見出し画像

石段からの夜景が綺麗なわけではなかった。

先日インスタで行ったアンケートの結果
『影響を受けた人物』が最も多かったので
今回はその内容で書きたいと思う。

ただ、影響を受けたのはひとりではないので
今回はそのうちのひとりについて書いてみる。




高校卒業間近、仲の良いメンバーで免許を取りに行った。
わざわざ飛行機と電車に乗った先にある、縁もゆかりもない場所の合宿免許だった。

県外へ住民票を移してまでその場所を選んだのは
「その地域の女性は可愛いらしい。」
と、誰が言い出したのかも定かではない理由だった。

まぁ結局は、仲の良いメンバーで親元を遠く離れ
高校最後の思い出作りがしたかっただけだった・・・はず。


目的の教習所は、大学生の男性が数名アルバイトで働いていた。
他の教官に比べると歳が近かった事もあってか
教習所が終わったあとには、よくご飯やドライブ、バッティングセンターに連れ出してくれた。

あまりに羽目を外しすぎ、学科試験に何度も落ちたり
巻き返しで早く免許を取得せねばと焦った結果
風邪をひき、高熱がある状態でも実技試験を受け続け
何度も不合格になったりと
あれよあれよと免許取得に必要な持参金が底をつき始め

合宿2週目に差し掛かる頃には
1日中教習所の車を洗車して試験代金を稼ぐ
ちょっと不思議な日常になっていた。

「今日は何号車から洗う?」

清掃のアルバイトと化した私たち
期限である、高校の卒業式は刻一刻と迫っていた。


そんな当時よく聴いていた曲。


*****


合宿生は予約の時間まで寮で過ごすため
待合室は通いで来ている地元の人達の割合が多く
方言だったり、話の内容や服装も含め
自分の地元とは違った雰囲気が感じ取れて楽しかった。

洗車の合間だったりボーッとしたい時など、ここに居る事が多く
免許取得までのあいだに、この待合室で数人の友達ができ
その友人の実家に泊まったり、友人のパートナーや家族を紹介されたりと中々濃い時間が過ぎていた。

前置きが長くなったが、今回のテーマにある人物が
ここで仲良くなった友人の1人、ふわーっとした雰囲気で
のんびり喋る女性のKさんだった。

Timberlandのマウンテンパーカーに、Gramicciのショーツ。
足元はgravisのスニーカー。ロングヘアーの黒髪、ラフな1つ結び。

今のようにオーバーサイズが主流ではない当時
BIGシルエットが多いHIPHOPではなく、アウトドアで流行り始めそうな雰囲気だったTimberlandをチョイスしている事がまず目にとまった。

細かく書くと、Timberlandのレディースはこの当時
ほとんど国内で発売されていなったと思う。
レディースが注視していないなかTimber、しかもメンズをチョイスしている事に興味がわいた。

ショーツ(ちゃんとグラミチ)で、全体のバランスをとっている事や
オーバーサイズのラフなコーディネートに合わせて
ロングをキチッとではなく、ラフな感じで雑にまとめている事。

同じ高校生でこんなにオシャレなんだ。すごいな。
そんな印象だったと思う。


*****


高校卒業後の18歳当時、私が住んでたアパートは丘の上にあり
急勾配な石段が、道路からグッーと丘まで伸びていた。

始まったばかりの新生活、ワンルームの部屋は息が詰まるような気がして
夜景がたいして綺麗なわけではなかったが
仕事帰りはよくその石段に座りこみ、コンビニで調達したジュースを片手にKさんともよく電話で話した。

新社会人あるあるの、仕事の緊張感だったり職場の人の話。
ついこの前まではピンときていなかった働くという事を実感し
大人になるのは思った以上に大変そうだ。と互いに笑った。

すぐ目の前には、都市高が建設中で
今から形を成していくその工事に、自分のこれからの人生をほんの少しだけ照らし合わせていた。


前述のようにKさんについてオシャレだと感じていたが
ほとんど服の話しはしていなくて、慣れない仕事の話以外は
服以外の趣味の話しや、いずれ欲しいと考えているモノについてなど
うまく表現ができないが  ”楽しく生きるには”  こんなモノが欲しくなるよね。 そんな話で盛り上がっていた。

楽しく生きる。大雑把だが実例のひとつに
彼女が免許取得後、購入したのが白のHILUX SURF。
(当時サーフは人気で、夜の百道に行くとかなりの確率で遭遇した。が、男性が乗っている事が多かった。)

仲良くなった頃から「白のサーフを買う。」と言い続け
社会人になりローンを組んで購入。

いきなりサーフ、そして白。カッコ良すぎだろと思ったが
彼女からするとファッションだけより、車もこだわった方が楽しいから。
そこにはオシャレというフレーズは必要なくて
(そもそも意識すらする事ではなく)、楽しむの延長にある
あまりにもナチュラルな行動だった。

今思うと、服の話しをあまりしなかったのは単純に
私の前を行く、センスの良い彼女の色んな話を聞くのが
新鮮で楽しかったんだと思う。


*****


『カッコ良いって何だろう?』
18歳当時の私には深く考える必要もなかったし、答えもきっとあやふやで良かった。

しかし服屋としてキャリアを重ねていくにつれ
お客様やお取引への責任を持つため、自分自身の軸を持つためにも
この問いが必要であり
その答えを持ち合わせる事が未来でもあると思うようになった。

答えは変化をしていくのかもしれないが
「カッコ良いは、表現が豊かな事」だと今は考えている。

表現は経験に影響を受け、人其々に経験が違うため表現に違いが生まれる。その表現をお客様に提案する、お取引先に協力頂きその表現を可視化する。

表現を育てるキッカケはやはり好奇心で
だが好奇心だけでは育たないので
実際に購入したり、訪れたり、じっくりと会話をしたり。
しっかりと自分にしっくりくる経験となるまで
時間やお金を自分へ投資する。
その経験の、感覚的な側面が表現だと思う。

今こう考える土台には、Kさんの影響も大きい。


そんな彼女と最後に話したのは24~25歳くらいなので16、17年前になる。
その時でさえ2、3年振りだったが
久し振りに聞く声は変わらずのんびりで
出掛ける予定だった私はエレベーターをやめ、そのペースに合わせるようにゆっくりと階段で降りた。

結婚をする旨の話しを聞かせてくれたが、途中からなぜか
「今バギーに乗ろうと考えている。」
「バギーを販売していて、カスタムも出来る車屋を知らないか。」
という話になっていた。
今でこそメジャーだが、当時バギーに乗っている人は少なかった。

「きっと楽しいよね。公道を乗り回したいんだ。」

熱を帯びて話すこの人との会話は、要所要所にあの頃を思い出させる。
安心するほど相変わらずで、ほんと面白い人だ。

『やっぱ、あんたは洒落てるわ。』そう笑ってかえすと

『はぁ、お洒落になりたいよ。』と、ため息が混じったような懐かしい声で彼女も少し笑った。


電話を切ったあと、懐かしい余韻に浸り
すーっと一呼吸し、空を見上げた。

「ん、結婚の話以上に、バギーの話しに夢中になってたよな、あの人。」

懐かしい余韻以上に、笑いが込み上げた。

天才だわ。





影響を受けた人物というテーマだったので
多くの方が、私が当時通っていたShop店員をイメージするのかも。
そう思ったので今回は変化球的な人選をしてみました。
しかし順をおっていくと、今回のKさんに最初に影響を受けたと思うので
今回はこれで良かったのではと思います。

次回はまた同じテーマか、別のテーマになるのか
全くの未定ですが、楽しみにして頂ければ嬉しいです。

モチベーションに繋がりますので、スキボタン(♡マーク)のクリック
宜しくお願い致します。

駄文を最後まで読んで頂きありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?