見出し画像

オーケストレーションの勉強法

オーケストレーション(管弦楽法)を学ぶ上で欠かせないのが「スコア(総譜)の分析」です。楽器法や管弦楽法の本を読んで各楽器に関する知識を蓄えておくことは言うまでもありませんが、独学の方でも音源を聴きながらスコアを読んでみる、ということは普段から行っているのではないかと思います。

このスコアを読む作業は「スコア・リーディング」と呼ばれ、スコア・リーディングに重きを置いた本も出版されています。しかし、音源を聴きながらスコアを読んでみても、譜読みが速くなければ音符を眺めているだけになってしまいがちです。

そこで今回は僕が学生の頃から始めて、現在でも暇さえあれば行っている勉強法の一つ「コンデンスド・スコアの作成」をご紹介します。コンデンスド・スコアは元のフルスコアを少ない段数に要約(簡略化)した楽譜になります。オーケストレーションをテーマにした記事ではありますが、この勉強法は作曲のスキルアップにも効果的です。

IMSLP(国際楽譜ライブラリー・プロジェクト)というサイトでパブリック・ドメインとなったクラシック音楽の楽譜をダウンロードできるので、ポール・デュカスの交響詩『魔法使いの弟子』を題材に解説をしていきたいと思います。スコアは下記リンク先にある「Complete Score」という所(リンク下の画像を参照)をクリックして15秒待てばダウンロードが可能になります。

画像3

ディズニーのアニメ映画『ファンタジア』でも使用された楽曲ですが、有名なテーマが演奏される18ページ(PDFファイルとしてのページ数ではなく、楽譜の下部に書かれているページ数になります)のリハーサルマーク「22」からの6小節を見ていきましょう。

音源はこちらの動画だと04:10辺りから聴くことができます。

このスコアをそのまま読むのは大変なので、より少ない段数へとコンデンス(要約)していきます。この作業において僕がよく使用しているテンプレートがこちらです。各段をどのように扱っていくかはケースバイケースなのでこの記事では説明を割愛しますが、主に上の4段には管楽器を、下の4段にはストリングスのパートを書いていきます。

画像3

そして、この6小節をコンデンスすると次の画像のようになります(いくつかのパートは最初の音符を省略しています)。今回はそこまで楽器数が多くなかったので、さらに少ない段数のコンデンスド・スコアにまとめることができました。

画像3

移調楽器のパートを実音(実際に鳴る音)表記にして、これぐらいの段数にまとめると見やすくなったと思います。各段に何の楽器をまとめたのか、省略名称で書き添えておきましょう。

ちなみに、いくつか楽器名の最後には数字を書いています。「x 4」は4人で演奏されることを表し、「-8」はその音符の1オクターブ下で、「+15」はその音符の2オクターブ上で鳴ることを表しています。このように工夫することで音符の数も少なくしていくことができます(音符を省略し過ぎるとテキストが増えて、かえってオーケストレーションが把握しにくくなってしまうので注意してください)。

コンデンスド・スコアを作成したら、下記のポイントなどにフォーカスして楽曲分析を行ってみましょう。

1. 各楽器の役割
2. 楽器の重ね方や組み合わせ
3. 伴奏形
4. コード進行とヴォイシング(コードの鳴らし方)

まだオーケストレーションの学習を始めて間もない方がコンデンスド・スコアの作成を行う場合、いきなり1曲まるごと(全小節)まとめようとはせず、なるべく色々な楽曲からシンプルな構造になっているサビのような部分を数小節だけまとめてみる所から始めてください。

最後になりましたが、作曲・編曲オンラインレッスンを行っています。1日に見ることの出来る生徒の数は少ないのですが、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?