#112 音楽室の大作曲家たち
音楽室には大作曲家の肖像画が飾られている。
あれがいったい、どれほど似ているのかは知らないが、格好いいなと思っていたのはベートーヴェンだ。
交響曲第9番の終盤に突然「おお友よ!このような音楽ではない!歓喜に満ちた歌を歌おう!」などと言い出し、高らかに歌い出す。
当時の人々は面食らったに違いない。
合唱と演奏が昂まりまくった挙句、最後は天国的なイメージ(?)で締め括られる。
あれは間違いなく、ロックンロールだと思う。
王侯貴族や教会のためではなく、自己表現の音楽をやりきった彼はきっと、ロックスターなのだ。
それも、耳が聞こえないのに。かっこいい。
厨二病、というネットスラングがある。
ベルリオーズの幻想交響曲は、現代のキッズが裸足で逃げ出す厨二設定を持つ音楽だ。
妄想をここまで芸術に落とし込めるものなのかと、聴くたびに感嘆する。
この人の恋人になるのは嫌だなと思うけど。
音楽室イケメンランキングで最下位付近にいたドヴォルザークは、いま大好きな作曲家だ。
偉大な作曲家と、そうなりたい有象無象が跋扈したその後に、交響曲第9番のような、当時の歴史的音楽と比肩する名曲を作れる才能というのは、それはさぞかし凄かったであろうと思う。
新しいメロディって、まだあるんだ。
そのような驚きがあったに違いない。
最後に、ロベルト・シューマン。
わたしはこの人が好きだ。
作品が評価されない苦しみ(音楽界では妻のクララの方が成功していた)を抱えつつも、良き夫であり続けたこと。
精神障害と闘いながらも、作曲を続けたこと。
妻や子供に危害を加えまいと、自ら精神病院への入院を申し出るという優しさ。
自殺未遂。
メンデルスゾーンやブラームスとの深い交流。
そして何より、シューマン自身が彼らや自身が尊敬した過去の作曲家達と肩を並べて、後世に名を残すことなど、きっと(いや、間違いなく…)予想していなかったであろうこと。
これは私の妄想だけど、彼の才能は「優れていても、凡庸の範疇」だったのではないかと思う。
音楽研究家・批評家といった、文学的な才能の方があったのかもしれない。
メンデルスゾーンみたいな超天才と友人関係でいられるところからして、きっと性格も良かったに違いない。
ただ、音楽への情熱が尋常ではなかった。
それを歴史が正しく評価したことを、彼は知らない。
交響曲第3番。
私が多摩川に身投げするとしたら、この曲を聴いてからにしたいと思っている。
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