why the rush? It's sunday today.

『雰囲気、かわったね。』

社会人生活も3年が過ぎると、そう言われることに違和感もなくなった。

仕事とプライベートの充実は絶対で
大学時代の友人と毎月ランチに行って、年一くらいで海外行けたら良いな
部屋はお洒落なインテリアを少しずつ集めて。。。

そんな妄想は1年目で綺麗に砕け散った。
女子会ランチは程遠く、冷食を詰めただけの弁当にも慣れ
今は冷食のクオリティーの高さに感謝しかない。

＊＊＊＊＊

1K一間に置かれた実家から持ってきたテーブルには
今の私が表現されていて
買っては試してを繰り返した、使いかけの化粧品達や
飲みかけの缶酎ハイ
美容と健康を考えたサプリ
先輩に勧められて購入したものの3ページで諦めた小説。

何から手を付ければ良いのかわからない程
殺伐とした雰囲気で散乱していた。

あまりにも理想と現実のギャップにやられすぎて
テーブルの端に貼られた学生時代のプリクラ
満面の笑みを浮かべたギャルポーズの私に「大丈夫、大丈夫だからね。」と応援されている気にすらなる。

＊＊＊＊＊

働き方改革の影響で残業は減ったけど、そのぶん結果を求められた。
唯一の楽しみは洋服でお洒落を楽しむ事だが、最近は考えるのが面倒になり
部屋着はユ〇クロ。外出時はネットのSALEで安く買ったハイブランド。

あんなに楽しんでいた服屋を散策する事や
お気に入りの店員と会話を楽しむ事はなくなり
無難で単調なコーディネートになった。

とにかく時間に追われている気がして
キャッシュレス時代、コンビニで小銭を広げる人に苛ついたし

いつもマイペースで
物事をいちいち漫画で例える大地(彼氏)には余計に苛ついた。

たいして例え上手でもないくせに。って。

＊＊＊＊＊

いつも返信が遅くなるLINE。

「久しぶりに二人で過ごす週末は、のんびりしよう。」
こんなに捻くれた私に大地はいつも優しい。

しかし次の週末といえば、クリスマス後だ。
誕生日やクリスマスは苦手で
自分の買い物ですら億劫なのに
相手に渡すモノを選ぶなんて、どんな罰ゲームなんだよ、ほんと。

今度選ぼう、そう今度。その繰り返しで、何も用意せず迎えた週末。

結局辿り着いた答えは去年と同じで
本人が欲しいモノを買ってもらおう。と、選ぶ事を諦めた。

ピンポーン。

こっちのそんな億劫な気持ちを知る由もなく
ガチャッと開けた扉の向こうには
大きな袋を掲げた、ひとりテンションの高い男が立っている。

申し訳ないと思いつつ、袋から取り出し広げた中身は
シンプルなパーカーが2つ入っていた。

「へー可愛いじゃん。」

バカと言って良い程、洋服好きな大地は
洋服がマンネリ化している私を見越してか
毎回洋服をプレゼントしてくれる。

そしてその服バカのチョイスを、私は秘かに楽しみにしていた。

「これさぁ、、、でね、○○○らしいよ。」

パーカーについて語る彼に対して

「へー、すごいね。」

洋服には興味があるが、細かな事には興味がない。
そんな私の適当な相槌は、もはや神の域に達しているはず。

早速着替えてはみたものの、なかなか止む事のない話。
とっくに興味が失せた話を遮りたくて開けたワインは美味しくて
あり合わせで作ったツマミとよくあう。

久し振りに会う相方に仕事の愚痴をぶちまけ
その代り、たいして面白くもない話にワインを飲みながら相槌をうつ。
その繰り返しは気楽で、なにやら落ち着く。

ピピピピッ、ピピピピッ

どうやら飲み過ぎたらしく
いつも間にか寝落ちしていた私は
いつものアラームで跳び起きた。

バタバタと準備する私を
ソファから　ふぁーぁ、と眠そうな顔で見て

「何急いでるの？ 今日は日曜日だよ！」

「。。。えっ、ほんと！？」

数秒の間があいて彼が、アッて顔で胸元を指差した。
まるで私たちの会話を予知したかのようなパーカーに
ふたりで思わず大笑いした。

「今日だけは、笑いのセンスあるじゃん。」
酒が残っていて過剰に笑ってしまっただけだが
その言葉に笑みをうかべ、彼はもうひと眠りについた。

ずっと時間に追われている気がしていたけれど
時間の進み方は誰にも平等で、それは平成が令和になっても
好きだったアーティストが亡くなっても
近所に大きな建物が建って、景観が変化しても
誰かと出会って、別れても　けして変わらない。

いつも楽しそうな男の、間抜けな寝顔をみて
そんな単純な事に気付いた。

『そっか、そっか。』

彼が起きたら久し振りに洋服を選びに出掛けよう。
寒いから暖かい服をプレゼントしてやるか。

本人が引くくらい、ド派手なやつにしてみようかな。

---

この文章は3年前に、当店のインスタに投稿した文面となります。
(文面に一部変化を加えていますが。)

当店で販売しているアイテムに
『ご購入いただいた後にこんなストーリーが生まれたら面白いな。』
そんな妄想を不定期で書いた内容です。#ajojuterの妄想

その中から以前製作した
当店オリジナルのパーカーとスウェットの妄想。

フロントに刺繍で
「why the rush? It's sunday today.」
「何急いでるの？今日日曜日だよ。」

「o rly?」
「えっ　まじで？」

と書いています。
その会話から妄想を膨らましたストーリー。

大切にセレクトしたアイテム達それぞれが
お客様のもとに渡ったその後も
様々な形で生活の中に溶け込み、愛用頂けますように。
そんな思いを込めています。

今回はクリスマスという事もあり
(この妄想もプレゼントの話しだったので)
プレゼント繋がりで
普段と違った内容を掲載してみました。

実は、妄想シリーズは
当店のインスタ内でボチボチな数あります。
(数えてないので何件投稿があるかは把握していませんが。)
気が向けば、こんな感じでもnoteにも再掲載しようかと思います。

今回も駄文を最後まで読んで頂きありがとうございます。
励みになりますのでスキボタン(♡)のクリック宜しくお願いします。<m(__)m>