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ファミリー.1

頑なな九州男児で、家庭でのコミュニケーション能力ほぼゼロの父の記憶が減って行く。感情は読み取れないが、いい時は昔々の歌を口ずさむ。

辛さを口にせず痛みも自分のせいにして頑張る九州女子の母は、「今を生きる」父に翻弄される。久々の帰省で家族の現実と向き合う。

多分、初めて、家族全員で色褪せたアルバムを見た。

父が作ったアルバム。几帳面に貼り付けられた写真、書き込まれたメッセージ。

古き昭和の時代。決して裕福ではなかったが、父は休みごとに家族を旅行に連れていってくれていた。アルバムの中の女子たち(私、妹、母)は、どこへ行くにも母の手作りの服を着ていた。今見ても可愛い服を自分でデザインし作ってくれた母の指は、すっかり変形してしまった。小さい頃の思い出話に泣き笑いし、名前が出てこない友達を懐かしんだ。

あとどのくらい一緒に時間を過ごすことができるのか、私は何をしてあげたらいいのか、アルバムから蘇った過去に寄りかかりながら両親を眺める。今は一緒にいるよ。

私を産んでくれてありがとう。

好き放題させてくれてありがとう。

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