神野璃緒

じんのりおです。随筆と小説の狭間を楽しんでいます。演劇もしてます。

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【日記】魅力のサーモグラフィ

ここに立っている以上、僕はもう、いや、僕が思い込んでいるだけかもしれないけど、何も残っていない、からっぽな人間なんだろう。 時折人々は「魅力」という言葉を口にするが、はて、魅力とは…?顔、スタイル、筋肉とか、優しさ、真面目さ、レディーファーストとか、頭がいいとか、ストレートだとか、挙げたら多分ずっと出てくるけど、単に魅力と言っても、それはwell-definedではない。「人間的な魅力」とかいうから、多分「動物的な魅力」もあるのかな、とか。「人は顔より性格」って言うけど、本

    • 【短編小説】男子校生・復縁ネガティブキャンペーン

      「未だに忘れることができない人達、というのは自分に新たな価値観を提供してくれた人であることが多い。」とバカ真剣に言ったら、すっかり酔いの回ってる達也は、「俺ってそんないいやつなんか…」と返してきた。いや、お前じゃねえよ。というしかない。忘れることができないのベクトルがちげえよ。週1で飲みに行くこいつは、学科同じだし、授業で一番会ってるし、多分社会人になっても飲みに行くし、結婚式にも呼ぶくらいの奴だ。価値観なんて1ミリも変わってない。あれ、そしたら矛盾するやんか、と思ったけど、

      • 【日記】『雨の日はジョンレノンと』的な…。

        2限にフランス語のテストがある本日大雨の金曜日は、1限から5限まで必修の授業がびっしりと並んでいる。テスト勉強を始めたのはちょうど日が変わったくらい。1夜漬けもいいとこだ。7時には家を出ないと1限に間に合わない。でも、遅く寝すぎると今度はテストに集中できなくなるし、何より顔が浮腫んでしまう。 冗談はさておき、僕が選んだ選択肢は、タリーズのコーヒーを眠い目をこする自分の体に注入することだった。「中途半端」を体現するこの選択。諦めが悪い男というのはモテないらしいと聞いて、若干憂鬱

        • 【エッセイ】「自由」「多様」なんて、

          短編小説を書くことを好む僕にとって、こうしたエッセイは性に合わないのかもしれないが、書きたいのだから仕方がない。本当はこういうことを卒業文集として消化できるといいのであるが、癖が強い校風とはいえ、これを書くのは、あまり卒業ムードに合わないので、ここに残して終いとする。 「自由な校風」と聞くと、それは生徒主体で様々なことを進めることができることを想起しがちであるが、実際は先生の制約が入ることが大半である。その制約の中での「自由」なのであって、本当の自由ではない。ただこれは、学

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        【日記】魅力のサーモグラフィ

          【1分小説】あの日に語りかけてきた時計のおはなし

          「いい時計だね」と友達に言われる僕の時計は、もらったカタログに載っていて、一番高見えしそうだった時計だ。JAPANESE MOVEMENTと書いておきながら、本当はゼンマイ式のこの時計は、4ヶ月後に受験を控える僕にとっては少々飾りすぎではあるが、なんせ時計がこれしかない。新しく1000円のCASIOの時計を買うよりも、3000円の僕には不釣り合いな時計の方が、半年後の大学生生活を見越しているようで、勉強中の些細な心の支えになっているのである。受験生にとって、中高6年間男子校で

          【1分小説】あの日に語りかけてきた時計のおはなし

          【1分小説】記憶って、酸化される

          高1の時に好きな人ができた。できた、というよりできた「らしい」に近い。僕は全くその人に恋愛感情を持っていないと割り切っているが、どうも第三者から見たら、気づいたらその人のことを見ている、ということだ。ちなみに名前も知らない。僕はその人のことを「その人」と呼ぶことにした。 今見ているアニメの主人公の名前に当てはめるのは気が引けるし、適当に名前を付けるのも気が引ける。だから「その人」と呼んでいる。友達には名前ぐらい聞けよ、って言われるけど、なんで好きでもない人のことを聞かなきゃい

          【1分小説】記憶って、酸化される

          【エッセイ】ドラマでありたい。

          「自由が丘」___目黒区にあるカフェが立ち並ぶお洒落な街である。周りは大学生やマダムで溢れるこの街に一人、男子高校生は不釣り合いだったので、夕日とネオンが煌く自由が丘を横目に線路沿いに歩き出した。 まだ自由が丘の雰囲気が残る個人経営の美容院や、ペットのチワワを抱えて近所のおばさんと話す古びたお花屋さんの匂いに休日特有の優越感を感じながら、隣駅の九品仏が見え始めた。 見慣れない商店街。ほんの数分歩いただけで、神社や飲み屋が立ち並ぶ。 平成の名残のあるこの街に一件、駅前の角地に一

          【エッセイ】ドラマでありたい。