閃き

深い、底が見えないほどの悲しみから救ってくれるものは何であろうか。誰かの慰めであろうか。近い未来の楽しみであろうか。それとも一瞬の娯楽であろうか。

いや、どれでもない。

悲しみから救ってくれるもの、それは閃きである。稲妻のように突如頭に落ちてくる閃きなのだ。

さっきまでの悲しみはどこへ行ったのか、全て忘れ去ってしまうほどのそのアイデアが、救ってくれる。その閃きのヒントをくれるのは恋人かもしれないし友達かもしれないし、知らない人のたばこの煙かもしれない。木の枝に結びついた汚れたスニーカーかもしれないし、いつか見た夢の中で出会った魔女かもしれない。

でも見つけるのは自分。閃きが降ってくるのはあなたの心の中。夜中に突然の閃きの訪問に興奮して眠れない夜があってもいい。朝になる頃にはきっと悲しみの果てを通り越して、見知らぬ駅に辿り着いているから。

降って来なけりゃ探しに行こう。布団の中、心の中を旅して、いつか出会ったきれいな人の声に耳を傾けよう。いや、ちがう。今抱えてる悲しみの種を、超えるほど大きな、大きくて首が痛くなるほどの別の問題について、真剣に悩もう。未来のことを考えよう。壮大な悩みの種は、さっきまでの悲しみなんてどうでもよくさせる。問題解決のアイデアをまた見つけようとしている間に、心はずっと楽になる。だから、悲しいことを考えるのはもうやめよう。人生は一生懸命丁寧に生きるにはあまりに長すぎるし、急ぐにはあまりに短すぎるから。だからだらけていいんだよ。ずっと長くだらしなくいることだって、いつかは飽きてしまうでしょ。だからその時までだらだらしよう。閃きが降って来るまで、悲しみに身を任せていてもいいけれど、探す旅に出るのも悪くないと私は思うよ。



決して誰かを悲しませたくないけれど、自分のせいで悲しむ人は、きっと自分を大事に想ってくれている人ね。だからそんな人こそ、大事にした方がいいのかも。そんな人を傷つけたくないわね。裏切られた時のあの悲しみの色は、決して綺麗な青じゃないから。誰かを悲しませる人にはなりたくないね。愛してくれる人を裏切ったりしてはいけない。悲しみは心を支配して、世界を真っ暗闇にする。ああ、そんな世界の中でひとりぼっちで泣いている可哀想な子がいる。この世の中にそんな世界は無限に存在している。悲しみのシャワーを浴びて、日光に当たらず、悶々と息絶えずに生きることに耐えている人々。ほらそこの、素敵な人よ、手を取って、一緒に生きようではないか。救われたいと思っている、君のことを、私だって救いたいと思ってる。だからどうか悲しみに暮れないで。

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