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運動経験なんてなくたって、山に登ればいいじゃない

「山なんて、何のために登るの?」

とよく聞かれる。おそらく登山をする人はみな一度は聞かれたことがあるのではないか。
その答えはきっと人によって違うけれど、私にとっての答えが見つかったからここに記録しておく。

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一昨年の夏に富士山に登り、そのときのことをnoteに書いた。

すると「登山なんてわたしには縁がないと思ってたけど、めっちゃ興味を持った!」「私も登山に行ってみたくなったから連れてって!」とのリアクションをもらって、私は、とっても嬉しかったが同時にとてももどかしい気持ちになった。

登山友達とも意見が一致したのだが、富士山はかなり特殊な山で、特殊な登山体験だった。私が趣味としているいつもの登山の魅力はあのnoteでは全く伝わらない気がする。

とはいえ登山に興味を持ってもらえたのは嬉しいことだ。これをきっかけに「私にとっての登山」をnoteを書いてみようと思う。


私にとって登山とは

登山は冒険

想像される「登山をする理由」第一位はおそらく、「達成感を味わうため」だろう。苦しい道を耐えて耐えて、ようやく辿り着いた山頂からの景色を見るときに全身を包む達成感がたまらない……的なやつだ。
もちろんそういう人もいると思う。でも私にとっては山頂の眺望は重要ではない。あえて断言すると、私にとって登山の肝は「登りの道中」である。

日常生活で知らない道を歩くことがどれだけあるだろうか。見慣れない道でも街であれば角を曲がった先の景色はある程度想像できる。

でも登山道は違う。まずまっすぐな道なんてないので先が見えない。曲がった先で急に橋に出会う。沢に出会う。倒木に、鎖場に、絶景に出会う。数歩先の景色の想像できなさは、さながら海外旅行のようだと私は思う。
知らない景色に出会うこと、それを冒険と呼ぶ人は、きっと登山を冒険だと言う私の気持ちがわかるはず。

こんな景色が突然現れる
(2023.05.06 日和田山)


沢の中の岩壁を登る
(2021.11.14 棒ノ折山)



登山は動的瞑想

仕事のこと、人生のこと、恋愛のこと、人間関係のこと。日常生活でモヤモヤしたことがあると私は山に登る。なぜなら山は全てを解決するからだ。

私は一人で山に登ることはないが、かといって同行者とひっきりなしに喋っているわけでもない。一歩一歩進んでいると、わざわざ意識しなくても最近ホットな悩みごとが頭に浮かんでくる。なにしろ何時間も歩くのだ。

しかし不思議と、ずっと家でぐるぐると悩んでいたはずのことなのに山だと考えが変わる。そうか、私はこうしたかったんだ。なーんだ、どう考えても私はあの人みたいにはなれないから諦めよう。あれ、なんであんな男にこだわってたんだろう。何もスーパーポジティブになるわけじゃない。シンプルになるというか、思考が前に進むのがわかる。

きっと風や鳥の声、少し冷たい空気、くるくると変わる景色のせいもあるだろう。でも私は大きな自然の中を自分の足で歩くおかげだと思っていて、それを動的瞑想と呼んでいる。

ただ、ひたすらに、歩く。
(2023.07.02 尾瀬ヶ原)


登山は計画と遂行

私は計画性がない。そして根性もない。熱しやすく冷めやすくて飽きっぽい。性格診断などによくある項目「粘り強く最後までやり遂げる」からは最も遠い人間だ。

そんな私でも登山計画はやり遂げられる。
理由はひとつ、登ったら自分の足で下りるしかないからだ。

私は道中でもよく弱音を吐く。すぐ立ち止まる。でもまた歩き出す。歩くしかないからだ。
登山はいい。歩いたら進む。歩かないと終わらない。歩かないという選択肢はない。シンプルだ。
先が見えないほど続く急な階段も、登ってればいつかは終わる。そして振り返ると信じられないほど下にさっき自分がいたはずの地点が見える。もうこんなに登ってたのか。頑張りが可視化される。少し自信になって、また登る。

「登山はいいよね。これまでの頑張りが急に白紙になったりしないし」と公務員の友達は言っていた。いつもお疲れ様です。

さっきいた場所がもうこんなに小さく見える
(2022.10.10 日光白根山)


登山は自分の身体と向き合うこと

私は学生時代、運動が大嫌いだった。体育の時間は全種目苦手で苦痛だったし、長座体前屈はマイナスだし、100%文化部だったし、跳び箱がとべなくて進級が危ぶまれたこともある。
だから「運動が苦手?いやいや、登山するんでしょ?」と言われると不思議な気持ちになる。登山は、私が大の苦手なあの「運動」なのか。

大人になって、登山を始めて、気づいたことがある。
私が苦手だったのは走ること・跳ぶことだったのだ。そして学校の体育はそれらが不可欠なのだ。

登山は言ってしまえば歩くだけなので、散歩の延長でできる。誰とも競争しないし、上手い下手もない。登山では休憩のいらないペースで歩くのがベストだとされている。つまり良いペースは人により異なる。息は上がっているか。足は動いているか。膝は痛くないか。喉は渇いてないか。エネルギーは足りているか。ただただ自分の身体と向き合いながら自分のペースで歩いていく。そんな運動があるなんて、学生時代の私は知らなかった。

エネルギー補給も醍醐味

あと登山には練習がない!常に本番だ。それも嬉しい。
そして自分のペースで本番を繰り返していくと、いつの間にか遠くへ行けるようになっているのだ。

こんな山だって登れるようになる
(2023.08.27 唐松岳)



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もしあなたが山に興味があるのなら、ぜひ登ってみてほしい。
運動経験がなくたって、学校の体育が嫌いだったって、関係ない。ゆっくりあなたのペースで進めばいいのだ。


山を登る理由なんて「登ってみたい」それだけでいい。


「山」に見える山
(2022.10.10 日光白根山)

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