考える。

 三ヶ月以上ほったらかしにしていた髪は、カットしただけでだいぶわたしの印象を変えた。
 四十分ちょっとが経過し、鏡をよく見ると、もうすでに仕上がりに満足してしまう。まだ切っただけなのに。

 さていよいよパーマ。
 わたしの頭はどうされてしまうのか?

「じゃあちょっと、塗っていきますね」

 なにをや!?
 パーマ液っちうやつだろうか。
 かいだことのないにおいが立ち込める。反射的に呼吸を浅くした。なんと表現したらいいのか、確認のために何度もこそこそ嗅ぐうちに、鼻が馴染んで気にならなくなってしまった。パーマ液のにおい、文字起こしならず。

 丁寧に丁寧に塗られたら、なんかあれ、昔に毎晩おばあちゃんがつけていたやつ、なんだっけ、あぁ! カーラー! ……らしきものをくるくるかちっとたくさん次々装着される。

 表現力があまりにもお粗末!
 店内の穏やかでおしゃれなバックミュージックのおかげもあって、だいぶ眠気にやられていた。

 うつらうつらしながらふと鏡に目を向ける。さくっと切り揃えられた前髪。カーラーがまとめた髪は左右で揺れて、お団子が二つあるみたいに見えた。
 見たことのある姿。誰かに似ている。そうだ、幼い日に大好きだったアニメ「カードキャプターさくら」のメイリンを思い出す。(いまこの記事を書きながらメイリンについてネット検索したところ、彼女はお団子ヘアというか、お団子からさらにまだ長く髪を垂らしていた。いまにして思えば全然違う)

 勝手ながらパーマのイメージは、逆さまにした炊飯釜みたいなやつを頭にかぶせてかける、のだと思っていた。
 美容師さんはカーラーぽいやつをゴムかなにかで固定すると、なんかもうなんと形容したらいいかわからないものをひとつずつにあてがった。

「熱を通していきますね」

 ぱちんぱちんとひとつずつにコードをつないでいく。ほどなくして髪の全体が少しずつ、じわりじわりと温かくなる。これが熱。

 未知。
 あまりに未知の体験!

 頭がぽかぽかして爆睡してしまった。
 あとはまどろみの中、言われるがままとなる。
 
 その後カラーも済ませ、美容院を出たのは十三時近く。
 これがパーマ……! 仕上がりはとても気に入った。カラーののちシャンプーしてもらい、濡れたパーマの自分を鏡で見たらおばはん感が強いように思えたが、乾かしスタイリングしたら全然おばはんやあらぁへん。
 美容師さんはムースの使い方まで教えてくれたし、ドライヤーのコツも詳しく説明してくれた。

 帰り道のスーパーで買い物をして、お昼ご飯にと買ったちらし寿司を十四時半に自宅で食べた。
 美容師さんの言葉を思い出す。

「お手入れに困ったらカウンセリングだけでもいいのできてくださいね」

 会計時にはそんな素敵な誘いまでしてくれて。パーマのわたしを大切にしようと思った。

 新しいことをたくさん知り、自分の表現力におさまらず、無知で未知な出来事が楽しい、きらきらした休日になった。


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