神は見返りを求める。

*吉田恵輔監督の新作映画、『神は見返りを求める』を観た。吉田恵輔監督は『BLUE』『空白』と立て続けに観て、個人的にとってもファンになった監督だ。『BLUE』はボクシング映画の中でも、珍しいと言うか、ありがちな展開を脱却した展開だったし、『空白』はなかなかしんどい映画だったけど、最後に連れて行ってもらった景色が明るい作品だった。今回の作品も、観ていてキツイなと思うところがあったけど、個人的には明るい結末を観せてもらった、という感じがある。

今作は「いい人」というテーマの映画だった(と書いても、きっと差し支えないであろう)。あれから「いい人」についてうんうんと考えている。そしてたいてい、「いい人」というのは「都合のいい」という言葉が、当てはまるような気もしている。

認めたくないかもしれないけれど、大人になって(子どもでもそうだったかも)からのほとんどの関係は、「都合」で成り立っていると言ってもよさそうだ。仕事も、恋愛も、友人関係も「都合」と言っていいように思う。都合がどうというよりも、都合のいい相手が好きなんですよ、というところかな。仕事をお願いするにしても、お願いする側に「このテイストならこの人だな」とか「この予算なら…」なんて都合があるわけでしょう。恋愛にしたって、「あなたが好き」というのも自分の都合だ。「あなたが好きじゃなくても、私は好き」というのもそうだ。一見、利他的に見えることでも、それはその人の都合だったりする。「見返りは求めないよ」ってのも、その人の都合だもんね。

自分にとって都合が悪い相手を、好きになることはなかなかむづかしい。し、好きでいることもむづかしいだろう。「都合」ひとつで掛け違えるボタンだってあるし、疎遠になる関係もある。その「都合」を超えたものを「愛」と呼ぶんじゃない?なんてことも思ったけれど、あくまで定義上の話、というところに落ち着きそうだ。

特に答えはなく、着地点も定まらない。観終わってから「いい映画でしたか?」って言われたら、いい映画が何かは分からないけれど、いい映画だと答えるだろう。これだけうんうんと何時間も考えている時点で、ぼくはいい映画だったと思うんだよなぁ。


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