見出し画像

アキレス腱障害のリハビリテーションマネジメント

この記事では、アキレス腱障害のリハビリテーションについてまとめています。アキレス腱障害はアキレス腱実質部(アキレス腱付着部2〜6cm近位部に多い)に痛みを有するオーバーユース障害です。スポーツ現場では、アキレス腱に痛みを感じながら無理して練習を続けている選手も少なからず存在し、走れないほど重症化してから明らかになることも多い疾患だと思います。症状が強くなってしまってからのリハビリテーションマネジメントは、練習参加の是非なども含めて難しい判断となります。このnoteには、アキレス腱症のマネジメントとして抑えておきたい知見とリハビリテーションの内容として役に立つエクササイズをまとめています。


これまでに公開してきたその他の疾患に関する段階的リハビリテーションについては下記からご確認ください。

足関節捻挫の段階的リハビリテーション

膝関節外傷後の段階的リハビリテーション

ハムストリングス肉離れ後のリハビリテーション

肩関節術後の段階的リハビリテーション

Groin painの評価・リコンディショニング

腰椎椎間板ヘルニア術後の段階的リハビリテーション


アキレス腱障害の病態

アキレス腱障害は、アキレス腱実質部(付着部から2~6㎝近位部)に生じる慢性的な疼痛で、ランナーに多いとされています。病態については「軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション(2021年 Medical View社)」という成書に以下のように記載されています。

「慢性腱障害の本質は従来考えられていた炎症やコラーゲン断裂ではなく、力学的ストレスに対する腱細胞の反応によるホメオスタシスの崩壊であると考えます。つまり、アキレス腱に対して過度な負荷がかかることで腱の一部に変性が起こり、疼痛を引き起こしている。腱障害の発生に関与する主なストレスは、①エネルギー貯蔵・放出負荷②圧迫ストレス③応力遮蔽の3つが考えられている。」

詳細は文献1をご参照いただくと現段階での定説がよくわかりますのでご一読いただくことをおすすめします。今回の記事でも患部にかける負荷の漸増方法は、腱障害に対するリハビリテーションの基本的な考え方としてこちらの書物を参考にしています。

次に、アキレス腱障害のリスクファクターについてまとめておきます。

アキレス腱障害の外的因子として挙げられるのは、
(※2※3※4)

・急激なトレーニングの変化
・トレーニング量・負荷の増大
・トレーニングエラー
・技術不足
・疲労
・サーフェス
・冬場

個体因子としては、
(※5※6※7)

・男性
・年齢(高年齢)
・高い中性脂肪レベル
・家族歴

身体的特徴に関しては、
(※2※3)

・足部過回内
・前足部内がえし
・足関節不安定性
・筋のインバランス

が言われています。

歩行時の荷重軌跡が外方へ変位した状態から急激に内側方向へ移動してしまうような足部足関節アライメントや動作エラーがアキレス腱へ剪断・圧迫ストレスをかけ、組織の変性を引き起こす可能性があると考えられています。

また急激な練習量の増加や肥満など、アキレス腱にかかる貯蔵・放出負荷や圧迫ストレスが増加すると推測される外的因子・個体因子もおさえておきましょう。

アキレス腱障害のリハビリStage1(等尺性収縮)

<Introduction>

ここから先は

16,603字 / 84画像 / 1ファイル

¥ 3,300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?