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大学生の大きな決断

新型コロナウイルスが流行し始めた2020年の春に、大学生になった。
はじめは、オンライン授業でパソコンと向き合う日々。友達は一人もおらず、下宿先で寂しい毎日を過ごしていた。
 
秋になり対面授業が始まって、なんとか友達ができた。
 
HPVワクチンという言葉を知ったのはちょうどそのくらいの時期である。医科大学という特殊な世界に飛び込んだからかもしれないが、会話の中で出てきたのである。はじめは何の話かよくわからなかったが、よくよく聞いてみると、子宮頸がんなどのがんを予防できるワクチンらしい。

そして、私たちは接種の機会を逃した世代だと言うのである。

私は、接種の機会を逃していたことも知らず、そもそもHPVワクチンの存在すら知らなかったことに衝撃を受けた。同時に、医療の道を目指す者として恥ずかしく思った。
 
そして、その夜、実家にいる母に「HPVワクチン受けたいなー」と何も考えずにLINEを送った。すると、「えーでも知り合いの知り合いに副作用で学校行けなくなった人いるらしいからなー」と言われた。
 
驚いた。
 
HPVワクチンは、接種後に原因不明な痛みが出たという訴えが相次ぎ、積極的な接種勧奨が一時中止されていた。ただ、後にそれがワクチンによるものである可能性は低いということがわかっている。それでも、やはり報道での衝撃的な映像が脳裏に焼き付いている人はたくさんいる。
 
きっと母もその報道を見て、私にワクチンを受けさせるのをやめてしまったのだろう。

自分も当事者だという実感がわいて、震えた。
 
ただ、母に言われてから、本当に副作用は起きないのか、ということが自分自身も不安になり、お金が多くかかることも相まって、一旦受けることをやめてしまった。

でも、やっぱり受けたいという気持ちは消えず、母を安心させられるくらいにHPVワクチンについて調べてみようと思い、勉強を始めた。
 
翌年には、所属する「リレー・フォー・ライフ・ジャパン 滋賀医科大学実行委員会」の活動の中で、HPVワクチンに関する企画を行った。滋賀医科大学の教授にお話を伺ったり、本を読んだりして、HPVワクチンは子宮頸がんのリスクを大きく下げることや外国では男性も受けていること等を学んだ。
ワクチンを受けるか、受けないかというのは個人の自由だが、HPVワクチンの存在自体は誰もが知るべきだと感じた。
 
そして、1年間のパンフレットや動画での啓発活動を通して、ワクチンについて学んだ結果、
 
「私もHPVワクチンを接種しよう!」と決意した。
 
「ただお金が何万も飛ぶのは仕方ないけどなあ痛手だなあ、、、」と思っていたときに、ちょうどキャッチアップ接種が始まった。
接種を逃した世代(平成9年度〜17年度生まれ)が、令和4年4月~令和7年3月の3年間、HPVワクチンを無料で受けられるというものである。
 
キャッチアップ接種が始まってすぐに、住民票のある奈良市のホームページで指定の医療機関を見て、実家の近くの病院に問い合わせした。4価のワクチンを受けることになった。
 
そして、2022年5月22日の朝。大学一年生の妹も連れて、ワクチンを受けに行った。
 
HPVワクチンは筋肉注射で、打った直後は、新型コロナウイルスのワクチンを受けたときのようなしびれがあった。しかし、何時間かたつと、ワクチンを受けたことも忘れそうなくらい、痛みやしびれはなくなっていた。
 
現在まで何も体に異常は起きていない。
受けるまでは緊張していたが、受けてよかったなと思う。

3回の接種を終えたとき、また振り返ってみたい。

※ここに書いたのは私個人の考えや経験です。ご参考程度でお願い致します。


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