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膝関節外傷後の段階的リハビリテーション

前回の記事では、

スポーツ現場で大変頻度の高い、

足関節捻挫についてまとめました。

今回は膝関節外傷後の段階的リハビリテーションについてまとめます。

膝関節外傷も、

スポーツ活動で比較的多く発生するため、

トレーナーの方は、

接する機会が多いと思います。

受傷後のリハビリテーションプロトコルに於いて、

時間経過だけを基準にしてリハビリメニューを進めていませんでしょうか。

それでは計画通りに進まない場合や、

リハビリから復帰したあと、

再受傷をしたり、

なんとなく不調を残したりすることがありますね。

そこで今回は

リハビリにおける運動レベルを

上げるための基準を示しながら、

獲得していくべき機能・運動スキルについて言及していきます。

術後早期のLv1から

ジョギングを開始する直前のLv3まで、

3段階に分けて解説しました。

このnoteの内容では、

膝関節外傷後(術後)のリハビリテーションプロトコルと、

実際の運動内容・運用上の留意点を学んで頂くことができます。

記事の最後にはすべてのメニューをまとめた

エクセルファイルがダウンロードできます。

動画40本以上、

文字数1万5千字以上と、

かなりのボリュームでお届けします。

それでは早速始めていきましょう!

<Introduction>

膝関節の外傷から復帰までのリハビリテーションについて

解説していきます。

前提として、アスレティックリハビリテーションの現場では、

比較的多く遭遇する前十字靭帯再建術後を想定して

進めております。

他の靱帯損傷や半月板損傷、

軟骨損傷においては損傷した組織に応じて

リスク管理を修正しつつ用いてください。

例えば、内側側副靭帯損傷後の急性期に

積極的な膝の伸展可動域訓練を行うことは、

損傷靱帯にストレスをかけることになるので行いません。

しかし前十字靭帯再建術後にはできるだけ早期から

膝の伸展可動域を獲得するためのエクササイズを行います。

このように損傷靱帯によって多少の変更はありますが、

全体的な流れやエクササイズのレベルの上げ方は

このnoteの内容を参考にしていただけると思います。

膝関節術後のリハビリLv1(松葉杖歩行の獲得)

<Acute phase>

想定として、術後2~4週間をLv1としています。

Lv1のゴールは、
・腫脹、熱感の消失
・自動運動での伸展0°
・屈曲90°
・荷重コントロールが可能
・松葉杖や装具を使用して跛行なし
になります。

このゴールを達成した時点で、次のLv2へ進みます。

ただし、もちろんここでは

手術を担当してくださった医師の指示に従う形になりますので、

術後リハビリテーションの時期的なプロトコルは、

必ず医師の確認を取りましょう!

<Patellar mobilization>

膝蓋骨の滑走改善を目的に行います。

膝蓋下脂肪体や大腿四頭筋腱、膝蓋上嚢、

その他の膝蓋骨周囲の軟部組織に対してアプローチしていきます。

膝蓋骨可動性の低下は、

膝関節伸展制限の一因となりますので、

なるべく早期から行っていきます。

ただし、術後創部が安定しない状態で過度に行うと、

腫れを増悪させてしまったり、

創部にストレスをかけてしまうことがありますので、

注意してください。

傷口の状態が落ち着いてきたら、

まずは皮膚の動きを改善していきます。

膝周囲の皮膚をつまみながら皮膚の滑りを出していきます。

特に膝蓋下脂肪体や膝蓋骨上方の皮膚は

硬くなりやすいので丁寧に行いましょう。

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このようにして周りの皮膚が動くようになってきたら、

膝蓋骨を動かしていきます。

膝蓋骨は上下、左右、そして回旋方向に動かしていきます。

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選手が1人で行うのは難しいかもしれませんが、

可能な範囲で行ってもらうと良いでしょう。

膝蓋下脂肪体の動きを出していくために、

Quad settingとPatellar mobilizationを組み合わせる方法があります。

Quad settingに合わせて膝蓋骨を上方へ引き上げることで、

脂肪体と周囲の組織との拘縮を防ぐことができます。

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そのほかには、腸脛靭帯や外側膝蓋支帯、

下腿の皮膚なども選手自身に軽く動かしてもらうと

硬くなるのを防ぐことができます。

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このように、周囲の組織が柔らかくなることで

自然と完全伸展が得られるように進めていきます。


<Extension on a bolster/prone hangs>

膝関節伸展の持続伸張による可動域訓練です。

基本的には無理やり可動域を拡げようとするのではなく、

膝関節周囲の軟部組織の滑走不良を改善することで

自然と伸展可動域が拡大していくのが理想です。

しかしどうしても伸展拘縮が強い場合などに行う方法をご紹介します。

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Extension on a bolsterは上図のように枕の上に足を乗せます。

大腿骨を手で支えコントロールしながら

膝のはまりが良いポジションで

痛みを感じない程度(気持ち良いくらい)の負荷量に調整して

膝を伸ばしていきます。


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Prone hangsは上図のように膝から下をベッドの端から出して、

対側の足部を重りにして乗せることで伸展可動域を獲得していきます。

どちらのエクササイズも、

膝関節の適合性がまだ良くない状態で

積極的に行うことは推奨していませんが、

拘縮が強い場合などに活用できるエクササイズの1つです。


<Heel slide with assist>

こちらのエクササイズは

膝関節の屈曲可動域改善が目的となります。


力を抜いてリラックスした状態で行うことが

屈曲の際のポイントです。

膝窩部を支えて大腿部を体に引き寄せるようにして

膝を曲げていきます。

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前十字靭帯損傷直後(術前リハ)で膝関節が不安定な時は、

下図のように脛骨を長軸方向へ押し付けながら行うと

安定して曲げやすくなることがありますので、

一つ覚えておくと良いでしょう。

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少しずつ慣れてきたら、タオルを使用して可動域訓練を行っていきます。

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ここでは可動域を拡大するだけでなく、

足・膝・股関節の協調的な運動の再獲得も目的に含まれます。

そのため骨盤や脊柱のアライメントが崩れないように注意しましょう。

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もう一つ注意点としては、

つま先にタオルをかけてしまうと

タオルを引っ張る力が

膝関節の中心近くを通ってしまうので

曲がりにくくなります。

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踵に引っ掛けたタオルをサポートにして

膝窩筋、内側ハムストリングスを使って

膝屈曲時の下腿内旋を誘導しながら

自動運動で屈曲していきます。

タオルはあくまでサポートです。

特に屈曲初期の20°までの下腿内旋は丁寧に行います。

そのとき、腓腹筋の影響を除くために

足関節は底屈位で行うのが良いでしょう。

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さらにこのエクササイズでは伸展運動も同時に行えます。

タオルを抵抗にしてレッグプレスのように伸展していき、

最終域では広筋群に収縮を入れましょう。

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5分程度行うとスムーズに動かせるようになっていくことが多いです。


<IR ex>

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