【序文公開】グンマ・コンプレックス
「君は群馬が好きなの?」──2015年、修論発表会。指導教官からの最初の質問は、思いもよらぬ方向から飛んできた。
散々迷走して提出した建築学専攻の修士論文。普遍的なテーマの中で、具体例として「群馬の建築」を取り上げて論じたが、群馬を対象とすることの必然性を問われたのだった。
「えーと……群馬は自分の地元なので、好きです」と答え、後づけの選定理由も説明したが、本当に「好き」なのかどうか。発表会の後もずっと引っ掛かりがあった。
そもそも卒業論文や設計課題でも群馬を対象地に選ぶことがあり、SNSでもつい群馬ネタをつぶやいてしまう私は、「群馬といえばカミヤ」という印象を友人たちにも与えるようになっていた。そして「群馬、群馬」と言い続けて、こんなzineをつくるまでになってしまった。
確かに群馬県民は「上毛かるた」に代表されるように郷土愛が強いと言われ、東京や別の地域にいても「群馬出身」を強調する人が多いように思う。それは、ネット上のコラージュ画像や漫画『お前はまだグンマを知らない』などが話題になり、自虐ネタとして言っている面もあるだろう。もちろん郷土愛もある(はずだ)。では私は、自虐のためにこのzineをつくるのか。あるいは郷土愛なのか。どちらでもないのか。
おそらく私はどちらでもなく──ただ「自分を形成してきたものを探る」ために群馬を探っている。長年考える中で、それは「関東平野の端っこ根性」にあるのではないかと思うようになった。
このzineではそんな群馬の①地理や、②建築や、③都市を通して、その地域特性を考察し、友人の岡本氏による写真とともに、勝手な持論を展開していく。あくまでも私の視点から見たひとつの群馬の姿だが、何か心に残るものがあれば嬉しい。
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