ライフイベントと仕事の両立支援は相互理解から。妊活・不妊治療の社内セミナーを開催した理由
Rettyでは先日、Rettyで働く人向けに「妊活・不妊治療の基礎知識セミナー」を開催しました。働く仲間同士がお互いを尊重するための知識を身につけ、働きやすい環境をつくる第一歩にしたいという想いから、企業向けに福利厚生サービスを提供するメデタさんに協力いただき実現したセミナーです。
近年、働きながら不妊治療をする人が増加傾向にあります。「全夫婦の5.5組に1組」が不妊治療・検査の経験があると言われ、多くの人のキャリアの障害となっています。一方で、産まない選択をする人、産みたくても叶わない人ももちろんいるなど、職場としての取り組みが難しいテーマでもあります。
前夜は眠れなかったと話すのは、セミナーを企画したRettyのコーポレートチーム・小守さん。セミナー開催に向けて繊細にコミュニケーションを続けた小守さんの、内なる想いを聞きました。
「出産・育児ハンドブック」を作りながら浮かんだ疑問
「産休育休を迎える従業員のための『出産・育児ハンドブック』を作りながら疑問が浮かんだんです。仕事と両立している生活の背景は人それぞれなのに、出産・育児に関するサポートだけが手厚くなっているんじゃないかって」
小守さんは1年前に策定した「出産・育児ハンドブック」を、内容を充実させるために2022年3月に刷新しました。改正育児介護休業法(2022年4月1日施行)によって、企業には産休育休をとる従業員に対してさまざまな制度を案内する義務があります。その案内をよりわかりやすくし、みんなが安心して産休育休に入れるようにするために作った新しいハンドブックは39ページにわたります。
しかし、妊活や不妊治療に取り組んでいる人、子どもを産まないことを選択した人、子どもを産むことができない人などさまざまな状況の人がいるのに、出産・育児に関するサポートだけになっているのは不公平なのではないか。課題を感じた小守さんは、不妊治療が保険適用になるタイミングだったこともあり、妊活・不妊治療に取り組む人へのサポートを考えるようになりました。
まず、小守さんは情報収集のため、企業が取り組む妊活・不妊治療と仕事の両立支援についてのセミナーに参加します。これが、メデタの伊藤さんとの出会いとなりました。
「このセミナーで、ヤプリさんの『lily制度』を知りました。妊活・不妊治療支援を含め、いくつかの福利厚生をパッケージ化しているそうです。Rettyは出産・育児周りについては制度も整えているし、育休復帰者も多くいます。でも、ヤプリさんの包括的な取り組みを知って、Rettyでは一部のライフイベントの支援しか現状できていないということがわかりました」
「気づきがあったので参加してよかったなと思い、セミナーの感想をたくさん書いて送ったんです。そうしたらメデタの伊藤さんから返信をいただいて、Rettyでもセミナーをやりませんか?とご提案いただきました。伊藤さんは不妊治療の当事者でもあるし、IT企業との取り組みも多い。Rettyに伴走していただく上で頼もしいなと思いました」
緊張して眠れなかった本番前夜
Rettyのコーポレートチームでは、年に1〜2度社内セミナーを企画・実施しています。基本的には産業医の先生に健康に関するお話をしてもらうもので、これまでにストレスコーピングや睡眠セミナーを行なってきました。ただ、今回の妊活・不妊治療の基礎知識セミナーもこれまでのセミナーと同様に、とはいかなかったといいます。
「妊活・不妊治療に関するセミナーをやりたいと役員会で提案しました。『出産は良いもの』『不妊治療したほうがいい』など、会社がなんらかの意思を表明しているように見えかねない、とてもセンシティブなテーマだったからです。役員陣と何度も話をして、誤解を招かないようにセミナー内容やコミュニケーション方法を検討しました」
現状、社内にどんな立場の人がいて、どんな考えを持っているか。わからないからこそ不安は大きくなっていきます。
「セミナーをやりますよとSlackで告知する前日も、セミナー本番の前日も、緊張で眠れませんでした」
セミナー開催告知の第一報を出した後のこと。小守さんのもとにSlackで一件のDMが届きました。それは、不妊治療を経て子どもを授かった経験のある従業員からのもの。「働きながら不妊治療を続けられたのは、Rettyに柔軟に対応してもらってきたから。経験者の一人として、今回のセミナーの告知を見て感動した」と綴られていました。
「勇気づけられるとともに、その方が不妊治療に取り組まれていたことをはじめて知って、自分の知らないところで仕事との両立をなんとかがんばっている人がいるんだと思い知りました。もっと心の負担なくサポートを求めることができたり、周りも協力しやすい状況をつくらないといけないですよね」
知識は人のためになる
とはいえ、セミナー実現に向けてのコミュニケーションも内容も、繊細で難易度が高いのは事実。にもかかわらず、小守さんを突き動かしたのはなんだったのか。それは、小守さんが労務としてのキャリアをスタートした12年前にさかのぼります。
「前職でははじめ、営業を担当していました。ですが、入社から3年ほど経った時に、急遽人事労務に異動することになって……。社会保険なんてまったくわからない。引き継ぎ資料に書かれた言葉の意味もわからない。そして前任者からの引き継ぎはたったの3日!自分なりにいろいろ調べて、役所に電話で聞いて、ひとつずつ学んでいきました」
「知らなかった制度がたくさんあるんですよ。生きていく上で知っておきたい知識もたくさん。もちろん自分の仕事だから自分のためになるんですけど、何より周りの大切な人のためになるんじゃないかって、嬉しくなったんです。家族とか、友だちとか。この情報、あの人に伝えたら役に立つだろうなって。どんどん学んでいくモチベーションになりました」
そして、この知識は自分の会社のメンバーの働きやすさにもつながっていきます。大きなプレッシャーの中でもセミナー実現に向けて動き続けられたのは、「知識が人のためになる」という原体験からでした。
誰もが生活と仕事を両立できるように
「働く人のことを考えてくれて嬉しい」
「自分の仲間に当事者がいたらサポートしたい」
「関係ないと思っていたけど検査してみようかな」
当日セミナーに参加した人の感想からは、妊活・不妊治療中の人や関心がある人にかかわらず、さまざまな立場の人が参加したことがうかがえます。セミナー自体も「将来的に子どもを望む人」「妊活・不妊治療に取り組んでいる人」「一緒に働く仲間やマネジメント層」という、それぞれの立場ごとに学びがある内容になりました。
「当初は参加者がわからないようにウェビナーで、スケジュール登録もせずになど、さまざまな配慮をしていたのですが、もっと広く参加を呼び掛けてオープンにやってもよかったのかもしれません。当事者に限らず、すべての立場でそれぞれの学びがあるし、働く仲間を尊重するための知識として、みんなに知ってほしいと思います」
そして、セミナーを経て従業員の関心の深さや現状がわかった今、小守さんはネクストアクションを考えています。
「『風邪をひいたのでお休みします』とは言えるけど、『不妊治療なのでお休みします』とは人によってはまだまだ言いづらいですよね。だから、助けを求めやすく周りもサポートの姿勢を取りやすい状況をつくりたいと考えています」
「ただ、お互いの理解を促すのって、空気づくりだけじゃ難しいです。そこを労務として言葉や制度といった仕組みをつくって後押ししていけたらなと。たとえば、『ファミリーサポートデイ』といった言葉を浸透させるとか。妊活や不妊治療に限定せず、生活と仕事の両立においてサポートが必要になるシーンを包括することで、誰もが公平に周りからのサポートを享受できるようにしたいです」
妊活・不妊治療に限らず、働く仲間がライフイベントと仕事を無理なく両立できるように。小守さんの力強い言葉のとおり、Rettyは今後もお互いが尊重しあえる環境づくりと、仕組みづくりに取り組んでいきます。
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