リボン武装

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asumi(https://note.mu/st241) 満島エリオ(https://note.mu/eriomitsushima) 同一テーマでエッセイを書くアカウント。

最近の記事

聞こえるか 遠い空に映る君にも

春が嫌いだった。 学生の頃、春は常に変化の季節だった。やっと作ったクラス内のコミュニティから放り出されて、また新しい関係を構築しなきゃならない。新しいクラスに居場所がある保証なんてどこにもない。一人になりたくないがゆえに、大して仲良くもない子とお昼を一緒にとる約束を取り交わす、はみ出すまいと必死な自分のダサさや、あの子は今日はちゃんと登校してるだろうかとか、あの子の一番仲の良い子は別のクラスにいるんだとか、あんな狭い教室の檻の中で、そんなことばかりに囚われていた中高時代を一番

    • 海岸通りに春が舞う

      鳴り止まない通知に、スマホを機内モードにして終止符を打った。 人というのはわがままで、ひとりのときは寂しくなるのに、人といると鬱陶しく感じる。無職になった私は流されるままに予定を入れて、その量に圧倒されて、先回りして疲れてしまった。普段から週末に2つ以上の予定が入っている人は一体どんな心地なんだろう。そもそも、ごはんと、ドライブと、ライブと、旅行の予定をたてることが同時に起こりうるだろうか。流されるままというのは嘘で、働いているときに我慢していた分の遊びだ。自分の欲求に素直

      • 僕らの足りないもの

        オレンジのニット、えんじ色のパンプス、青色のカーテン、ピンクのクッションカバー、ベージュのカーディガン、真っ赤なホーローケトル。 宇多田ヒカルの歌詞ではない。ここ三週間あまりのあいだに私が買い集めたものの一部だ。 ここのところ、笑えないくらい物欲を抑えられない。 先月末、転職に合わせて引っ越しをした。 その前は実家に暮らしていて、さらにその前は一人暮らしだった。実家に出戻る時、家具家電をほとんどそっくり取っておいたので、最低限のものはそろっていたのだが、とはいえ、ところ変わ

        • 息抜きしましょうよ

          「本気で休みなさい」とカウンセラーに言われたのは去年の秋のことだった。最初はどういう意味なのかよくわからなかったけど、次第に自分の思考の癖、行動の癖のはしばしに「休みへの拒否」が表れることを認識した。それと同時に、本気で休むことがいかに難しいかを体感している。 * 正直に言う。私は一般的な「エリート」だ。都内中高一貫の女子校という温室で育ち、旧七帝のうちのひとつの大学へ行き、中堅校とはいえど学費免除で大学院留学をした。仕事はAI関連と言えるもの。 基本的に夢を見つけては

        聞こえるか 遠い空に映る君にも

          クローゼットの奥で眠る

          アラームの音から逃れるように、頭まで布団にもぐって眠っている。 そんなことをしても時間が止まるわけでもない。朝食も髪のセットも全部諦めてようやく遅刻ぎりぎりという時間になって、冬眠から覚めた動物のように、羽毛布団の穴ぐらから這い出る。そんなことを、毎朝くりかえしている。 昔夢想していた大人の自分は、ドラマの第1話みたいに溌剌と玄関のドアを開けて、朝日を浴びながら颯爽と仕事に向かっていたはずなのだけれど、その幻影はいったいどこへ行ったのだろう。 * 3年前、私は千葉の金融

          クローゼットの奥で眠る