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【読書記録】ケン・リュウ「愛のアルゴリズム」 もう『愛してる』なんて信用できない?

物語は夫に伴われた不安定な女性の登場で始まる。どうやらなんらかの病気からの回復の途上の様だ。どうしてこうなったのか? 彼女は答えを求めて過去に想いを巡らすが、それが読者の疑問にも応えるための仕掛けとなる。ロボット開発を縁に愛した夫、そして幼い子供の死。それを乗り越えるための新たなロボット開発。彼女がこうなってしまった原因となる事件が回想され、現在時間軸と入れ替わりに読者に提示される。何かを見るたび彼女は過去の事件に引き戻される。進むにつれ読者は彼女の心の傷に同期していく。彼女は決して回復することはない。それに気がついた瞬間を捉えて物語を収束させる。愛のアルゴリズムに従い夫に対して彼女は「愛してる」と口にする。部屋の隅で反応して「わたしも愛してるわ」と言うロボットと等しいアルゴリズムによって。



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