葵れぜ

小説家希望の人間です。 少しでも見て頂けるとと幸いです。

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最近の記事

あの夏に取り残されたまま。 

プロローグ 「有難うございました!素敵な歌声でしたね。続いてはHOPEsで、『恋の波に攫われて』です。どうぞ!」 司会者がそう言うとメンバーがぞろぞろと出てくる。会場は暗くなる。次の瞬間、会場全体が青色のライトで照らされる。そしてセンターの子がアップで抜かれる。カメラに向かって精一杯の笑顔を向ける。とても可愛い。思わず画面に手を伸ばしてしまいそうになる。 そのとき、背後から「きも」と一言。 振り返るとそこには氷よりも冷ややかな視線が向けられていた。 「うるさいな、ほっと

    • 青い春、君を追いかける。

      プロローグ 静寂。 弦を引く音が微かに聞こえる。ミシミシと音を立てる。 ピタッと音が止み、再び静寂が訪れる。 後方でパシュっと音が鳴った次の瞬間、雷鳴の如く静寂を切り裂く。 降り注ぐ拍手の雨。皆中だ。 的を射抜いた音が、拍手の音が、呼吸音が、それら全てが邪魔をする。 喉はカラカラで汗は全身を滝のように流れ落ちる。 見開いた眼が乾いてきて痛い。だが、瞬きはできない。目を凝らし、的を見る。獲物を屠る狩人のように。 打起し。第三を作り、引き分ける。キシキシと弦が音を立てる。 呼吸

      • 初恋

        プロローグ 【はつ-こい 初恋】 初めて異性への恋の気持ちを起こすこと。 七月三十一日午前八時〇五分 中学二年の夏、僕は部屋で初恋の意味を辞書で引く。 やっぱり、意味分かんないや。そう思い、ふと「はあ、何してんだろ」そう口から漏れた。 カッコつけるために辞書で意味を調べた。誰も見てないのにカッコつける意味ないじゃん。 心の中でツッコむ。 ………。 暫し、虚無感に襲われたが気を取りなをして机に置いてあるスマホに手を伸ばす。 スマホを開き、Googoloで「初恋 意味」で検索

        • 神様なんて大嫌い。

          ピピピ…ピピピ…ピピピ…  「んぅ…」 いつもだったらこの忌まわしいアラーム音をすぐにでも止めて、再び眠りつくが今日はそうもいかない。 今日は大事な大事な約束があるのだ。寝ぼけ目を擦りながら大きな欠伸をする。  「はぁ…さむっ」 毛布に包まったまま、部屋の中央にある灯油ストーブをつける。ストーブの前で毛布に包まれたまま座り込み、眼を瞑る。 あーダメダメ。このままじゃ寝ちゃう。  「うぅー」と呻き声に近い声を上げながら、毛布を剥ぐ。  「よしっ」と意気込んで自室を出て、洗面台へ

        あの夏に取り残されたまま。 

          向日葵

          2005 8/5 「ねぇ、あおい。大人になったらみうとけっこんしよ!」 「いいよ!!」 「…!!…約束ね///!」 「うん!約束!!」 小さい頃に向日葵畑で交わした約束。18になった今でも憶えている。 2019 3月 俺は4月から晴れて東京の大学に進学する。受験も終えて、呪縛から解放されたので気分転換に散歩をする。 美羽、今どうしてるかな。中学までは一緒だったが高校は別の所に進学してしまい、それからは連絡も碌に取り合ってない。もう、俺の事も忘れたかな。 あの約束も。 ちょ