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生物多様性と衛星データ その4

(宇宙投資の会では、2023年度はこのテーマに注目をしたいと思います。このタイトルでしばらくブログを書きます。こちらにも掲載しています。宇宙投資の会のHPでも掲載しています)
 
 
カカオのサプライチェーンと森林破壊
 自然資本を意識した投資をしている場合、考えなければならないのはパームオイルだけではない。そのほかにも今、そのサプライチェーンのサステナビリティを、投資家が意識するべき農産物としてカカオが挙げられる。
 グローバルに活動しているアドボカシー団体のMighty Earthは、パーム油、ゴム、カカオ、動物飼料のグローバルサプライチェーン全体で、森林破壊や汚染を削減するよう主要産業を説得し、同時に熱帯地域の先住民と地域社会の生計を改善することを目指し活動している。このMighty Earthによると、今ガーナとコートジボアールの森林破壊は高い水準にあるそうだ。
 2022年2月に同団体が発行した報告書では、西アフリカとその周辺で、カカオ関連産業がこれまで約束してきた“森林破壊を止める”という誓約が、未達成であるという結果が報告された。特にガーナとコートジボワールの主要なカカオ生産地において、残念なことに熱帯林の破壊が進行していたことが判明したそうだ。
 
衛星による観測
 そこで同団体は、衛星データを用いて再度調査を行った。ここでも熱帯林伐採の全体像は改善されていないことが判明した。RADDアラート(「森林破壊検知のためのレーダーアラート」)と呼ばれるモニタリングでも、コートジボワールにおいて2019年以降8,000ヘクタール以上の森林消失面積が記録された。ガーナでは1万2,000ヘクタール以上の森林が消失していることが明らかになったそうだ。2017年11月の国連気候変動会議において、コートジボワールとガーナ政府は、カカオの取引業者や製菓産業(ネスレ、ハーシーズ、モンデリーズ、ユニリーバ等)とともに、「カカオと森林イニシアティブ」(CFI)に署名し、2019年には行動計画も発表したそうだ。しかし今回の調査でその実行がうまく行われていないことが判明した、とそのサイトで説明している。
 別のNGO ACE(児童労働問題について取り組んでいる団体)によると、日本が輸入するカカオの7割はガーナ産が占めているようだ。輸入されたカカオは25%ずつ森永と明治が利用しているようだ。この地域のカカオには児童労働の問題もあり、これらの日本の製菓メーカーは児童労働の問題については組織内で認識を高めていると、上記のNGOは報告している。

衛星データによるモニタリング
 衛星データを使った土地評価コンサルなどを手がける天地人は2022年10月、「食品トレーサビリティプリンティングシステム」を提供する株式会社シンメイと、カカオやその他の農産品におけるフードバリューチェーンの構築や、関連する社会課題の解決へ向けた共同プロジェクトを開始すると発表した。これらの技術を用いて、日本の製菓メーカーもカカオのサプライチェーンをモニターし、森林破壊を食い止めるよう行動をとることができるだろうか。これらの技術やビジネスの発展を引き続き、注目したい。


(5月25日追記)
この記事によると、一部はもしかして、カカオではなく森林を伐採してゴムを植えている可能性もあり、そうなると異なる産業になってモニターしづらいかもしれませんね。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70631490Y3A420C2ENG000/
 

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