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#14「東京」

 新宿、渋谷、下北、八王子、池袋…。
 バンドというものをやってきた"せい"か"おかげ"か、東京には浅からぬ縁がある。

***

 小学生の頃、ケツメイシの「東京」という歌を聞いた。
 地元の思い出を振り返り、曇天で肌寒い大都会を嘆きながら、でも同じ思いをしてる仲間もいるよね、夢を叶えるまでは帰らんからな、という歌だ。
 大人になったらみんな東京に行くのだろうか。都会ってのはそうも冷酷な場所なのか。狭い世界に生きていた幼い僕にはわからなかった。

 やがて、知人友人が本当に上京したり、帰郷したりした。東京は便利すぎて地元にはもう戻れないと笑う人も、やっぱり地元が一番落ち着くというホームシックな人もいる。一面氷の街だと思っていた東京も、修学旅行で観光地を訪れてみたり、移り住んだ人に話を聞いたりしていくうちに、氷漬けではないいろんな面があることを知った。

 結果的に僕は今日まで地元に居ついて離れたことがない。大学さえも家から電車で通える圏内にあった。
 そんな中でバンドを始め、結成した次の冬に、初めて東京でライブをしないかとお誘いを貰った。

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2,242字

特に有益な情報はありませんが、読んだ方にとって普段目も向けないような他愛のないもの・ことに改めて触れるきっかけ、あるいは暇潰しになったら幸いだなと思っています。

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