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ホワイトデー

帰宅すると、玄関先から焦げた匂いが充満していた。

長男が昼下校だと言っていたので、昼食として食べようとした残り物のシチューを温めている際に焦がしたものだと思い、
やれやれと三和土を上がった。

長男の姿はなく、脱衣所の鍵が閉まっていたので入浴中のようだった。

リビングに入ると一層焦げた匂いが鼻に入ってくる。
しかしシチューを食べた形跡はない。
はて?この匂いはなんだろうと、キョロキョロと見渡すと、
プラスチックの皿に大量のクッキーが乗っていた。

『え?手作りだ。』

手作りのクッキーの制作者は長男しかいない。
よく見るといくつか焦げたクッキーが混ざっていた。

今日はホワイトデー。
私に焼いてくれたんだ。

初めてひとりでお菓子を作った長男。
母親としてこんなに嬉しいプレゼントはない。

風呂上がりの長男に尋ねるとやはりバレンタインのお返しだと答えた。
照れくさそうに。

焦がしたクッキーはほとんど自分で食べたらしい。
更に驚いたことに洗い物はすべて済ませてあったのだ。

いつの間にか成長しているんだなと感動した。本当に嬉しい。



今から21年前、夫から初めてもらったホワイトデーのプレゼントは手作りのクッキーだった。
私もバレンタインデーに手作りのクッキーを渡したんだっけ。


男性から初めて手作りのお菓子をプレゼントされて、そのときもとても嬉しかったことを覚えている。

夫と長男、やはり親子だな~。


思い出深いホワイトデーになりました。






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