「アニメ特有の”時間”を扱う面白さ」ノビル
チェインアニメーションプロジェクト クリエイターインタビュー Vol.05ノビル
没入を生み出すエナジードリンク「ZONe」が展開する「チェインアニメーションプロジェクト」
出自も個性も異なるクリエイターたちが集い、数々のアニメーションが生み出されている。この連載では同プロジェクトに参加したクリエイターたちに連続インタビューを敢行。彼らのルーツや制作環境、制作に対する意外なこだわりといった裏話満載でお送りする。
今回お答えいただいたのは、イラストレーター・漫画家のノビルさん。
企業広告などでも引っ張りだこ、ポップで表情豊かなキャラクターたちが人気のクリエイターだ。ノビルさんにとって公の場でのアニメーション制作は未知の体験。制作の秘話をうかがった。
Q01:イラストレーター・漫画家を志したきっかけを教えてください。
絵を描くことは小学生のころから好きで、いろいろな作品に触れて夢中になる内に自分も誰かに楽しんでもらったり、面白いと感じてもらえるような作品をつくりたい!と思ったのがきっかけだったと思います。
まだまだ目指すところは遠いので、これからも頑張りたいと思います。
Q02:特に影響を受けた作品やクリエイターについて教えてください。
手塚治虫先生の作品は中学生の頃から読んでいて、本当に多くの影響を受けました。その他には、コミックボンボンで連載していた横内なおき先生の『サイボーグクロちゃん』や、ほるまりん先生の『メダロット』が子どもの頃から好きで、今も読み返しては刺激をもらっています。
Q03:イラストやアニメーションに関わる知識はどのように学んでいったのでしょうか?
美術の学校などで学んだことは無いですが、兄が独学で絵を描いていて色んな考え方や様々な作品を教えてもらいました。それからゲーム会社に勤めていた時には、周りの先輩からとても多くの知恵と経験を教えて頂いて、それが今にも活きています。
またアニメーションについては、中学生からの友達がエフェクトアニメを描いていて、その様子を実際に見せてもらったことが大きいです。とても楽しそうに描いていて「自分もやってみたい」と思ったのが、アニメ制作を始めたきっかけでした。とても運の良いことに、色々な環境で周りの人たちが親切に教えてくださったおかげで今の自分があると思います。
Q04:作品づくりにおけるこだわりを聞かせてください。
自分が「見たいと思う作品」をつくるように意識しています。
テーマ・アイデア・モチーフ・構図・キャラクター・ポージング・シチュエーション・デザインなど、作品のどこかに1つ以上自分が面白いと思うポイントを組み込むようにしています。
Q05:「Reverse Creative 〜探れ、深く〜」の企画を初めて聞いた時の感想・印象をお聞かせください。
「自分が描いていいのかな?」というのが正直な感想でした。というのも、個人的に趣味でアニメをつくってはいましたが、アニメーション作家と名乗って活動しているわけではなかったので不安でした。でも自分のような人間が挑戦するのも、他の方々のハードルを下げることにもなると思い、今回描かせていただきました。
Q06:今回の制作にあたって使用されているソフト、デバイスを教えてください。
絵コンテ・ラフの制作では、普段のイラスト制作に使用している「SAI2」で描きました。アニメーションの作画では「CLIP STUDIO PAINT EX」、仕上げは「Adobe After Effects」を使用して制作しました。「CLIP STUDIO PAINT」「After Effects」の2つはまだまだ知らない機能などもあるので、もっと使い込みたいです。
Q07:今回の作品に登場するメインキャラクターは装飾品が印象的ですが、彼女の設定はありますか?
「Type:illustration」※の際に「覚醒」がテーマとしてあったので、そこから発想して「2つの何かが混ざりあって化学反応を起こして新しい何かが生まれる」というモチーフから、「白衣に試験管やビーカーを装備した化学者」というイメージで描きました。実はマッドサイエンティストで危険な薬を調合しているかもしれないです。
「Type:illustration」の際に制作されたイラスト。キャラクターはもちろんだが、試験管などの装飾品や渦巻くようなエフェクトにも目を引かれる。
※DIVE TO ZONe「Type:illustration」総勢9名のアーティストを起用し、多種多様な印刷加工を施した豪華カードを制作。コミックマーケット97にて無料配布し、用意した150セットが100分で終了した。
Q08:イラストとアニメ、作品づくりにおける違いで意識されたことがあれば教えてください。
キャラクター造形の差としては、作画コストの都合で細かなディテールを省略しています。表現として、イラストはエフェクトなどの形状・配置などで静止画でも画面に動きが出るように構図を決めますが、アニメでは時間を扱って動きを表現できます。動きの緩急・タイミングの取り方などはイラストでは扱わない領域なので、そこが大きな違いだと思っています。
Q09:制作工程を詳しく教えてください。
まず頂いたテーマなどから、いくつもの案を自由に発想していきました。その時、浮かぶ案は自分に描ける技量があるかどうかで制限しないように意識しました。そうして、その中のいくつかを面白そうなもの・挑戦してみたいもの・今回のテーマに適しているものなどの観点でピックアップし、組み合わせたり、参考になりそうな資料を見て浮かんだ案を発展させて、ラフ・絵コンテの制作をしました。
そこからは頭の中の理想にできるだけ近づけていく作業なので、自分の技術不足を感じる場面でもあり挑戦しがいのある場面です。
自分で動いて鏡で確認したり、タイミングを調整してキャラクターのモーションの下書きを制作したり、清書の段階ではひたすら整えていく作業でした。
そうしてキャラクター・背景の動きが描き上がったら、「After Effects」を使用しての仕上げ作業になります。
仕上げでは楽曲の音とタイミングを合わせたり、この段階で必要ならばエフェクトを加えたりなど調整を行い、書き出しをして完成です。
Q10:制作された作品を振り返ってみての感想をお聞かせください。
アニメを制作する上で、制作コスト的にイラストの時とはバランスを変えていた部分が今までありましたが、今回の制作ではイラストでやっていることをアニメの表現としても応用することができたように思いました。ここで掴んだ感覚を忘れずに発展させていきたいですし、まだまだ足りない部分も見つけられたのでもっと色々なことを吸収したいと感じました。とても貴重な機会を頂けて本当にありがたいです。
Q11:短編アニメの魅力を聞かせてください。
作家さんの個性をよく感じられる部分が見ていてとても楽しいですし、興味深いと思います。
Q12:制作で使用しているソフトウェアでのおすすめのウィンドウ配置設定、環境設定を教えてください。
どのソフトでもレイヤーやペンなどのツールを画面の左端1/4ぐらいの範囲にまとめて、残りの3/4を描画するスペースにしています。
理由としては右利きの場合、液タブだと自分の手で右側が隠れるのでツールなどを置きたくないことと、ツール変更・レイヤー選択をするときに手を引いて画面右側に持っていくよりも、手を画面の左側に伸ばしたほうが楽というのがあります。
Q13:よく使用するショートカットキーや便利機能があれば教えてください。
自分はキー設定を変更して、テンキーによく使う機能をまとめています。「戻る」や「左右反転」「レイヤー全消し」「拡大・縮小」「画面の角度の変更」を当てはめています。右手はペンを持って、左手はテンキーに置きながら作画をしています。
Q14:クリエイターとして今後挑戦してみたいことがあれば教えてください。
ミュージックビデオや小説などの挿画は、自分の好きな領域なのでぜひ関わりたいです。その他にも、広告関連のイラストや漫画・アニメ・アニメ業界から遠い場所で使われる絵を描くお仕事はとても興味があります。
あとは大学生の頃に漫画を投稿していたことがあり、最近もまた描いているので機会があれば漫画の連載もしたいです。
Q15:「ZONe」の好きなフレーバーを教えてください。
黒の「ZONe」が一番好きです。単純に美味しいというのもありますが、
作業の追い込みの時に黒を飲んで助けてもらったことがあるので思い出深い味です^^
Q16:制作サイクルをお聞かせください。
今まで決まったサイクルはあまり無かったのですが、最近試しに、朝7~8時頃に起きて午前中は3時間の制作+午後は4~5時間の制作をして夜は早めに就寝するサイクルを試したところ調子が良かったので、これからはこの健康的な制作サイクルを回していければいいなと考えています。
Q17:今注目しているクリエイターはいらっしゃいますか?
自分が影響を受けた作家さんの凄さ・素晴らしさを再認識することが最近多いので、改めて手塚治虫先生や横内なおき先生、ほるまりん先生、それから鳥山明先生、安彦良和先生、湖川友謙先生の作品をよく見ています。
Q18:これからクリエイターを目指す方へアドバイスをお願いします。
人の目を気にしたものではなく、自分で「こんなものが見たかった!」と思えるものをつくってほしいです。それから技術的な話としては、自分の好きなものがどんなものに影響を受けているのか、歴史を調べたり考えたりすると勉強になると思います。
そうやって、自分の好きなものを掘り下げていくと「自分の好きなものが、どんどん増えて単純に楽しい」という側面もあるのでおすすめです。
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